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お前しかいない

9

　俺は鈴の新作が出来あがるまでずっと、頭の中で映像を再生した。
　何度も何度も再生していると、だんだん違うものになっていったので
　俺は頭の中のその映像を書き出してみる事にした。
　
　
　これ以上、この感動が変わってしまわないようにする為に、
　ヘタクソな絵を書いて保存していく、何枚も何枚も書いて書いて
　書き続けてようやく出来たそれは、あまりにも酷い出来ではあったけれど、
　それでも俺はその時、その瞬間がとても楽しかったのだ。
　
　
　勢いで書いて、あーでもない、こーでもないと修正し
　形になって、自分の求めていたものにだんだん近づいていく。
　物を作るという行為がとても楽しかった。
　
　
　そして作ってみて分かったんだ、やっぱり鈴は凄いって事が。
　だから俺はこの凄さをみんなに知ってもらいたくなった。
　でも鈴はそれを断った。
　
　
「私のはそういうのじゃないんだよ、それにこんなの世間になんて
　出せないからね、絶対！　恥ずかしすぎるよ」
　
　
　そう言われても俺は諦める事など出来なかったから
　どうにかならないか考えてみてもわからなかったので
　大先生に聞いてみる事にした。
　
　
　検索したらいろいろと出てきたが広告ばかりで、クリックする事すら嫌になって
　スクロールしたら動画が出て来たのでなんとなくクリックした。
　
　
「なんだこれ？　」


　その動画は高校生が制作したもので
　出来はいいとは言えないが、粗いながらもうまく出来ていた。
　高校生でもこんなものが作れるんだと、ちょっと関心して
　そして、その動画を見ながら俺は思ってしまったんだ、
　
　
　俺でも出来るんじゃないか？　って、俺もやってみたい！　って。
　そして目の前には俺が書いたヘタクソな絵が何枚もあった。
　
　
　
　
　＊＊＊＊＊
　
　
　
　
　俺はそれを鈴に見せて言った
　
　
「俺はこれを作りたいんだ！　」


　鈴は俺の書いたヘタクソな絵を見てこう言う。
　
　
「何これ？　」