神様に嫌われた神官でしたが、高位神に愛されました

土広真丘

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第8章

19.最高神のペットでした

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(活用できるものは何でもしなくてはね)

 内心でペロリと舌を出しながら続ける。

「フレイムが見ていてくれたから、万一上手くできなくても大丈夫だと思って、のびのびと練習できたのよ」

 笑顔のまま、訓練、練習という言葉を重ねて強調する。
 ――神域をぶち壊して暴れたなどとなれば、このトライコーンがどのような処罰を受けるか分かったものではない。現在は聖威師たちが帰天している慶事中ということで、恩赦が出される傾向が強いが、絶対ではない。

(フレイムは精霊や霊獣に優しいから、それほど厳しい罰は与えないにしても……演習でしたという体にできれば一番よね。もちろん事情を聞いてみて、三角獣側に非が無ければ、の話だけれど)

 もし意図的な奇襲であったならば、きちんと処分しなければならない。だが、完全に我に返ったらしいトライコーンは、忙しなく視線を動かして周囲を窺っている。耳を絞り、尻尾を下げてフレイムや神々を見ている様子から、敵意や悪意はなかったように感じた。

『そりゃ良かった。とはいえ、訓練にしちゃちょっとばかり派手だったな。俺もビックリだ。これをちょうど良い修練材料でしたで手打ちにできるかどうかは、まだ分からねえぜ』

 以心伝心でアマーリエの意図を読んだのだろう。苦笑いしたフレイムが、一転して温度を消した目で三角獣を見遣った。

『お前は地神様に飼われてる霊獣だろ。何故こんな真似をした。。自分が何をしたか覚えているか?』
『い、いいえ……』

 弱々しい返答と共に、トライコーンが長い首を横に振る。ラモスとディモス同様、話せるタイプの霊獣らしい。だがそれよりアマーリエの頭を占めていたのは、台詞の冒頭部分だった。

(地神様の霊獣なの!?)

 それは下手に攻勢に出なくて良かったかもしれない。正当防衛であっても、最高神の飼い獣を独断で処せば不要な騒動の元となりかねない。
 先日天馬が暴走した際は、激昂したラミルファが斬首を命じかけたが、あの時の彼は真の神格を出して邪禍神となっており、天馬の飼い主である原風神と対等な立場だった。しかし、アマーリエたちは明確に地神より格下だ。

『お前は俺の神域の門をぶっちぎって押し入り、神殿を壁ごと吹っ飛ばして中にいるコイツらに襲いかかろうとしたんだ。コイツらは聖威師で、こっちのユフィーは俺の愛し子だ』

 フレイムは現在も、神域の門を解放している。アマーリエの元には、引き継ぎや確認などで頻繁に他の聖威師が出入りするからだ。いちいち入域の許可を出すのは面倒だと言って、夜以外は入口を開けていたため、トライコーンの侵入を許してしまった。

 端的な説明を聞いた霊獣は愕然と目を剥き、ブルブルと体を震わせ始めた。三本の角が動きに合わせて小刻みに揺れている。

『そ、そんな……誠に申し訳ございません。この数瞬の記憶がなく……取り返しの付かないことをしてしまいました』
『取り返しはまだ付くだろ。お前はユフィーが鎮めてくれて、死傷者も出なかったんだからな。後は俺が、神域を壊されたことを何とも思わないで、あー良い訓練だったぜって笑っときゃ良い話なんだぜ』

 肩を竦めるフレイムに、アマーリエは両手を合わせて頼んだ。

「許してあげて……とはまだ言わないわ。何がどうなって起こったことなのか、全容も分かっていないのだから。けれどお願い、このまま話を聞いてあげて。この子はとても怯えているし、事情があったのかもしれないわ」
『ああ、聞いてやるさ。ってなわけだ、話してみろ。記憶がないそうだが、どこまでなら覚えてる? 正確でなくても良い、分かる範囲で良いから話してみな』

 神威で過去視をすれば、瞬殺で全てが分かる。にも関わらず、あえて問い質すのは意味がある。自発的に説明を行い、全容の解明に協力した事実があれば、仮にトライコーンに何らかの落ち度があったとしても、酌量が容易になるからだ。フレイムはギリギリまで、この霊獣を救う道を閉ざさないようにしている。

『お答えいたします。私は地神様の飼い獣です。普段は放し飼いにされており、天界にある森林に住んでおります。神々の神苑に近い場所を寝ぐらにし、同じ三角獣や他の霊獣と共に暮らしておりました』

 住んでいた所は、あの天馬が暴走した際に走り込んだ森の一角だという。神罰牢に通じる穴がある場所さえ避けていれば、霊獣にとっては非常に過ごしやすい場所なのだそうだ。

『しかし先ほど、寝ぐらに複数の精霊が押しかけ、霊威を使いながら数名がかりで抑えられ、角を切られそうになりました。必死に抵抗したところで記憶が途切れています』
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