36 / 50
36
しおりを挟むはっきり言って今回の私は大分、偉かったと思っている。
あのポンコツ小暮をぶん殴らなかったのだから、
あの渡辺千里も随分と優しくなったものだ。
本当ならあんなのはさっさとボコボコにしてポイしてしまえば
いいだけの簡単な話だったのに……
鈴の為にわざわざ待ってあげる事にしたのだ。
どんだけポンコツなんだよと思いながらも、
そのおかげか、栄ちゃんに私の素晴らしさに気づかせたのには
一ミリぐらいの価値があったのかもしれない。
でも丸二日はさすがにやり過ぎだとは思っているが、
まあちゃんと結果が出たのだから、やっぱり栄ちゃんには才能が
あるって事なんだと思う。
「やれば出来るんじゃない! 」
と私からも栄ちゃんに称賛を送っておいた。
*****
結果から言えば、栄ちゃんはこちら側の人間という事になるのだろう。
私にとってこれは喜ぶべき事なんだと思う、思いたい、
だって、栄ちゃんが望んていた事なのだから、それが叶ったのなら
私は喜ぶべきなのに、どうしてだろう、その事実がすごく苦しかった。
今回、千里には私の為にいろいろと我慢してもらったけど、
少し期待していてた面もあったのだ、暴れてくれないかなって。
でも実際はちゃんと我慢してくれたので揉め事に成らずに済んだ。
それはそれでよかったし、
意外と義理堅い奴なんだと新しい一面を見せてもらったが、
「鈴にしてみればあっち側の方がいいとは思うよ、
その方がいいパートナーとしてやって行ける訳だしね。
挫折した分、こっちの事にも理解があるなんて最高じゃない?
私達にとって最高の環境を与えてくれるはずよ。
でも、こっち側に来てしまったら、そんな事はありえないから、
お互いが妥協できなくなってしまって何処までも平行線。
確かに高め合う事は出来るかもしれないけど、きっとそこまでで終わってしまう
のよね。 言ってみれば、夫婦になるかセフレになるかみたいな感じよ」
撮影が始まる前に虹子にそんな話を聞かされた私としては、
滅茶苦茶な内容なのに、馬鹿みたいな話なのに
やけに現実味があって、苦々しい。
私にとって虹子は栄ちゃん以上の存在なのかもしれないと
意識してしまった事は虹子には一生言うつもりはない。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
6
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる