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そして女神は……
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しおりを挟む「おい、ふざけるなよ! こっちは戦いたくてうずうずしてるっていうのに、こん
な事が許される訳がないだろ! いいから俺と戦え! そんな物で俺は死んだり
はしないからさっさとかかって来い! 」
スミスにとってそれは許せない事である。
戦いもせずに勝つなんて意味が分からないし、そんな形で勝った所で嬉しくなん
てない。それはスミスのルールに反するのである。だから戦いはいつだって生か
死の二択でありそれ以外はあり得なかった。
「勝手にルールを変えないで下さい。それにもうC子選手は舞台を降りたので場外と
なり失格です」
審判がそう言うがスミスにそんな言葉が届く事はない。
今までの不満が溜まりに溜まっているのだ、ルールなど知った事ではないのです
ぐにでも飛び掛かろうとして止めた。止めざるを得なかったのは魔王が見ていた
からだ。
こんな武闘大会のルールなどどうでもいいが魔族としてのルールは絶対である。
それだけは身に染みているスミスにとっては声に出さなくても口の動きだけで魔
王が何を言っているのかは分かったのである。だから従った。審判にではなく魔
王に。
「分かったよ。それで、俺が勝ちでいいのか? 」
「はい、スミス選手の勝利です! 」
勝ち名乗りを受けてスミスは舞台を降りた。
が、それで終わりな訳がないのである。だって魔族なのだから、スミスなのだか
ら、当然のようにC子の元へと行くと呼び止める。
「おい、ちょっと待てよ」
「何? もう試合は終わったのにまだ何か用? 」
「あの場ではああ言ったが、そういう訳にもいかないだろ? ちょっと面を貸せよ」
頷いたC子を連れて人気のない場所へと連れ出したスミスはやる気満々だった。
舞台上ならばルール違反ではあるが、ここではルールなんてものはないのだ。
そして黙ってついて来たC子が口を開く。
「先に言っておくけど私にはもう心に決めた人が居るの」
思っていたのと違うC子の反応にスミスはすぐに訂正をする。
何か勝手に自分の尊厳が踏みにじられてしまうような危機感があった。
「何を勘違いしているのか知らないがあんな試合でお前も消化不良だろ? それを
使いたかったのだろ? ここならルールなんて関係がないからな、好きなだけ使
ってくれていいぞ。俺は慣れているからな」
指を差したのはC子が持っていた長物だ。
明らかに業物の風格があるそれをスミスは是非とも味わってみたかった。
魔界にだって武器はあるし、スミスはこう見えて武器には精通しているプロフェ
ッショナルでマニアでもあるのだ。
だからこそ、見た事のないそれに興味があった。
こればかりは魔王に何と言われようとも止める事は出来ない。絶対に知っておか
なければならない物だと思えた。コレクション目的ならば別に奪えばいいのだけ
なのだろうが、武器とは使い手があってこそだとスミスは経験から知っていたか
らこそC子に使わせたかった。武器を持ったその佇まいが様になっていたから。
「え! お前、これを使ってみたかったの? 生憎私にはそういう趣味はないし、
これをそんな使い方しようなんて……お前、変態なのね」
「何の話をしている? 」
「ナニの話をしてるけど? 」
こっちは真剣に話しているのに中々上手く伝わないものだとかそんな悠長な事を
考える事などスミスはしない。武器に関してはいたって真剣、こっちから仕掛け
れば相手も戦わざる得ないという単純な法則に則ってすぐに飛び交ったスミスで
あったが、
「あれ? 」
急に視界が崩れる。
斬られたのだと思い無理やり頭を元の位置へと戻したのはスミスの特性上それが
最適解であったからだが、生憎その行動は何の意味も持たなくなってしまってい
た。そしてスミスはそのまま事切れた。
「流石、よく斬れる。試し斬りがしたかったのよね」
その現場を隠れて見ていた者が居る事をご主人様から頂いたそれをぶんぶんと振
り回すC子は気付いていたが放っておく事にしたのには理由がちゃんとあるが、
ここでいう必要もない。こうして裏の第一試合が終わった頃、舞台上では第二試
合が始まっていた。
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