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お前しかいない
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しおりを挟む春。
桜が咲き誇る並木道を通るとヒューと風が吹き抜けた。
その風につられて花びらがふわっと舞い散る中、俺の口から不意に言葉が溢れた。
「綺麗だ」
桜吹雪の中で凛と立つ彼女の姿が目に入ったからだ。
*****
俺はその、朝の光景が今でも脳裏にこびりついて忘れられずに
悶々としながら高校へと向かっていた。
足取りは重いが、流石に初日から遅れる訳にはいかない。
そして自分のクラスに入ってみれば、まさかの出来事が起こり
俺はずっと気が朧だった。だって、朝のあの子が俺と同じクラスだったのだ
しかも俺の前の席という……
こんな事があり得るのだろうか?
実はまだベットで眠っているんじゃないかと思うくらい俺の頭は回っておらず、
だからつい思ってしまう。
『もしかしてこれは運命なのでは? 』
なんて勘違いをしていると
「ほら、行くよ? 」
そんな俺に声をかけて現実に引き戻してくれたのは加納鈴、小学校からの
幼馴染だった。
どうやら生徒は教室から移動するようで、すでにみんな教室から出ている。
もちろん彼女もすでに前の席には居なかった。
だから教室には俺と鈴しか居らず
「もう、しっかりしてよね。いくら入学出来たからって気抜きすぎじゃない?
栄ちゃんってそういうとこあるよね」
そう言って行ってしまう鈴の後について俺も教室を出る。
そうだった、そうだった。目的をすっかり忘れていたのだ。
俺がどうしてこの学校に入ったのか?
大した学力もない俺が、必死こいてどうにか入れたのは目的があったからだ。
殆んど奇跡だとまで教師に言わせたというのに。
そんな奇跡を起こしてまで入りかったのはひとえに
この学校に映像部があったからだった。
その為だけに高校に進学したといっても過言ではなく、
本当にそれくらい俺にとっての目標だったのだ。
だからその事実を知った時、俺は天地がひっくり返る程の衝撃を受けたのだ。
なんと映像部が無かったのだ。
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