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しおりを挟む「あんまり期待せんほうがいいかもな」
俺は今更ながら三田村の言葉を思い出していた。
確かに俺は期待し過ぎていたのだろう。
今までがあまりにも自分の思い通りに進んで来てしまって、
それが当然だと、当たり前だと思い込んで……
映像部の評価が俺の評価だと勘違いしてしまっていた。
俺なんて所詮はただの素人なのに、何を調子に乗っていたんだろうか?
もっとやらないといけない事があるはずだ。
だからまずは小暮と話してみる事から始めた。
「あのさ小暮、脚本は読んでくれたんだよな? 感想を聞かせてくれないか?
どんな事でもいいんだ、何処が面白かったとかさ」
そうして小暮の話を聞いて俺は理解した。
小暮が話の内容を理解できていない事に、
自分が何を演じているのかがまったく理解出来ていないのだ。
きっと話の流れだけで何となく演じているのだ。
その感覚が優れているのでそれなりには見えるが、
相手が千里だとそれがバレてしまって、浮いているように見える。
情報量の違い、濃度の違い、差があればある程それは明確に出る。
だからまずは小暮には理解してもらわないいけないのだ。
自分が演じている者の本質というものを、そこをクリアして貰わないと
ここから先には進めないのだ。
時間はかかるが、これが一番の近道なのだから仕方がない。
俺は小暮に付きっきりで教えた。
理解してもらえるまでに結局、丸二日かかった。
*****
「やれば出来るんじゃない! 」
そうしてようやく千里からのOKも出て撮影が再開した。
「なんか大変やったみたいやな、変な奴を紹介してもうたな。すまんかった」
三田村がわざわざ撮影現場まで来て謝って来た。
「いいよ、もうそれは解決したから。それに無理を言ったのは俺の方だし、
やってもらう事に決めたのも俺なんだからそんなに謝らないでくれよ」
わざわざ差し入れまで持って来てくれた三田村に、恐縮してしまう。
あの謎の情報力を得るには、きっとこういう所が大事なんだろうなと思う。
なんだか三田村の情報力の一端を見れた気がして関心してしまい、
隣の芝は青く見えるではないが、自分には出来ない事が出来る三田村は
凄い奴だと思ってしまったのだ。
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