ファンタジー倉庫

菫川ヒイロ

文字の大きさ
22 / 129
悠々ライフ

勇者編 11

しおりを挟む





 私にとってそれはどうでもいい事の最上位であった。


「勇者が勇者辞めるってよ」


 そんなくだらない話を聞かせる為に私をここへと呼んだのかと思うと尚更腹が
 立った。辞めたければ勝手に辞めればいいし、勇者なんて別のをまた探してくれ
 ばいいだけではないか。なのにどうしてそんなにも騒ぐ必要があるのか私には
 まったく理解出来ないのだ。
 
 
 こういう時に出るのが本性であろう。
 明らかに焦っている奴らほど勇者で金儲けをして来た奴らである。だから騒ぐ。
 自分達の食い扶持が無くなる事へのストレスを周りに撒き散らす。そしてそれに
 煽られて騒ぎ出す奴が出てくるのだ。
 
 
 お前らは騒ぐ必要がないだろうに、簡単に乗せられるような奴らは常に狙われて
 いるという事が理解出来ていない。自分達が世の中を動かしていると思い込んで
 いるのだろうが、実際にはただの駒でしかなく、しかも捨て駒なのだからどう
 しようもない。
 
 
 そして乞食がやってくる。
 私達も被害者だと嘘をついて少しでも分け前を貰おうとするのだ。
 
 
 嗚呼、気持ち悪い。気持ち悪いな~。
 
 
 こいつら全員、今殺してもいいんじゃないかと思い始めていた私を牽制するよう
 に宰相が声を上げた。
 
 
「静粛に、国王様が居る前で騒がしいですよ」


 今、この国の全てを牛耳っている宰相ロッペン。
 国王などお飾りでしかないという事をここに居る者で知らないなんていう奴は
 いない。だからロッペンが発言すれば当然誰も反対はしないのだ私以外は。
 
 
「もう帰ってもいいか? そんなに暇ではないのでね、私も」


「まあそうおっしゃらずパシュリダ、是非とも貴方の意見も聞きたいと国王様も
 おしゃっております」


「うむ」


 顔を向けられ、急いで頷く国王を見ていると実に腹立たしい。
 ただ相槌を打つだけしかしないのであればもうその椅子に座るのは誰でもいいと
 いう事になってしまうと分からないのだろうか? とも思ったがそもそもそこに
 座る者を決めたのがロッペンだったという事を思い出す。
 
 
 全ては茶番だった。
 
 
「勇者なんてどうとでもなるだろ、それよりも鬼の話をしてくれ。いまいち要領を
 得ない。あの元勇者達の話は本当なのか? 」
 
 
 今、一番の問題はどう考えてもそっちなのだ。
 そんなよく分からない存在が居るという事実に今まで気が付けなかったという
 事が何よりも危険だった。今の所何の対処もしようがないのだ。
 
 
「勇者達の証言によりますと、容姿は少女であり、身長は魔法使いぐらい、
 髪の色は碧色で目は金色、服装はドレスを着ていたそうです。帯刀しており剣士
 かと思われますが、剣は殆んど使わずに打撃で勇者を倒しております。
 それと魔法使いによる魔法、武闘家による攻撃が効かなかったという事です」
 
 
 紙を読み上げる兵士も内容があまりにも異様で疑わしく思っているようだ。
 
 
「なんだそれは、何を言っている? 」


 まあ初めて聞く者が殆んどだったろう、こいつ等が敵に興味を持つなんて事は
 ないのだ。でもまあ反応は意外と普通だった。突拍子もない話過ぎてどうすれば
 いいのかが分からないようだ。騒がれるよりはマシだが。
 
 
 そんな者に勝てるなんて奴はこの国には存在しない。
 
 
 当たり前の事実に気付いたときにこいつらがどうするのかは見ものである。
 判断を誤れば命に関わるのだ、顔色が変わっていく様を見るくらいの権利は
 私にもあるだろう。
 
 







しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

小さくなった夫が可愛すぎて困ります

piyo
恋愛
夫が、ある日突然、幼児の姿になってしまった。 部下の開発中の魔法薬を浴びてしまい、そのとばっちりで若返ってしまったらしい。 いつも仏頂面な夫が、なんだかとっても可愛い――。 契約結婚で、一生愛とは無縁の生活を送ると思っていたノエルだったが、姿が変わってしまった夫を、つい猫可愛がりしてしまう。 「おい、撫でまわすな!」 「良いじゃありませんか。減るもんじゃないし」 これまで放置されていた妻と、不器用に愛を示す夫。 そんな二人が、じれじれ、じわじわとお互いの距離を詰めていく、甘くて切ない夫婦再生の物語 ※完結まで毎日更新 ※全26話+おまけ1話 ※一章ほのぼの、二章シリアスの二部構成です。 ※他サイトにも投稿

黒の神官と夜のお世話役

苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました

処理中です...