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そして女神は……
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しおりを挟む「ちょっとしたハプニングはありましたが続けて一回戦第二試合、匿名希望選手対
クサカベトオル選手。両選手入場! 」
匿名希望選手は長い髪をなびかせて舞台へ上がる。その美貌は正に女神然として
いて神々しい。一方クサカベトオルはしっかりと鍛え上げた身体に道着を身に纏
ってはいるもののとても自然な佇まいで、これから戦うという雰囲気は感じられ
ない。
「お前、何をそんなに怒っているんだ? 」
匿名希望選手はずっとトオルを睨みつけている。
それはこの大会が始まってからずっとだったので流石にトオルも面倒臭くなって
いたのだ。物分かりのいいトオルにとって匿名希望選手が女神だという事は出会
ってすぐに分かっていた。
「はあ? アンタが私を誰だか分からないとかふざけた事を言うからでしょ。どう
なってんのよその頭は。直接頭に手を突っ込んで思い出させてあげるわ」
女神にしてみればあり得ない事の連続で、そんな本来あるはずの無い事が起こっ
ている現状で様々なイライラが溜まりに溜まっていた。流石にその小さな堪忍袋
では限界が来ていたのだ。
「なんでそんな事をするんだ、怖い事を言うなよ」
トオルはそんな女神を見ながら自分がしている事が間違っていなかったと思った。
寧ろもっとイライラして欲しいとさえ思っており、どうすれば女神のイライラが
爆発するのかを考え始めている程だ。
「仕方ないでしょ、どういう訳かこの世界だと私の力が上手く使えないんだから!
直接いじくるしかないじゃない。そうすればアンタも思い出すわよ、私が誰かと
いう事を、そして何を約束したかがね」
本来ならばこんなに時間がかかるなんて事は無かったのだ。いつも通りの力が使
えたのならさっさと終わらせて天界へと帰っている。それがどういう訳か本来の
力がまったく使えないし、転移者が何処に居るのかも分からず、探すのに苦労し
たのである。
三人娘に連れられてやって来たら何故かこんな大会へ出る羽目になるし、何もか
もが自分の思い通りにならないとかあり得なかった。それでも早くこの仕事を片
付ける為に我慢したのだ。もう手っ取り早く済ませてしまってもいいだろう。所
詮は下界の出来事なのだから。
「そろそろよろしいですか? 一回戦第二試合、はじめ! 」
「俺、お前に会った事があるのか? 」
ギュん! バッ バッ バッ バッ
「ある! 」
ブババババババ ビッ!
「うーん、知らないな」
タッ タタタタタ
「この私を忘れるなんて万死に値するわ。ほら、さっさと頭を出しなさい! 」
ガッ ガッ ガッ
「絶対嫌なんだが」
ビュッ
「ちょこまか動くな! じっとしていろ! 」
ダンッ ビビビビッ
「面倒臭いな、さっさと終わらすか」
す~
「アンタの所為で私がわざわざこんな所まで来て、こんな馬鹿なことまでしないと
いけないとかあり得ないのよ。まったく、仕事がどうだとか結婚しろだとかうる
さいのよ! 私は自分で選んでこうしてるのに、私の邪魔をするんじゃない! 」
ドン!!! ブオンッ! ドタ
トオルが腕を一突きすればその衝撃派によって吹っ飛んだ女神は壁にぶつかり、
そして気絶、場外へと落ちた。
「場外! クサカベトオル選手の勝利です! 」
トオルはその不様に気絶している女神の元へと歩いて行くと頭に手を置いた。
「まあ仕方ないから結婚ぐらいはしてやるよ」
トオルは物分かりがいいのだ。
そして女神は結婚する事になった。
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