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そして女神は……
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しおりを挟むトオルは別にこの女神が好きだとかいう感情はまったくもっていなかった。
ただ自分がそうするべきだと思ったからしたというだけの事でそれ以外の理由は
ないのである。トオルにっとてこれはただの予定調和でしかない。気絶している
女神を肩に担いでトオルが下がって行くのを観客たちはボー然と見送った。
「一回戦第三試合。魔王選手対A子選手、両選手入場! 」
魔王はローブを羽織って入場して来たが、その表情は険しかった。一方A子はにこ
やかに笑顔を振りまいて入場してきた。それは本来の彼女の姿ではないが、これも
全ては教えの為である。A子はご主人様に教えられた事は必ず守るのである。だか
ら今回の嘘笑顔も教え通りであった。
それは観客を味方につけておけば何かあった時に有利だからという理由からだが
A子にしてみればそんな事はどうでもよくて、ただご主人様に評価してもらいたい
という思いからとっている行動でしかない。
「おお、あいつなかなかやるな」
なんてご主人様がつぶやいているのを確認できればもう他に何も必要としないの
がA子だった。
「それでは一回戦第三試合、はじめ! 」
だから試合開始の合図に遅れてしまったのは仕方がなかったが、魔王は決して手
を抜いたりなどはしない主義であったし、それは初手から様子見なんてものをす
るつもりはなく一撃で殺す気で放った技であった。正に最高の一撃だと魔王も思
って程だった。
「おっと危ない」
それなのにちゃんとA子は回避する事に成功する。
まだこんな序盤でやられる訳にはいかない、もう少し魔王が強いという事を観客
達に見せないといけない為だ。だからここからは観客に魔王が強いって思っても
らう為のA子のターンだった。
「じゃあ行きますか」
足を前後に開き右手は前へ突き出し、左手は添えるようにクロスしたA子からは
闘気が溢れ出す。これはご主人様に教えてもらった戦闘スタイル、第三段階まで
解放する事を許されているが、とりあえずは第一段階からスタートする事にした
のはA子らしい。
「なんだそれは、それがお前の力という事か? 」
魔王の問いに答える事はなくA子は動いた。
それはそれはゆっくりとオーバーに、魔王が反応出来るようにした。
「早い! だが甘い! 」
魔王はA子の蹴りを片手で防ぐ、がそこからが始まりであった。
攻撃のラッシュラッシュラッシュ、A子の攻撃は止まらない。さすがの魔王もその
連続攻撃には防御でしのぐしかないがそれはいつかは終わる事を見込んでの事だ
った。こんな攻撃が長く続く訳がないと経験から知っている。
そして予想通りA子の攻撃が終わった瞬間、魔王の攻撃が飛んでくる。
ズンッ
クリーンヒットに見えたそれが残像だった事に魔王は驚きを隠せない。
A子は引いた。
このままではいけないと思ったのだ、このままではA子は勝ってしまう。まだ第一
段階であるにも関わらずである。これがどういう事なのかと言えば、A子が確実に
成長しているという事。ちゃんと言われた修行をこなして来たからこその結果、
だからプランの変更をする事にした。
「まいりました。降参です」
A子は堂々と手を上げて宣言するも当然観客は納得などしない。
「なんだ、どういう事だ貴様! 」
それは魔王も同じだった。明らかに降参するようなタイミングでは無かった。
「これ以上やっても意味はないからここで終わりにするって言っているの」
そう言うとA子はさっさと舞台から降りてしまい、スタスタと行ってしまう。
何が起こったのか分からずざわつく観客達の中でも審判はちゃんと仕事をする。
「魔王選手の勝利です! 」
そして勝利宣言がされた。
納得出来ない観客と魔王を放置して。
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