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2章 学園編
4話「家族」
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ニアと別れ、家に帰ると母さんはキッチンにいて、カルマ兄さんも父さんとテーブルに向かい合わせになるように腰掛けていた。
だがクライス兄さんの姿は見えなかった。
「クライス兄さんは?」
「クライスならさっきまた卒業生同士でご飯食べに行くって。」
俺の問いに答えてくれたのは母さんだった。
「そうなんだ。騎士の話はどうなったのかな?」
「あぁ、それなら合格した!って喜んで帰ってきたさ。まさか我が家から騎士が出るとはねぇ‥。」
それについて、テーブルで紅茶をシミジミと飲む父さんも会話の中に入る。
「そうだなぁ。将来は俺の仕事を‥。とも考えていたが‥、お前達兄弟は商人には勿体無い。本当に素晴らしい才能に恵まれたもんだ。寂しくもあるが、俺は子供達にレールを敷くような事はしはない。 アル、カルマ。お前達も思うままの人生を生きろ。俺達はお前ら兄弟が立派に育つのを全力でサポートするからな。」
父さんは自分の息子が新しい第一歩を踏み出したことに、とても喜ばしい事であり、ちょっぴり寂しくもありで目を潤ませながら笑った。
いつか俺もこの家を出る日が来た時。
クライス兄さんの様に「立派に育ったな。行ってこい」と言われるよう胸を張って旅立てるだろうか?
唯、漠然と旅に出たいと思っていたけど、今の父さんの姿を見て、俺の旅立ちたいという気持ちは新しく生まれ変わった。
神様がいるかなんて分からないが俺は本当に感謝している。
これ程までに暖かい家庭をくれたこと。
世の中それが出来ていて当たり前だが、希に恵まれない奴だっている。
それが前世の俺だった。
だから親とはいえ、前世の記憶があるばかりに素直になれず、変に勘ぐり捻くれた態度を取って見たりしたこともあった。
6歳の事だ。
「俺のことはほっといてくれ!」
1人で生きることなど当然できもしない
のに口だけ大きかった俺は雨の中外へと飛び出した。
飛び出した理由は単純。
兄2人への嫉妬だ。
兄2人は幼少時から才能を既に開花させていて、俺はその才能に勝手に嫉妬し、そして恐怖し、どうせ無理と決めつけやりもせず、自分に自信を無くしてしまっていたのだ。
そして‥。
ーこの世界でも俺は捨てられるー。
そんなレッテルが頭に浮かび、離れなかった。
だから寂しさを感じる前に自分から家から出たんだ。
だけど、この世界の父さんと母さんは必死で俺の事を探し見つけてくれた。
そして涙ながらに優しく包んでくれたんだ。
「大丈夫、俺達はお前を見捨てたりなんかしないよ。お前はお前なんだから。
お前は‥俺達の子供なんだから!俺達はお前を‥心から愛しているんだよ。さぁ、‥帰ろう。」
あの差し伸べてくれた手はとても大きくて、暖かかった。
その暖かさは俺の冷たく冷えた心をも溶かしてくれた事は一生忘れない。それに帰れば俺を探し、泥だらけになった兄2人の姿もだ。
それがきっかけで家族との会話も増え、俺も少しだが店を手伝ったりもする様になった。
だけど人間の本質が簡単に変わる訳もなく、相変わらず興味を引くというものが見つからず今までに至ってしまったのだが、入学試験で自分の新たな可能性を見つけた。
今はまだ卵だけど、この世界にきて、俺は徐々に変わり初めているのかもしれない。
だから今は、出来る範囲の「家族孝行をしたい。」って心から思うんだ。
「ねぇ、明日クライス兄さんの騎士になったお祝いをしようよ。」
〇〇〇〇
翌朝。
クライス兄さんは俺らより先に出て、俺とカルマ兄さんもその数分後に家をでた。
道中。
「昨日の初日はどうだったよ?皆んなとは仲良くやれそうなのか?」
「 うん。まぁ大丈夫‥かな。」
少し苦笑い気味に答える俺をカルマ兄さんは見透かす様にジッと見ると、フイッと前に向き直し歩を進めだす。
「ふーん。なら、‥いいけどよ。天才は妬まれ易いから失言には気をつけろよ。」
お見通しですか。
俺は頬を掻き情けない表情を浮かべた。
「じゃぁ、俺は教室に行く。お前も授業頑張れよ。」
カルマ兄さんはそう言って拳を此方に向けると、俺もその拳に拳を合わせた。
「了解。」
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だがクライス兄さんの姿は見えなかった。
「クライス兄さんは?」
「クライスならさっきまた卒業生同士でご飯食べに行くって。」
俺の問いに答えてくれたのは母さんだった。
「そうなんだ。騎士の話はどうなったのかな?」
「あぁ、それなら合格した!って喜んで帰ってきたさ。まさか我が家から騎士が出るとはねぇ‥。」
それについて、テーブルで紅茶をシミジミと飲む父さんも会話の中に入る。
「そうだなぁ。将来は俺の仕事を‥。とも考えていたが‥、お前達兄弟は商人には勿体無い。本当に素晴らしい才能に恵まれたもんだ。寂しくもあるが、俺は子供達にレールを敷くような事はしはない。 アル、カルマ。お前達も思うままの人生を生きろ。俺達はお前ら兄弟が立派に育つのを全力でサポートするからな。」
父さんは自分の息子が新しい第一歩を踏み出したことに、とても喜ばしい事であり、ちょっぴり寂しくもありで目を潤ませながら笑った。
いつか俺もこの家を出る日が来た時。
クライス兄さんの様に「立派に育ったな。行ってこい」と言われるよう胸を張って旅立てるだろうか?
