そして女神は……

菫川ヒイロ

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勇者シス

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 彼女は深い深い森の中で生まれ落ちた。
 その瞬間から確かに彼女には意識があったし、自分が何者であるのかという事も
 理解していた。だからこそその場で今すべき事を知っていた。
 
 
 おぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーー!
 
 
 響き渡る彼女の泣き声はたまたま近くにいた魔女の耳に届いた。
 こんな場所に子供? 赤ん坊などいるはずもないのに聞こえて来たのは幻聴なの
 か? それとも何かしらのトラップかもしれない。だが、
 
 
 おぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーー!
 
 
 その魔女はそう返事をした。例えそうなんだとしても何の問題があるというのだ
 ろうか? 寧ろそんな見た事も聞いた事もない事象に今出くわした事を幸運に思
 ったぐらいなのだ。
 
 
 おぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーー?
 
 
 魔女の返事に彼女はそう返してみたら、
 
 
 おぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーー?
 
 
 その魔女もまたそう返してきた。
 
 
 そんな事をするような魔女が彼女の親となった。なってしまった。こればかりは
 どうしようもない事ではあったし、彼女にとって親というものが誰だろうとも関
 系がないはずだったのだ。その才能は約束されたものであった訳だし、生まれ落
 ちた瞬間に全ては成っていたのだから。
 
 
 でも親からの影響とは計り知れないもので、彼女も当然のようにその魔女の影響
 をいっぱい浴びて育ってしまったのだ。これが子は親を選べない、親ガチャとい
 うやつである。だから彼女の事を責めるのは間違っている、彼女の取る行動は親
 の影響から来たものなのだから責められれるべきは彼女の親なのだ。
 
 
 という説明を権威のある魔法使いにされたがそんなもので納得など出来はしなか
 った。だから俺は王城からまったく動くことはなく、あれから三日、俺は王城で
 過ごしていた。この中には何でもあるし、何不自由なく生活が出来るのだから出
 る必要を感じない。このままここで自堕落に過ごすというのも悪くはない。
 
 
 今も中庭でティータイムを楽しんでいる。
 とても優雅な暮らし、貴族っぽい暮らし、う~ん悪くはない。こうしてメイドさ
 んとも仲良くなれた訳で、こんな暮らしを続ける事にも慣れて来た。王城で俺に
 文句を言えるような奴なんて居ないのだから、このまま居続けてやろうかと考え
 初めていた。
 
 
 このお茶もきっと高級なやつなのだろうし、このティーセットもそうなのであろ
 う事はなんとなく分かる。説明をされてもよく分からなかったので聞き流してし
 まったが流石王城というところなのだろう。この空気感を味わいながら微睡んで
 いたのに、
 
 
「おい、いつまでこうしているつもりだ? 」
 
 
 なんて全てをぶち壊す奴がやって来た。そう、この騎士団長だけは別だった。
 俺よりも弱いくせに生意気にも俺に意見をするという悪行を働いたのだ。どうし
 てやるべきだろうか?
 
 
「これこれ、止めておきなさい騎士団長。最近の子は気をつけないといけないと言
 ったではないか。勇者殿のペースで構わないと私は言ったであろう? それに私
 は勇者殿が必ず魔王を倒してくれると信じておる。なにせ勇者殿が言っていたで
 はないか、活躍に期待してくれと」
 
 
 別に俺だって分かっているのだ、でもこれからの事を考えれば少しぐらいの我が
 儘なら許されてもいいはずなのだ。これから戦いへと赴くのに最も安全な場所で
 過ごすような人に言われるのも複雑ではあるが、それでも王様にそう言われてし
 まえばもう行かないといけなくなってしまう。
 
 
「分かりましたよ、ご期待にお答えしましょう」


 そして俺達の旅は始まった。
 
 







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