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「どうしてこんな事になったんだろう」


 私はシャワーを浴びてしっかり湯舟に浸かってみたが、未だに理由が分からず、
 ベットの上で頭を抱えた。
 婚約破棄されたという現実が今になってようやく実感した私から出た言葉は
 溜息と共に吐き出され、部屋の中に充満した。
 
 
「本当にどうしてこんな事になったのでしょうか? クリスお嬢様は
 決して悪くなんてありません、だからをお気を確かに持ってください」
 
 
 私のお付きメイドのマルが私を励ましてくれた。
 
 
「ありがとう、マル。あなたが居てくれて私は幸せよ」


「そんな、もったいないお言葉。私の方がクリスお嬢様とご一緒に居られる事に
 感謝しております」


 私はマルと手を取り合い見つめ合う。
 
 
「そんなのはいいから、さっさと服を着て下さい。
 いつまで下着姿で居るんですか! 湯冷めしますよ? 」
 
 
「そうだわマル。私、ここを出る前にお母さまにご挨拶をしないといけないわ。
 大好きなお母さまとお別れするのは心苦しくはあるけど
 何も言わずになんて出ていけないもの……
 でも、どうしましょう病弱なお母さまにこんな話をしたら、
 具合が悪くなったりしないかしら? どうしよう、そんな事考えていたら
 だんだん寒気がして来たわ」
 
 
「いや、それは貴女が服を着ないでいつまでも居るからですよ?
 早く服を着てくださいね、ジータ奥様よりも貴女の方が先に具合が悪く
 なってしまいますからね」
 
 
 先程から一々私のお付きメイドのミシェルがうるさいので、私は服を
 来てから、お母様の部屋へと向かった。
 
 
 トントン
 
 
 ノックをすると中からメイドのバルウッドがドアを開けてくれた。
 
 
「お母様、少々お時間大丈夫でしょうか? 」


 お母さまはベットの上で体を起こし、本を読んでいた。
 
 
「ええ、もちろんよクリス。 
 何処に可愛い娘のお願いを断る事が出来る母親が居るでしょうか。 
 さあそこに座ってクリス」
 
 
 お母様は私をベットの横にある椅子へ座るように言った。
 私は椅子に座るとお母さまの手を取ると、とても温かかった。
 
 
「お母様、今日は大分体調がいいようですね」


「ええ、そうなのよ。だから少し本でも読もうと思ってね」


 手の温もりを感じて私がそう言うとお母様は笑顔を私に向けてくれる、
 それだけで私は嬉しかった。
 でも、もうこの笑顔を見る事が出来なくなってしまうのだ。
 
 
 私はお母さまのその笑顔をしっかりと記憶し、そしてお母様に
 私が婚約破棄された事、この家を出て行く事になった事、
 妹にボロクソに言われた事も言っておいた。
 
 
「ごめんなさいねクリス。私がこんな状態でなければ何か出来たはずなのに……」
 
 
 お母様の顔がどんどん曇って行くのに私は我慢出来ず泣いた。
 決して泣かないでお別れしようと思っていたのに……出来なかった。





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