異世界騒動記。「さて、一丁やる気だしますかね‥。」

桂木 鏡夜

文字の大きさ
15 / 15
三章

一話「初の魔法に触れてみる。」

しおりを挟む
翌朝。

 鳥のさえずりの声で俺は上体を起こす。

 目を手で擦り、真横で寝ているルナを再確認する。

「‥やっぱり夢じゃないんだな。」

 俺はそのまま立ち上がり、昨日の夜にルナが用意してくれた民族衣装に着替える。

 なんだかコスプレしている感があって恥ずかしい気持ちもあるが嫌いではない。

 一度外に出て見ようとテントから出ると、まだ日は登り始めで、まだ薄暗かった。

 さて、どうしたものか。

 薄暗い空を見上げ腕組みをしてみる。

 魔力を手に入れたといっても実感が湧かない。それにこの魔法の儀式はクリエイティとか何たらという名前だった様な?

 クリエイティといえばクリエイティブ的な物か?

 英語で確か想像形成的な言葉だったかな?

 これを考えると、要するに魔力で自在に物を作り出せるといった感じなのだろうか?

「よし。一丁試して見ますか。」

 両手を前に掲げて適当な物を頭に浮かべる。

「我念じる。異世界で作られし自転車よ我の前にいでよ!!!」

シーン‥。

 何も起きない。

 いやできる訳ないよね?普通。

 起きたのは自分の恥ずかしさが生まれただけだよ?

「なぁー!なんも出ねぇじゃんかよ!本当に魔力なんてもんが身体に宿ってんのか?そもそも魔力なんてもんがあってたまるかぁ!」

 騒ぎ立てていると、一人の老婆が歩み寄ってきた。

 服装からしてこの民族の一族だろう。

「これはこれは。救世主様ではないですか。こんな早朝にいかがなされましたか?」

「いや、‥ちょっとね。ってか今の見てた?」

「は?今のとは?」

 よし!恥ずかしい所は見られてない!

 俺は拳を握り締めると「我念じる。異世界で作られし自転車よ、我の前にいでよ!!!の事ですかい?」「見てんじゃねぇかよ!!」

 思わず思いっきりツッコミを入れる俺を見て老婆はシワクチャの顔を更にシワクチャにして「クケケケケケケケ!」と甲高い声で笑いだした。

 いや、笑い方が超絶怖えーんですけど。

「クケケケ、クケケケケケケケ」

「おいおい。そんなん面白かったのかよ?」

「クケケケケケケケ。キャーハッハッハッハ!!!」

 いや、ちょっとマジで引くほどヤバイんですけど。

 ツボに入ったのか?

