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菫川ヒイロ

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悠々ライフ

勇者編 10

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「嫌いなんだよな。一人では何も出来ない事を美徳みたいに言う奴らが。
 要は欠陥品だろ? どうしてそんな奴が勇者だなんだと言っているのかが理解
 出来ないんだよな」
 
 
 少女はただただ俺を殴り続けた。
 
 
「ねえ、もう止めてよ。お願い、お願いします」


 魔法使いが悲鳴のように謝り続ける中で、武闘家は少女を攻撃し続ける。
 
 
「糞糞糞糞、どうして効かないんだ。どうして私の攻撃が効かない」


 魔法使いの悲鳴も武闘家の攻撃も無視して少女は俺を殴り続け、
 俺はそのまま気を失った。
 
 
「所詮お前等なんて一人だとその程度でしかないんだからさ、自覚すべきだと思う
 んだよ。謙虚さって大事だと思うんだよな」
 
 
 それはもう独り言のようになってしまっていた。
 少女にはもうここに居る誰も眼中には無かったのだから。
 
 
「あんまり遊んでると怒られるな。よし、帰ろう。お前等、もう二度とここには
 来るなよ。いいな? 他の奴にも言っておけ、面倒臭いんだよお前らの相手を
 するのは。ほら復唱しろよさっさと」
 
 
「「もう二度とここへは来ません」」


 二人の返事に満足したのだろう、少女は勇者を殴るのを漸く止めた。
 
 
 
 
 *****
 
 
 
 
 それは敗走だった。完敗だった。
 自分達の惨めさだけが残った。
 通り過ぎる村にポーションもヒーラーもいない。
 ただ勇者だけはどうにかして助けたかった。
 それはどちらかと言えば自分達の為の方が大きかったが、それでも構わない。
 そこにすがる事でしか今の自分達を保つ事なんて出来なかったのだ。
 
 
 王宮へと助けを求めた私達は勇者が助かった事を聞いて自分達も疲れ切っていた
 事を思い出し、そのまま倒れた。
 
 
「勇者が目を覚ましました」


 その一番聞きたかった言葉を聞いたのは三日後の事だった。
 そして私達はすぐに勇者の元へいくと抱き着いたのは武闘家の方だった。
 
 
「よかった、よかったよ~」


 子供の様に泣く彼女を見て私は冷静になれた。
 
 
「ごめんね勇者。私達、何も出来なかったわ」


 だからまず謝らないといけないと思ったのだ。
 
 
「嗚呼……ヒーラーは? 」


「ダメだった」


 私の返事を聞いて勇者はそっと窓の方へと視線を向ける。
 その時に私はもうダメなんだと思った。私達はもう戦う事が出来ない。
 完全に戦意はなくなった。あの少女一人に私達は叩きのめされたのだ。
 
 
 あんなのは見た事も聞いた事もない。
 魔王すらも凌駕する強さを持った少女。
 それにまだあれ以上の者が居るらしい……
 
 
「あの子は一体何だったのかしら」


 だから素直に疑問に思ったのだ。
 魔王よりも強い魔族、そんな者が居るとでもいうのだろうか?
 

「鬼だろ」
 
 
 勇者のその言葉に私は納得した。
 あれが鬼という存在なのだと理解した。
 私達は二度とあの場所へは踏み入る事はない。
 
 
 
 




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