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勇者シス
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しおりを挟む爺婆どもを捨てて王都までやって来た俺は王が住まう城を見上げて感嘆する。
「こんなにデカいと掃除が大変だろうな」
勇者試験を受けに来た時は城の中に入る事が出来なかったが、こうして勇者とし
てなら堂々と入る事が出来た。あの時は試験会場が別の場所だという事を知らな
いで入ろうとしたら門番やら衛兵がわんさかやってきて滅茶苦茶歓迎されてしま
ったので少し恥ずかしかった。
「勇者様、お早く」
案内の者に急かされながら城の中を歩く。
絨毯なんて物の上を歩くなんて事が無かったから何だか変な感じがしていたが、
そんな事よりも扉の前に一々人が立っているという事が気になったり、メイドさ
んなんかを見かけたりしているうちにそんな事は忘れてしまっていた。手を振っ
たら振り返してくれるとか最高じゃないか!
「どうぞ、王様がお待ちです」
そう言って開けられたドア。
俺は一歩一歩踏みしめながら歩いていく。
確かに王様はその玉座に座っており、俺が来るのを待っていたのだろう、中に居
る人達の目線が一気に俺へと集まった。待ち人が来たのだそれは当然の事であろ
うが俺は急いだりなどしない、だって俺は勇者なのだから。
よく考えてみて欲しい、こんな所でヘコへコしているような奴が勇者だろうか?
そんな訳がないじゃはないか、勇者ならいつだって威風堂々としている筈だ。
そういうものだろ勇者って? 例え相手が王様であろうとも態度は変えてはいけ
ないのだ。
玉座へと続く道には兵士たちが立っている。
背筋を伸ばし、胸をはってそいつら一人一人に目を合わせてはうなずく俺。
兵士達も俺の圧に気圧されずに堂々と立っているのは流石は選ばれし精鋭という
事なのだろうが、ただ少しばかり汗が滲み出ている事を俺は見逃してはいない。
まあいくら精鋭であろうとも強者にはおののくものだろう。
寧ろ精鋭だからこそ気が付いてしまう事もあるだろし、ここでしっかりとマウン
トをとっておけばナメられる事はないはずだ。ちゃんと記憶の上書きをしておけ
ば陰口なんて怖くないもん!
「おい、さっさとしろ! いつまで待たせるつもりか! 」
そんな大声を出したのはあの時の試験官のおっさんだった。なかなかに厳つい顔
をしているおっさんではあったが、俺の力を知らない訳がない。だってボコって
やったんだからぜんぜん怖くないもん!
「まあ良いではないか騎士団長、勇者殿のペースで私は構わんよ」
「王様、ですが……」
「こんな事でへそを曲げられでもしたら目も当てられない。特に最近の子は気をつ
けなければならないぞ。こっちはこっちで先に進めてしまおう。それでは貴女が
魔法使いの……」
あのおっさん騎士団長だったのか、その割には弱かったよななんて事を考えつつ
も、俺を置いて先に話を進めようとしているこの状況、おかしくない? めっち
ゃ始めちゃってるんですけど、どういう事? 俺って勇者だよね? 俺がこの場
のメインのはずだよね? なのに先に始めちゃうの?
「ちょ、待てよ! 」
その時俺はそう言わずには居られなかった。
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