「キャーハッハッハッハ!!!!!!」

 更に笑いだす老婆はフラフラと歩み寄ってくる。

 笑いながら歩みよる老婆の姿はまさに魔女?いや、モノノ怪だ。

 そして俺の間近くまで接近すると老婆は急に俺の腕にしがみ付いた。

 その力は物凄くて俺の恐怖を更に掻き立てた。

「な!?ば、ばあさん!!はな「‥」

 離せといいかけた所で老婆が俺に何か言ってきた。聞き取りづらかったのでもう一度言うように伝えると、肩をヒクつかせながら老婆はこう言った。

「クケケ‥笑い‥死ぬ。」

〇〇〇〇

 暫くして老婆の笑いは収まり、本題に入った。

 老婆は何でもこの民族の中では最高齢で、魔法の知識を一番良く知っている人物だそうだ。

 俺はここぞとばかりに老婆に質問しまくった。

 試しに【火球弾ファイヤーボール】という火の玉を間近で見せてもらい、本当に魔法があるのか?の確認をさせてもらった。

 本当に手から火の玉が出た瞬間はビビったが、ここ最近の驚きでそこまで驚きはしなかった。

「よし。魔法があるのはよく分かった。で、それは俺にも使えるのか?」

 俺のその質問に老婆は不思議そうな顔をする。

「おや?救世主様は魔法をお知りにならないんですかい?」

その質問にどう返そうか少し悩んだが直ぐに答えをだした。

「あ、あぁ。少しの前の記憶が無くて、気付いたら森にいたんだ。」

 月並みだけど、変に警戒されるよりよっぽどマシだ。こことは違う世界から来ましたなんて信じて貰えそうもないしな。

「そうですかい。ならしかたありませんな。いいですか?魔法の取得方法は‥。」

 老婆が言うにはこうだ。

取得方法は大きく分けて二つある。

 先日やったような魔法陣の上に乗り精神世界で儀式を行う場合と、現実世界である条件を満たす事とある。

 これをクリアしなければ魔法は使えないそうで、上位の魔法ともなればそれ相応のリスクも伴ってくるのだそうだ。

 魔力があるから使えます。って感じではない訳か。

「ふむ。じゃぁ婆さん。俺に何かの魔法を教えてくれよ。俺も魔法を使ってみたいんだ。」

「それは構いませんが、救世主様はもう既に魔法をお持ちではないですかの?」

 その発言に俺は首をかしげる。

「お気づきになって居られませんでしたか?なら試しにこの小石を何の形でもいいので変形させるイメージを作って見て下され」

 そういって老婆は俺に拳に収まる程の小石を手渡した。

「変形させるイメージでいいのか?」

「はい。小石に意識を集中させて下され。」

 内心、何がしたいんだ?とも思ったが、言われるがままに試してみた。

 すると、小石が光輝き変形しだした。

 そして出来た形は想像していた通り、石でできた星型手裏剣だった。


 「おぉ。生きている間に伝説の魔法を拝めるとはワシャ幸せ者じゃ。」

「できた。‥すげぇーよコレ!けど、俺のイメージでは刃先が尖ってたんだが丸いのは何故だ?」

「それは恐らく救世主様のイメージ不足なのかもしれませんな。昔、大ジジ様から聞いた事がある。想像形成クリエイティの魔法はイメージを深く深く練らねば形成の時のブレが生じると。」

 確かにそこまで深くは考えなかったな。

 これは思ったより難しいのかもしれん。

「ってより、さっきは何も起きなかったのに何で今はできたんだ?」

想像形成クリエイティの魔法は物質を変形させる事はできるが生み出す事はできません。なので質量を増やす事もできません。」

「そういうことね。」

 俺は納得という風に手の平に拳を置いた。

「婆さん、ありがとう!!」

 お礼を告げると老婆はニッコリと笑顔を返し「かまいませんよ。」と言った。

ふと気づくと日が差し始めて辺りはすっかり朝焼けで明るくなっていた。

「ほほ、もうこんな時間かい。救世主様、今日はこのくらいにして姫様の元にお戻りになられては如何ですかな?ババはいつでも居ますゆえ、その時に魔法は教えれます。姫様が起きて救世主様が居らねば心配なさいますでしょう。」

「うーん。そうだな。じゃぁ一旦テントに戻るよ。時間が空いたらまた婆さん所に尋ねていいかい?」

「いいですとも。ですが、今日は忙しくなります。」

「え?何か用事があるのかい?」

「用事と言うよりも村の守り人が皆、カリュの騒動で死んでしまいましたのでな。これからどう対処するかと一族会議が行われますのじゃ。」

 確かに。守り人が居なくなれば一族を守る者が居なくなったという事。

 ルナから聞けば、結界はまだ貼られているみたいだけど、警戒を怠る訳には行かないのだろう。

  ってよりもその会議、俺も出るのかな?

 まぁ考えても仕方ない。一旦テントに戻ろう。

「じゃぁ婆さん。俺テントに戻るよ。」

 婆さんに手を振ると、そのまま俺はテントに戻った。


しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

転生者は冒険者となって教会と国に復讐する!

克全
ファンタジー
東洋医学従事者でアマチュア作家でもあった男が異世界に転生した。リアムと名付けられた赤子は、生まれて直ぐに極貧の両親に捨てられてしまう。捨てられたのはメタトロン教の孤児院だったが、この世界の教会孤児院は神官達が劣情のはけ口にしていた。神官達に襲われるのを嫌ったリアムは、3歳にして孤児院を脱走して大魔境に逃げ込んだ。前世の知識と創造力を駆使したリアムは、スライムを従魔とした。スライムを知識と創造力、魔力を総動員して最強魔獣に育てたリアムは、前世での唯一の後悔、子供を作ろうと10歳にして魔境を出て冒険者ギルドを訪ねた。 アルファポリスオンリー

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!

武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。 しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。 『ハズレスキルだ!』 同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。 そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

処理中です...