そして女神は……

菫川ヒイロ

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勇者シス

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「ひぃ! 」


 聖職者は俺が目を向けるたびに驚くので面倒臭い。まるで俺が変質者のような態
 度をとられるのは心外であるが、ここからの軌道修正は難しいのではないだろう
 か? 何せ、すっかり魔法使いに毒されてしまったのだから。どうして目が合っ
 ただけで子供が出来るなんて嘘を信じられるのか分からないが、それを信じてし
 まえるという事が聖女の証なのだとしたらどうしようもない。
 
 
「ねえ、もうちょっとどうにかならないの? すごく揺れるんですけど! 」


 どうにか王都から出発した俺達だが、移動手段は当然のように馬車を選んだのは
 魔法使いが車を嫌がったからだ。まあ動力源にされる事を嫌がるのは分からなく
 はないが、快適な旅をするには車の方が良かったのではと言いたくなる気持ちを
 ぐっとこらえた。


「こんなものだよ馬車なんだし。魔法使いなら飛んだりできるんじゃないのか? 」


 そんな魔法がある事は知っていたし、その方が魔法使いらしいではないか。
 魔法使いとは空を飛んでいるものだろ?
 
 
「馬鹿なの? あんな疲れる事をする訳がないじゃない。車を動かすよりも疲れる
 のよ、ありえないでしょ」


 じゃあ車で良かったじゃないかとかは言わない。
 
 
「いい? 勇者は魔法というものをまったく理解していないのよ。そもそも魔法と
 いうものはそう簡単に行使したりは出来ないものなのよ、まあ私には簡単だけど。
 魔法を行使するにはまず呪文というトリガーがあってね、それをいかに上手く引
 けるかが重要なの、まあ私は上手いんだけど。まあ普通の魔法使いなら精々3割
 ぐらい? そこそこの奴でも5割ぐらいじゃないかしら。まあ私は失敗しないん
 だけどね。だいたい根本がちがうのよね、魔力量が私はダンチだからね」
 
 
 流石に限界だった。
 
 
「車で良かったんじゃね? 」


「はあ? 私、説明したよね。もう忘れたの? 」


「覚えてるさ! お前は簡単に魔法が使えるんだろ。それに失敗しないし、魔力量
 はダンチなんだったら車で良かったんじゃね? 」
 
 
「はあ、アンタ何も分かっていないじゃない。それでも勇者なの? 」


「ああん? お前はやっぱり駄目だ。何も分かっていないのはお前の方だ! 」


「あの~お二人とも、ちょっといいです? 」


「「何! 」」


「ひぃ! その、前をご覧になってもらってもいいです? 」


 聖職者に言われ、口喧嘩をしていた俺達が前を見ればそこには明らかにそれと分
 かる奴が居た。上半身は裸で肌は深い青、腕は4本あるそれはどこからどう見て
 も魔族と分かる風貌だった。そんな奴がどうどうと立っている。腕を組んでこち
 らの馬車が進む先に居るそいつと目が合った瞬間に俺は二人を放り投げてから馬
 車を飛び降りたのだった。











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