そして女神は……

菫川ヒイロ

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勇者シス

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 全ての事務処理が終わった。
 
 
「私が魔法使いのルルシラクミドランジョ、そしてこっちが聖職者で聖女のドルミ
 ナワポルミナよ。よろしくね、勇者シス」
 
 
 自己紹介を一人で終わらしてしまった魔法使いはどうやら頭がおかしいらしい。
 こういう所で文字数を稼がなくてどうするのだ! そんな事ではお前の活躍する
 場がなくなってしまうぞ、どうせ無詠唱なんだがらもう少し気をつかうべきだろ
 うに。こいつもしかして使えない魔法使いなのではないだろうか? 俺は訝る。
 
 
「先に言っておくけど、聖女様がお色気担当だからあんまりそういう目で私を見な
 いでね」


 違う! そういう目で見ているのではなく俺はお前の事を疑っているのだ。
 決してお前のメリハリボディを下から舐めまわすようになんて見てはいないし、
 他人にそういうのを押し付けるのはよくないと思います!
 
 
「え、私が担当するんです? そんなの聞いてなかったのです! ちょっと誰か契
 約書を持って来てくれます? 確認したい事があるのです! 」
 
 
 そんな事が契約書に書いてある訳がないだろうに、こっちはこっちでヤバい奴な
 のか? 大丈夫なのかこのパーティは? でも聖女ならそれなりに役には立ちそ
 うではあるか……まあ俺が居るからどうとでもなるか。なんて所に考えが落ち着
 いた所で俺は宣言するのだ。
 
 
「それでは皆様、俺の活躍にご期待ください」


 演じるという事はとても大切な事だと俺は考える。
 自信なさげな勇者よりは堂々としている方がいいに決まっているし、誰もがそれ
 を望んでいるのだ。だからこそ俺は演じる。別に虚勢を張っているという訳では
 ないし、実際に自信もあるから余計にそうすべきなのだ。そうする事によって俺
 達を選んだ人達が安心できるのなら、容易い事だった。
 
 
「え、キモ」


 だというのにこの魔法使いと来たらどういうつもりなのか何も分かっていない。
 それで本当に選ばれし者なのだろうか? どうしてこんなにもアレなのかと聞け
 ば答えは魔法使いだからだよで終わってしまうのかもしれないが、だからと言っ
 てこいつの取る行動は全てが悪手である。
 
 
「お前、いい加減にしろよ。マジで何なんだよ」


 いくらなんでも酷過ぎはしないか? これからこんな奴と一緒に旅なんて到底無
 理な話だと思った。
 
 
「いやいやいやいやいやいやいやいや、それはこっちの台詞なんですが。マジでど
 ういうつもりでそんな事を言っているのか知らないけど、そう言う事を言う人は
 マジで無理なんですけど。うわぁ、ほら見て! 鳥肌立ってる。ほんと、アンタ
 ってキモイんですけど」
 
 
 どんな教育を受ければこんなものが生み出されるのか俺には理解が出来ないが、
 こいつのおかげで俺は恵まれた環境で育ったのだろうと今更ながらに思えたのは
 いい事なのかもしれない。でもそれはそれ、これはこれなのだ。
 
 
「よし、表へ出ろ。どうやら力ずくで分からせないといけないようだからな」


「ほう、私に勝てるとでも? 」


「ああ? いいからさっさと来い」


 俺が歩き出せば兵士たちは道を開けた。
 本当ならばこんな事などしたくはないが、これからの事を考えればここでちゃん
 としておくのは決して悪い選択ではないはずだ。分からせておくべきなのだ、ど
 ちらが上なのかという事を。例え女だろうとも手加減なんてするつもりはない、
 そんな事に何の意味もないのだから。
 

 部屋を出れば丁度中庭が見えた。だから俺は指をさして言ったのだ「あそこでお
 前の根性を叩き直してやるよ」と。でもそれが意味を成す事はなかった。何故な
 らば、魔法使いは俺の言葉など聞くつもりがなかったからだ。
 
 
 バタンッ! 
 
 
 ドアが閉じる寸前に魔法使いが鼻で笑う姿が見えた。
 
 
 







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