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そして女神は……
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しおりを挟む「決勝戦。クサカベトオル選手対魔王選手、両選手入場! 」
リズミカルに歩いてやって来たのはクサカベトオル、にやにやしながら舞台に上
がる。一方魔王の表情は暗い、トオルを見る目は不信感で一杯だった。
「一体何をたくらんでいる? 」
それは魔王が今一番思っている事で知りたい事だったからこそ出た言葉だった。
「何だ、バレてしまったのなら仕方がない」
そう言ったトオルは付けていたリストバンドを投げ捨て、インナーを脱ぎ捨て、
靴を脱ぎ捨てるとドスンという音がする。
「今、俺は枷を外した」
トオルは物分かりがいいのだ。
「そ、そうか」
したり顔で言うトオルだが魔王は何を言っているのかが理解できなかった。だか
ら何だというのだろうか? それは別に聞きたかった事ではないし、どうでもい
い事だとさえ思えた。
「それでは決勝戦、はじめ! 」
そして戦いは始まってしまう。
「俺は今とてもワクワクしている、ワクワクさんだな。だから出来るだけお前には
長く付き合って欲しいとは思っているのだが、それがお前に出来るのかは分から
ない。でもやってもらわないと困るしお前なら出来るはずなんだ。だからお前に
は少しばかり期待をしてしまっている。悪いな魔王、簡単に死んでくれるなよ」
そしてゆっくりとトオルは構えた。
「見てくれ、これが俺の闘気だ。なかなか上手くいかずにいろいろと試したんだが
漸くこの形に辿りついたんだ。結構難しいんだぞこれ。魔法とかなんてものを俺
は求めていたんじゃなく、こういうのを求めていたんだ。だというのにどうして
こんな世界へ来たしまったのかと最初はそれはそれは落ち込んださ。でも自分の
力の使い方が分かったらそんなものは全部吹き飛んだね。だって俺の夢が叶うと
確信できたから。だからその為の努力はいくらでも出来た。ここに至るまでどれ
だけの失敗があったかお前には分かるまい。でももういいんだ。今日ここで俺の
夢が全て叶うのだから。嗚呼、なんて素晴らしいんだろう」
おそらく今悦に入っているであろうトオルを見て魔王は恐怖を覚えた。
何の話をしているのかは分からない、分からないがとにかくこれから起こる事が
絶対にヤバいという事だけは感じたのだ。空気がひりつく。
「子供の頃によくやったものはやはり覚えているものだな。まあ、忘れる要素がな
いという方が正しいのかもしれないが。カッコいいは正義だろ。何となく大きな
声を出せば出るんじゃないかとかいう淡い期待が恥ずかしい思い出を作る事にな
ってしまうが、でもそういうのって結構重要だと思うんだよ。実際に出来るよう
になった時は感動するから。マジでさ、こうやってタメを作る所がカッコいいだ
ろ? 」
魔王にはそれが魔法にしか思えないが、ただそれがどの系統に当てはまるのかが
分からなかった。それ故に防御をするにしても心許ない。それに今トオルの手の
中にある圧縮されたエネルギーを考えれば中途半端な事は出来ない。どうする?
どうすればいい。魔王の手札ではどう考えても足りていない。
出すべき手札が無いのならあれが放たれたら死ぬだけだ。
どうせ死ぬのなら悪あがきくらいはしないと駄目だろう。魔王である以上、簡単
に死ぬなんて事が許される訳もなく、先に死んでいった者にも示しがつかない。
あの世で笑われるかもしれないが、出来る事をしよう。
「じゃあな、魔王。またどこかで会おう」
だから守る事を捨て、攻撃をする。しかし最大魔法をぶち込むも簡単にかき消え
てしまった。トオルから放たれたそれを魔王はもうどうする事も出来ない。こん
な死に方をするなんて思っていなかったし、結局どうしてこの場へ来てしまった
のかも分からないままだが、トオルにはきっと分かっているのだろうなと思った。
「こんなもの、簡単に死んでしまうだろうが」
こうして魔王は倒され、そして大会は終わった。
「クサカベトオル選手、失格! 」
審判はちゃんと仕事をした。
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