ホラー倉庫

菫川ヒイロ

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ラビリンス

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 何故なのか分からないがとりあえず助かった。
 今日一番のピンチを乗り越えた。
 手が汗でびっしょりである事以外は今は問題ないようだが、本当に終わったと
 思っていたからしばらく動けなかったのは息を止めていた所為なのだろう。
 
 
 ドアの向こうへとどんどん人が流れて行く。
 その姿を見ながら私は呼吸を整えていた。これでもう彼に誰も逆らうなんて事は
 ないのだろうけど、私のここでの地位は最底辺である事に変わりはないのだ。
 これから先もずっとこの序列が変わるなんて事はないなと思うのは目線を感じる
 からだ。
 
 
 お前は最後だ。
 
 
 そう誰もが私の事を見下しながら通り過ぎて行く。
 そんな中で私はどうする事も出来ないから辞書を見るのだ。
 とにかく気を紛らわすのが今の私には必要な事である。
 
 
 ドア
 開けると別の場所へと繋がり、閉めると遮断される。
 一度閉めると同じ場所へは繋がる事はない。
 
 
 そして私の番が回って来たので私は平然を装いながらドアへと近づき、ドアノブ
 に手を掛けるとすぐにドアを閉めた。ふう、これでもうあいつ等と行動を共に
 する事はなくなった。私には集団行動なんてそもそも無理なのだ、だからこれで
 よかったのだ。
 
 
 そう自分に言い聞かせる。
 そもそも私だけが明らかに不利な状況だったではないか。
 それならば別行動をとる事に何の問題があるだろうか?
 自分を納得させる為に出来るだけ理由を用意しないといけないのだ。
 
 
「ねえ、どうして閉めたの? 行かないの? 」


 だからそんな声が後ろからした時に私の心臓が止まるかと思うくらいに驚いたの
 だ。私が最後だとばかり思っていたのに、まだ人がいた。否、そもそも誰も認識
 していなかったのではないか? 私が他人を認識できないなんて事はあり得ない
 のだから。
 
 
「誰? 」


 私は彼から距離を取る事はせずにドアノブに手を掛けた。
 
 
「俺? 俺は誰もが憧れる能力の持ち主さ、人から認識されないというね。
 だから誰も俺が居る事に気が付いていなかった。君もそうだろ? 」


 そんな自己紹介をされて誰が彼に好意を抱くというのだろうか?
 それは明らかな悪手だろう。そこに居るのに認識出来ないなんて事があったら
 きっと何も出来なくなってしまう。
 
 
 私はドアを開けた。
 
 
「ええそうね。二度とアナタには会いたくないと思っているわ」


 ドアノブを握ったままドアを潜り抜けた。
 





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