そして女神は……

菫川ヒイロ

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そして天使がやってくる

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 最近みんなの記憶力がおかしい。
 
 
「あれ? もう飯は食べったけ? 」


 そんな事を言うようになってしまったら当然疑ってしまうのだ、もう長くはない
 のではないだろうかと。そんな事は考えたくはないがこればかりはどうしようも
 ないのである。
 
 
「もう食べたからなくなっているんだよ。それにあまり食べすぎもよくないよ」


「そうか、お前が言うのならそうしておこう」


 まあこうして言う事を聞いてくれるからまだ大丈夫だとは思うけど、それでも最
 近はこのやり取りが増えてきたので何かしら注意が必要だとは思っているのだ。
 急に来るらしいし、なにがあっても直ぐに対応できるようにしておかないといけ
 ないと考えていたから反応出来たのかもしれない。
 
 
 俺には両親がいない。
 それは単に俺が捨てられたというだけの事だったけど、どんな理由があったのか
 は知らないし、どんな理由であろうとも許すつもりはなかった。それでもこうし
 て生きているのはこの人達が俺を育ててくれたからなのだ。
 
 
 この村の人達はみんな俺にやさしかった。
 だから恩返しがしたかった。そんな理由が最初でそこから勇者を目指す事にした
 のはとても自然な流れだったようにおもう。だって勇者になればこの村の人達を
 守れるし、楽にもしてあげられるだろう。それに俺の様な子供も居なくなるだろ
 と思ったのだ。こんな気持ちで生きて行く事はそれほど楽しいものではない。
 
 
 いつもの様に山での雑用を終え、狩ったスリムボーを担いで帰って来た俺はすぐ
 にさばいた。やはり肉は鮮度が命で、さっさと血抜きをしていまい、内臓を取る。
 皮をはいで解体するのももう手慣れたものだった。いろいろとここの人達に教え
 てもらったが、これは単にここの人達が肉が好きだという所が大きいような気が
 する。
 
 
 実によく肉を食べるこの村の人達、食べ物がそんなに多くはないからそうなって
 しまったのかもしれないが、よく飽きもせずに食べられるものだと思う。俺はも
 っと他の物を食べたいのだけれど、そんな事はお構いなしなのだ。そして今日も
 俺は肉を焼いていた。
 
 
 みんなの分を作るのはそれなりの作業量で大変ではある。
 でもだからといってそれが嫌だとかは思わないし、これが俺のやるべき事だから
 やっているというだけだ。感謝される程のことでもないがたまには手を抜きたく
 なることもあるし、悪戯もしたい年頃だった。
 
 
「辛っら」


 それは条件反射だった。自然と身体は動き、そしてその盗み食いをした犯人を捕
 らえる事に成功した。でもおかしいのである、確かな感触があるのにそこには誰
 も居なかったのだから。そして声が聞こえる。
 
 
「バレてしまっては仕方が無いな」


 これが俺と師匠との出会いだった。
 
 







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