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僕の彼女は勇者
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しおりを挟む事前情報によるルート選択は今の所、敵に出くわしていない事から考えて正し
かったようだ。情報は正確だったという事だろし、そしてそれを踏まえて
どうすれば最善なのかを魔法使いは考え続けていた。
「なあ、魔法使い」
だというのに戦士が話しかけてくる。
状況は常に変わるものだ、だから今は集中したかったのだが、
「どうした? 」
別にそれが空気が読めない奴だなんて思ってはいないし、
それが彼女らしい行動だと分かってはいるからあえて話を聞く。
少々面倒臭いとは思っているが。
「あれは何なんだろうな? 別にオレは文句が言いたいって訳じゃないんだが、
ただあれは何か違くないか? オレの想像を遥に越えてくるのは勇者らしいとは
思うが、でもだからってこんなにもイチャつかれたらさぁ、分かるだろ?
オレ達がこれから何処へ向かって何をするのかってのをあいつらは忘れている
んじゃないかと思うんだが? 」
まあ、戦士の言う事は一理ある。
でも付き合いたての二人なのだからある程度は仕方がないのでは? と心の広さ
を示した所で戦士が納得するとも思えないし、俺の心も実際は広くなんてない。
ただ考える事を排除していただけである。
「確かにな、デートのついでに真緒討伐なんて感覚になってもらっても困る。
そろそろ敵と遭遇する確率が上がってくるのも確かだが、まあアレはアレで
放っておこう、周りから見ればただのバカップルが森の中を歩いているように
しか見えないだろうし。それよりも先行して敵がいないか探って来てくれ」
戦士にはとりあえずの仕事を与えておく。
身体を動かせば気分も変わるだろうし、実際情報通りならそろそろ出くわしても
いい頃なのだ。敵の幹部、東海林に。
俺達は今、真緒を倒す為の最短のルートを進んでいる。
そしてこのルートでの唯一倒さなければならないのが東海林だった。
東海林は常に単独行動をする事が分かっていた。
幹部の癖に誰も連れていないなんて事があるのかとも思うが、自分の強さに
自信をもっているからなのか、ただのボッチなのかは分からないが単独行動を
取ると言う事なのであればそこを突くのは当然だろう。
四対一
戦いにおいて有利に進めらる状況を作っておく事は重要である。
だから俺は勇者たちから距離を取りながら周りの索敵を始めていた。
*****
東海林は一人を好む。
騒がしいのが苦手という訳ではないが、他人が多いのは嫌いだった。
人が増えると面倒事が増えるというのが理由だ。
そんなものに関わる時間が無駄にしか思えなかったのだ。
それに何よりも真緒に憧れていた。強い者は群れたりはしない。
圧倒的な強さ、それに惹かれるなんて事はあの国に生まれた者なら当然だった。
強さが全ての世界で生きてきた東海林には真緒の強さは絶対的だった。
だから幹部になれた時はどれだけ嬉しかったか。
自分が間違っていなかったという事が証明されたと思った。
真緒に会える権利が貰えたのだと思った。
でも実際はこうして森の中を一人で進んでいる。
「索敵は苦手なんだよね」
一人で探せる範囲など高が知れているし、そもそも東海林の戦い方は精密では
無く大雑把である。つまりはパワー、パワーでのゴリ押しが東海林のスタイル。
パワーが全てを凌駕するのだと信じていた。
「だからこそなのか? 」
自分がどうしてここへ配置されたのか意図を考え、そしてこれも強くなる為に
必要な事なのだと自分を納得させさえ出来れば東海林は何だって出来るのだ。
それが不得意だったとしても。
更なる高みへと自分を押し上げてくれようとしている?
だから自分をここへ配置した真緒に感謝する。
上ってみせよう、その高みへと。
「んっ? 誰か来る? 動物じゃないな……たぶん」
そして東海林は気配を消したのだった。
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