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お前しかいない

２１

　私はワクワクしていた。
　こうして学校帰りに友達と寄り道したりして過ごす事に憧れを抱いていたからだ。
　
　
　　[『おお、何かすごく学生っぽいんじゃない？　』
　　
　　
　私は凄く青春している感じがして嬉しかったのだが、
　こうして三人で集まってはみたものの、
　これと言って何を話していいのか分からない状態で
　
　一人はハンバーガーをムシャムシャ食べているし、
　もう一人は嬉しそうにそれを見ているし、
　私はシェイクを吸いながらさっそく困っていた。
　
　
「ねえ、渡辺さんってドⅯなの？　」


「うっ、ゴホッゴホッ」


　吸っていたシェイクが変な所に入る。
　
　
「ごめん。大丈夫？　」
　
　
　紙ナプキンを渡してもらうが、いきなり何て事を言うのだこの人は。


「そういう事いきなり言う？　大体、何でそうなるのよ！　」


「いやー、何となく？　」


　疑問形で返されても困るのだが、ちゃんと説明して欲しい。
　
　
「それは私も思っていましたよ、千里ちゃんはマゾなんだろうなって」


「はぁ？　何でよ。てかいきなり名前呼びとか」


「あっ、ダメでした？　私は虹子でいいですよ？　鈴さんも私の事を
　レインボーって呼んでますし」
　
　
「呼んでないし、本当にレインボーって呼ぶわよ」


「いいですけど、それ恥ずかしくないですか？　センスない人って思われますよ」


　顔の割には結構エグいことを言う虹子。
　
　
「私も千里でいいわよ。あんたはどうすんのよ」


「何でもいいわよ、好きに呼びなさい」


「じゃあ、先生！　」


「それは止めて！　」


「でも何でもいいって」


「分かったわよ、鈴でいいわ鈴で」


　こうして私達はお互いを名前で呼ぶようになった。
　
　
「で、どうして私がドⅯなのよ？　」

「だって、あんなの見せられたら誰だってそう思うでしょうが。
　普通、もっとすぐにキレて辞めてるわよ」
　
　
「確かに、千里は追い込まれるの好きですよね」


「そ、そんな事はないわよ。あれはプロとしての意地っていうか
　何っていうか、そう言うやつよ！　」
　
　
　私はそう反論するが二人は懐疑的である。
　
　

　＊＊＊＊＊
　
　
　
　
　気が付くと俺は教室に一人だった。
　いつの間にか他の部員は居なくなっており、時間も大分経っていた。
　ついつい夢中になって鈴の脚本を読みふけってしまった。


「よし、じゃあ帰るとしますか」


　俺は教室の鍵を閉めて、一人寂しく下校する。