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その先に見えているもの
3
しおりを挟む彼女を初めて見たのは桜が舞い散る季節で、そんな中儚げに見上げる彼女の姿が
僕には衝撃的だった。こんな人が居るのだと思った。その光景があまりにも
綺麗過ぎたから、彼女が綺麗過ぎたから、僕はときめいてしまった。
そして現れた男に向けた彼女の笑顔を見て僕のときめきは散ってしまった。
でもそれは彼女に彼氏が居たからという事ではなくて、彼女のあの今にも消えて
しまいそうな感じが一瞬で無くなってしまったからだった。僕には彼女のあの
瞬間だけが彼女なのであって今の楽しそうにうれしそうにしている彼女には何の
魅力も感じなかったのだ。
「何見てるんだ? 嗚呼、またやってるのか。よくもまあ飽きずにやってるよな」
彼女が僕と同じ学校に通っている事を知ったのは最近だった。
「言う方も言う方だが、言われる方も何か言い返せばいいのに」
二階の窓から一緒に覗き込みながらそんな事を言う彼の感覚が一般的には正しい
のだろうが、僕はそんな事など一切考えていなかった。ただただ彼女の表情ばかり
を見ていた。
そう言えば僕の説明はまだだったのでしておこう、今はタイムトラベラーです。
*****
一度失敗したからってその人の人生が終わりじゃないとか言われても、
そんなものは一部の人にしか言えない訳で、大半はそこで終わってしまうのだ。
だから足を引っ張る奴が存在出来ているのだし、取り返しがつかないからこそ
失敗を恐れるのだ。
ただ僕の場合は少々話がややこしくなるのだが……
これで何度目だっただろうか?
彼女が持っていたナイフが僕に刺ささったのは、倒された振りをしていた僕が
間に割って入ったからだった。正に今しかない一度キリのその瞬間に。
「はあ? アンタ誰よ? 」
突然割って入って来た僕に彼女がそう言うの当然で、目的を果たせなかった
という事においては彼女にとっては失敗になるが、僕にとっては成功である。
だって僕は彼女を犯罪者にはしたくなかったのだから。
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