恋愛倉庫

７回目のクリスマス

３

　気が付いたら私は駅前に居た。
　どうやらもうここまで来る労力は必要ないようだ。
　それならそれでいいとは思うが、これが正解なのかは分からないから困る。
　どうせなら何かしら教えてくれるイルカが居ればいいのに……
　
　
　気分は乗らないが電車には乗らないといけないのでホームで私は出来るだけ
　真ん中を歩いた。そして開いている椅子に座るのも嫌々である。誰が好き好んで
　デブと老人の間に座りたいと思うだろうか？　全ては電車が入って来るまでの
　我慢である。
　
　
　時間というものが誰にでも平等にあるものだとして、今の私の１分は実は５分
　なのではないのかと疑いたくなるぐらいの感覚の中で私は動かずにじっとして
　いた。何かが起こる可能性は出来るだけ排除すべきである。
　
　
　電車が入ってくる音楽が鳴る。
　有名な人の曲らしいがらしいという事しかしらない私にとってはどうでもいい
　音でしかなく、今は耳障りでしかない。誰かが私に近寄って来ないかが重要なの
　だから。
　
　
　出来る事なら座りたかった。
　ある程度の人数ではあるが座れなくはないのだ。
　ただ既に座っている人物が安酒を嗜んでいなければ誰だって座りたいのだろうが
　現実はいつだって不条理だった。まあクリスマスだからなのだろう。
　
　
　当然私は車両を変える。
　でもそれは誰だってそうするのだ、私だけが冴えた方法を思いついた訳では無
　くて既に行動に移している人の後をずらずらと列が出来ていた。電車の中を移動
　するのっていつも変な感覚になる、少しだけ時間を跨いでいるようなそんな
　超越者にでもなったような感じがぞわりと車両を移る度にするのだ。
　
　
　ぞわりぞわりと辿り着いたのは最後尾。
　いつの間にか景色が変わって街中から河へ、橋の上を走る電車の中で私は結局
　座れないままで居た。一体、何の為の移動だったのだろうか？　と残念な気持ち
　になりながら車窓から河を眺める。
　
　
　一体、どれくらいの幅があるのだろうか？
　普段はそんなに気にしないが何故だか今は気になった。
　ずっと河をみながら考える、ずっと見ていてどうやら車両が動いていないという
　新事実に気が付いた。何かのトラブルなのだろうか？　それならば何かしらの
　アナウンスがあるはずだが何もない。
　
　
「おい、どうなってんだ！　」


　誰かが大声を出す。
　そして今の状況が分かったのだ。
　何故かこの車両だけが切り離されていた。
　そんなふざけた事があるのか？　なんて今更である。
　だって本番はこれからだったのだから。
　
　
　電車が橋ごと爆破されたのだ。
　
　
　『そこまでするか！？　』
　
　
　そしてまた始まるのだからいい加減にして欲しい。