唯、漠然と旅に出たいと思っていたけど、今の父さんの姿を見て、俺の旅立ちたいという気持ちは新しく生まれ変わった。
神様がいるかなんて分からないが俺は本当に感謝している。
これ程までに暖かい家庭をくれたこと。
世の中それが出来ていて当たり前だが、希に恵まれない奴だっている。
それが前世の俺だった。
だから親とはいえ、前世の記憶があるばかりに素直になれず、変に勘ぐり捻くれた態度を取って見たりしたこともあった。
6歳の事だ。
「俺のことはほっといてくれ!」
1人で生きることなど当然できもしない
のに口だけ大きかった俺は雨の中外へと飛び出した。
飛び出した理由は単純。
兄2人への嫉妬だ。
兄2人は幼少時から才能を既に開花させていて、俺はその才能に勝手に嫉妬し、そして恐怖し、どうせ無理と決めつけやりもせず、自分に自信を無くしてしまっていたのだ。
そして‥。
ーこの世界でも俺は捨てられるー。
そんなレッテルが頭に浮かび、離れなかった。
だから寂しさを感じる前に自分から家から出たんだ。
だけど、この世界の父さんと母さんは必死で俺の事を探し見つけてくれた。
そして涙ながらに優しく包んでくれたんだ。
「大丈夫、俺達はお前を見捨てたりなんかしないよ。お前はお前なんだから。
お前は‥俺達の子供なんだから!俺達はお前を‥心から愛しているんだよ。さぁ、‥帰ろう。」
あの差し伸べてくれた手はとても大きくて、暖かかった。
その暖かさは俺の冷たく冷えた心をも溶かしてくれた事は一生忘れない。それに帰れば俺を探し、泥だらけになった兄2人の姿もだ。
それがきっかけで家族との会話も増え、俺も少しだが店を手伝ったりもする様になった。
だけど人間の本質が簡単に変わる訳もなく、相変わらず興味を引くというものが見つからず今までに至ってしまったのだが、入学試験で自分の新たな可能性を見つけた。
今はまだ卵だけど、この世界にきて、俺は徐々に変わり初めているのかもしれない。
だから今は、出来る範囲の「家族孝行をしたい。」って心から思うんだ。
「ねぇ、明日クライス兄さんの騎士になったお祝いをしようよ。」
〇〇〇〇
翌朝。
クライス兄さんは俺らより先に出て、俺とカルマ兄さんもその数分後に家をでた。
道中。
「昨日の初日はどうだったよ?皆んなとは仲良くやれそうなのか?」
「 うん。まぁ大丈夫‥かな。」
少し苦笑い気味に答える俺をカルマ兄さんは見透かす様にジッと見ると、フイッと前に向き直し歩を進めだす。
「ふーん。なら、‥いいけどよ。天才は妬まれ易いから失言には気をつけろよ。」
お見通しですか。
俺は頬を掻き情けない表情を浮かべた。
「じゃぁ、俺は教室に行く。お前も授業頑張れよ。」
カルマ兄さんはそう言って拳を此方に向けると、俺もその拳に拳を合わせた。
「了解。」
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◇
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