3 / 42
勇者シス
2
しおりを挟む「いいか、覚えておけよ。力というものは他人の為に使うものなんだぞ! 決して
自分の私利私欲の為に使ってはダメなんだ。そんなのは畜生がする事なんだから
お前の力は私達の為だけに使うんだ、いいな? 」
俺の親はそんな事を子供に言うような人達で、だから俺が勇者に成る事を決めた
時には随分と文句を言われたものだった。
「おい、今からでも辞めると言って来てはどうだ? 勇者なんぞになった所でお前
には何の得もないぞ。めちゃくちゃな命令をされて、ただただこき使われて、も
し負けるようなことがあったなら平気で罵声を浴びせられるんだぞ? 狂ってい
るだろうそんなのは、ありえないと思わないか? 」
「例えお前が魔王を倒したとしてもだ、お前が手に入れられるものなんて大して何
もないんだぞ? 世界はもちろんお前のものになんてならないし、お前が好き勝
手に出来るなんて事もない。寧ろ、勇者として抑制された人生を送らないといけ
なくなるんだ。ろくに知らない奴らから監視されるのなんて最悪じゃないか! 」
「勇者なんてのは別にお前じゃないといけないなんて事はないんだから、何処かの
お人好しの馬鹿にでもやらせておけばいいんだ。そういう馬鹿が好きそうなもの
になんてなるんじゃない! 私達はそんなものにする為にお前を育てた訳じゃな
いんだ。いいか、よく聞けよ。私達はお前をそんなものにする為に育てたんじゃ
ない! 」
「別に何をしたっていいさね、アンタにはそれだけの力があるんだから。でもね、
勇者になんてなってはダメだ。あんなものになってしまったらみんな不幸になっ
てしまうんだから。だから勇者になんてなってはいけないんだよ」
俺の育った場所はそれはそれは小さな村で、俺以外の子供なんて居なかったから
みんなからとても可愛がられて育った。だからなのだろう、みんな俺の事をとて
も心配してくれる。それはそれで分からない訳ではないのだけれど、それでも俺
は勇者になりたかったのだ。
「みんなの心配はよくわかるよ。でも俺は勇者になるって決めたんだ。これは譲れ
ない。それにみんなが何を心配しているのかは分かっているよ、大丈夫さ。俺は
みんなの事を本当の家族だと思っているから、何があったって必ずみんなを守る
よ! 」
結局こういう風に言っておけば満足するのだろ? もう分かっているんだ。俺が
これまで生きて来た経験からするに、要は自分達が一番優先されなければダメだ
って事なのだ。それがこの村に住む者達の総意だって事を俺は知っている。
「いや、ダメだ。おらはそんな言葉には騙されねえ。おめえはこの村を守る事だけ
おら達を守る事だけを考えておけばいいんだ。それがこの村に育てられたおめえ
の役割だ」
「そうだそうだ、村長の言う通りだ! 何の為にお前を育てたと思っているんだ!
この親不孝者め! 」
あれ? 何か思っていたものと違う感じになっている。どうして納得しないのか
が全くもって分からなかった俺は説得するのを諦めて、勝手に出て行く事に決め
た。盛大に送迎会とかしてもらうはずだったのに、まさかこんな形でこの村を離
てなければならない事を俺はとても残念に思った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。
灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。
彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。
タイトル通りのおっさんコメディーです。
黒の神官と夜のお世話役
苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜
桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。
上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。
「私も……私も交配したい」
太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる