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神に祈りを
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しおりを挟む「どうしたんだ、そんな失恋でもしたような顔をして? 」
確かにそうかもしれない。この感情はそう例えるのが一番しっくりくる気がした。
シスターが死んだ。死んでいた。あれはどう見ても殺されたのだ。起こるはずの
無い事が起こってしまった。犯人はどう考えてもそこでくつろいでいる男だ。
悪びれる事もなく銃をばらして整備していた。
「こんな事をしてどうなるか分かっているのか? 何をしようとしている」
純粋な疑問でもあった。
この町がめちゃくちゃになるに決まっているのだから。
それはシスターが望んだものではない、あの人は全てを救う為に死んだのだ。
「ソイダよ。私はなあ、もううんざりなんだよ。あれやこれやを気にして生きて
行くのは非常によくない事だと思わないか? だから全てを一纏めにしてみた
だけさ。どうせ全部同じゴミなんだから一緒にした方がいいに決まっているだろ。
結局最後は燃やすんだから。ただなかなか首を縦に振らない奴がいたらどうする?
殺すよな? 私達はそうやって来たんだずっと、それはこれからも変わらない。
従えない奴はそうするしかないんだよ、でお前はどうする? 」
そこまで死ぬ事が嫌ではなかった。
だからこの場で死んでもいいとすら思ったが、そんな最後はあり得ないのも確か
だった。まだやるべき事が俺にはあるはずだ。だから、
「まだ死ねない」
「そうかそうか。お前ならないそう言うと思っていたよ。お前は実に頭がいい。
そういう奴を私は嫌いじゃないんだ」
そして俺は教会の神父になった。
*****
「なあソイダ。本当にするのか? 」
「まあな。それと何度言えば分かるんだ、俺は神父だ」
何度言ったって俺の事を神父と呼ばないこいつらにもそれなりの理由がある事
ぐらいはわかっていた。みんなシスターに育てられたのだ、俺の事を家族だと
思っているのだろう。確かに俺もこいつらも一度捨てられた身ではあるから、
そういうのに憧れるのは分からなくはない。
「もういいじゃないか、シスターだってそんな事を望んではいないよ」
でもそんな立派な事を口にするような奴が俺と家族な訳がない。
俺は背信者なのだ。
「お前もいずれ分かるよ、後は頼んだぞ」
恋に狂うにはまだ子供すぎる。これが大人の恋というものなのだ。
今日まで大分待ったが、これでやっとあいつ等を殺せる。準備は万端、後は
引き金を引くだけだ。
そのはずだったのに、そう上手くはいかない。
おいおい神様、どうしちまったんだ? 寝ているのか?
「ソイダよ、あんまり調子に乗るなよ? これは恩を仇で返すって事だぞ?
なあ、分かってるのか? こんな事をして只で済むと思うなよ」
そう言いながらパンパンと無駄な銃声が響き渡る。
威嚇しているつもりなのだろうがそんな事で今更ビビったりはしないが、
流石に人数差があり過ぎた。追い詰められてしまった。
結局どんなに祈っても殺されてしまったシスター同様、俺も殺されると思った
のにそうはならなかった。ジャムったのだ。
「愛しているぜ神様、あんたは最高だ」
これで漸く俺の初恋は終わりを迎えた。
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