恋愛倉庫

第一王子に婚約破棄された直後に第三王子から求婚される私の物語

３

　私とシロンは幼馴染である。
　だから子供の頃はよく遊んだし、よく話をした。
　
　
　シロンは今は寡黙で何を考えているのか分からない王子として認識されているが、
　昔はそんな事などなく、むしろ好奇心旺盛な子供だったのだ。
　
　
「俺がこの国の王になるんだ！　」


　なんて言ってしまう程だったのに、今や誰からも見向きもされない王子
　となってしまい、私はそんなシロンを見たくはなかった。
　だから今まで距離を取っていたのに……
　それがどうして急に結婚してくれなんて言うのか分からなかった。
　
　
「エルダ、俺は君が兄さんと婚約したと聞いた時は嘘だと思ったよ。
　でも王が決めた事だと聞いて俺は仕方がないと思ってしまったんだ。
　その方が君が幸せになれると自分に言い聞かせて、自分を納得させたよ」
　
　
　シロンは話し出す。
　
　
「でもそんな君が兄さんと居る所みて俺には分かってしまった。
　君がいろいろと我慢している事がね。嫌な事があると肘を触る君の癖が出て
　いたよ。直した方がいいって言っただろ？　」
　
　
　私は昔、彼にその事を指摘された事を思いだす。
　
　
「だから、決めたんだ。王が決めた事は絶対だ、婚約の事実は変わる事はない。
　でも兄さんが婚約破棄をする事はそのかぎりじゃない！　」
　
　
　みるみるヘルムの顔が変わって行く。
　
　
「そう、これは僕が仕組んだ事さ。君を兄さんから解き放つ為にね。
　君には兄さんの横など似合わない、君の翼はそんなに小さくはないんだ。
　そして君は俺の横こそが一番輝けるんだから。エルダ、僕と結婚してくれ！　」
　
　
　その言葉を聞いた時、私はあの頃のシロンが戻って来たんだと思った。
　
　
「はい、シロン。おかえりなさい」


　私がそう言うとシロンは私を抱きしめ、「ただいま」と言った。
　
　
「ダメだダメだダメだダメだ！　そんな事、私は認めないぞ！　」


　ヘルム王子が騒ぎ出す。
　
　
「婚約破棄を破棄する、これならエルダは私のものだ！　」


「何を言っているんだ、もう婚約破棄は決まった事だろ？　
　ここにいる全員が見ていたし、オヤジも見ていたんだぞ？　」
　
　
　ドロス王子が呆れながら言い、周りも冷たい目線をヘルム王子に向けた。
　
　
「糞糞糞！　ならこの女との婚約も破棄だ、破棄！　お前のような女はいらん！　」


　思い通りにならない現状にヘルム王子が宣言するが
　
　
「嫌ですわ」


　リーゼが拒否した。
　
　
「な、なんだと！　貴様、私が破棄と言ったら破棄なのだ！　」


「いいえ、お互いが納得しなければ破棄にはなりませんのよ？　
　私がこの地位を簡単に明け渡すとでも思ったのですか？　
　これからたっぷりと吸い取ってあげますわ、ヘルム王子。ふふふ」
　
　
　リーゼは妖艶に笑った。