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そして女神は……
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しおりを挟むB子はずっと考えていた。
A子もC子もちゃんと自分達の役割を果たしていたが、自分もそうするべきなのだ
ろうかと。分かってはいるのだ、それがもっともご主人様の役に立てるという事
ぐらい。でもそれでいいのかと考えてしまうのだ、だってB子ってそんな奴だった
か? と。
もっと自由であるべきなのだ。
それこそがB子らしさであり、B子としての生き様である。
それならば与えられた役割を無視してもなんら問題はないのではないか? 寧ろ
そうする事を求められているのではないのか? 否、きっとそうである。そう決
意した所へ声をかけられた。
「ちょっといい? 話があるの」
「私にはないのよA子」
「大事な話だからちゃんと聞いて」
B子にとってA子とはとても面倒臭い相手である事に変わりはない。けれどA子が
成長したようにB子も成長しているのである。だから話は聞く。でもそれだけだ。
そこから先は気分次第である事に変わりはないのである。
「それでは一回戦第四試合。B子選手対ロバ―選手、両選手入場! 」
ウェーブのかかった髪に布地が多い服を身に纏い体系がまったく分からないロバ
ーに対してB子スキップしながら入場して来るというなんともB子らしい入場であ
った。そんなB子に対してロバ―は口を開く。
「ねえ、アンタが私の相手らしいけどさっさと降参した方がよくない? 」
いつも通りの軽口に嫌味を足したそれはロバ―らしく、それに返事をするB子も
彼女らしい返しをする。
「へぇ? 」
「いや、だからさ。さっさと『まいりました、降参しますロバ―様。貴女様の前で
は私の力など足元にも及びません。ですからどうぞお慈悲を』って言えば手加減
してあげるって言っているのよ。分からない? 」
思っていたのと違う返事であったため、本当に聞こえていないのかそれとも理解
出来ない子なのかが分からなかったロバ―は更に嫌味を上乗せして再びB子へ問う
が当然B子の返事は決まっていた。
「はぁ? 」
「さっきから何なのその返事の仕方、ムカつくんですけど! あんまりナメてると
本気で殺すけどいいの? アンタはもうすぐ死ぬけどそれでいいの? 」
ロバ―がこんなにも馬鹿にされたのは子供の時以来である。
その時ロバ―は我を忘れて相手をボコボコにしてしまい、その無残さが話題にな
ったぐらいの凄まじさであった。それからロバ―は魔王候補としての人生が始ま
ったのだ。
「え? 」
B子の対応が変わる訳がなかった。
「はい、もう決定です。殺します。完全に殺します。今決定しました。さてどうや
って殺そうかな? 痛いのがいい? 苦しいのがいい? やっぱりどっちもがい
いいよね、アンタみたいなのは。実力差も分からないような奴が調子に乗った結
果どうなるのか思い知るといいわ」
魔王はロバーに気をつけろと忠告した。
それが何かは分からないがこいつらは何かを隠し持っているのだと言われたが、
はっきり言ってそうは見えないのだ。そもそもその何かを教えて欲しいのに、そ
れが分からないとかじゃあ話にならない。
「ほう、それは楽しみなのよ。キラッ」
B子は目元でピースサインをした。
「お前、マジで何なの! 」
「あの殺したら失格になりますが、ルールは分かっていますよね」
「それぐらい分かってるわ。さっさとはじめて」
審判に釘を刺されたがそんなものはどうでもいい。ロバーは別にこんな大会なん
て興味はなかった。出場したのは単に魔王から命令されたからという理由だけ。
後で怒られるかもしれないがそれこそそんな事は後で考えればいい。
絶対にこいつは殺すのだと決めていた。
「それでは一回戦第四試合、はじめ! 」
合図と共にロバーは動いたがすでにB子はその場に居なかった。
「後ろなのよ馬~鹿」
振り返ればそこには確かにB子が居る。
「誰が馬鹿よ! 」
振った拳は空を切る。
「こっちなのよ馬~鹿」
今度は目の前にいた。
完全に馬鹿にされているこの状況でロバーはブチギレた。
何度も何度も同じように避けるB子、それを追いかけるようにロバーは攻撃をする
がまったく当たる気配がなかった。
やがてロバーにはB子が何人もいるようにさえ見えて来ていた。怒りなんてものは
そう長くは続くものではないし、疲労と共にロバーの精神はジリジリと削られて
行く。どうすれば当たるのかなんてもう考えてはいない、ただどうすればこの苦
痛から逃れられるのかを考え始めてしまっていた。
挫折なんてものをした事がなかった。
他人が出来る事は他人よりうまく出来たし、他人が出来ない事も当然出来た。
だから自分に不可能はないのだと思っていたあの頃は何もかもが楽しかった。
誰もがロバーを羨望の眼差しで見ていたあの頃。
でも自分よりも強い奴がいるのだと知ったのは魔王軍に入ってからだ。
それでも相手が自分よりも年上だからという理由があったので気にする事は無く
自分もすぐに追いつけるのだと簡単に考えていた。経験を積めばあれぐらいと
自分を納得させていた。
だから今のこの状況が受け入れられない。
自分よりも強くて、年下に見えるB子にこうも簡単にあしらわれているという事が
受け入れられないのだ。もうどんな言い訳も通用はしない。ロバーの精神は今、
細い糸一本だけがどうにか繋がっていて、いつ切れてもおかしくないようなそん
なギリギリの状態だった。
「私にはまだやる事があるからもう終わりにするのよ」
トン! ドサッ
「審判のおっさん、確認するのよ」
B子にそう言われて何が起こっているのかが分かっていない審判は首を傾げるが
B子の足元に突っ伏しているロバーが目に入るとすぐに駆け寄ってきて確認した。
「き、気絶しています。B子選手の勝利です! 」
こうして一回戦全ての試合が終わった。
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