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第1章
5.神の愛し子
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ミリエーナがうるさそうに振り返った。
「そうよ、まさか知らなかったの? ……ああそうか、あんたは属国にいた頃からなーんにも情報収集をしてなかったものね。この方は神の寵を受けた選ばれしお方なのよ!」
この世界では稀に、神の寵愛と加護を受ける者が生まれる。その者たちは『聖威師』と称され、彼らが用いる力は『聖威』と呼ばれている。聖威師は寵のみならず神格をも授かり、自身も神の列に連なることを許される。地上で人として生きている間は神格を己の内に押し秘めておき、逝去時にそれを解放し、神となって天に昇るのだ。
霊威師から見てさえ雲上の彼方にある存在が目の前にいる。呆然としていると、ミリエーナが呆れたように嘆息した。
「アマーリエは本当にどんくさいわね。佳良様の衣をよく見てみなさいよ……もしかして上衣をお召しだから気付かなかったの? あのね、佳良様の神官衣には羽根の刺繍がされてるの。普通の神官衣は無地だけど、聖威師は加護を受ける神にちなんだ模様を入れることができるでしょ」
「羽根……では鳥に関係する神の加護を受けられているの?」
「鷹の神らしいわ」
(鷹の神――地神に属する高位神だわ)
地水火風の四大高位神は、数多の神々の頂点に立つ最高神だ。さらに上に至高の神々がいるが、彼らは別枠で考えられている。そして特殊な例外を除けば、全ての神々は四大高位神のいずれかに属する。中には地水火風とは関連のない、あるいは分類できないものを司っている神もいるが、その場合は四神全柱に均等に所属している。
(あと、鳥は空を飛ぶから風神にも属していたはず)
考えている内に、ミリエーナを始めとする神官たちは拝み倒さんばかりに佳良にしがみつく。
「鷹神様に私を使いにして下さるよう頼んで下さいませ!」
「鷹の神は勇猛で正義感に溢れ、四大高位神からの覚えもめでたい由緒正しい神ですもの。お仕えできることは栄誉ですわ!」
「いっそ佳良様が昇天なされた暁に私を神使にして下さいませんか!?」
(す、すごい熱気だわっ……!)
必死の形相で佳良に詰め寄る神官たちの間をすり抜け、アマーリエは部屋の外に逃れた。冷たい空気を吸い込んで一息つく。
(あんな所にいたら窒息死してしまうわよ)
そして佳良の気に意識を集中し、霊威を用いて念話を放つ。お世辞にも強い力を持つとは言えないアマーリエでも、基本的な能力くらいは使える。
《佳良様、上の者を呼んで来ます。少々ご辛抱下さい》
《そうですか。頼みましたよ》
佳良の良く通る声が脳裏に響いた。全く動揺を感じさせない応えだ。
(落ち着いていらっしゃるわね。もう慣れているのかも)
踵を返し、足早に廊下を歩いていると、横でキュイッと声が上がった。何だろうと顔を向けると、佳良の肩に留まっていた桃色の小鳥がパタパタと羽ばたいている。
「あら、あなた付いて来ちゃったの?」
「ピィ!」
「びっくりしたでしょう。最近の神官府は連日こんな感じらしいわよ。私が来たのは数日前だけれど」
「キュィキュィ~」
「そもそも、神々の神託が始まりだったのよ――神使を直接選ぶという託宣がね」
溜め息を吐きながら、アマーリエは事の発端である神々からのお告げに思いを馳せた。
「そうよ、まさか知らなかったの? ……ああそうか、あんたは属国にいた頃からなーんにも情報収集をしてなかったものね。この方は神の寵を受けた選ばれしお方なのよ!」
この世界では稀に、神の寵愛と加護を受ける者が生まれる。その者たちは『聖威師』と称され、彼らが用いる力は『聖威』と呼ばれている。聖威師は寵のみならず神格をも授かり、自身も神の列に連なることを許される。地上で人として生きている間は神格を己の内に押し秘めておき、逝去時にそれを解放し、神となって天に昇るのだ。
霊威師から見てさえ雲上の彼方にある存在が目の前にいる。呆然としていると、ミリエーナが呆れたように嘆息した。
「アマーリエは本当にどんくさいわね。佳良様の衣をよく見てみなさいよ……もしかして上衣をお召しだから気付かなかったの? あのね、佳良様の神官衣には羽根の刺繍がされてるの。普通の神官衣は無地だけど、聖威師は加護を受ける神にちなんだ模様を入れることができるでしょ」
「羽根……では鳥に関係する神の加護を受けられているの?」
「鷹の神らしいわ」
(鷹の神――地神に属する高位神だわ)
地水火風の四大高位神は、数多の神々の頂点に立つ最高神だ。さらに上に至高の神々がいるが、彼らは別枠で考えられている。そして特殊な例外を除けば、全ての神々は四大高位神のいずれかに属する。中には地水火風とは関連のない、あるいは分類できないものを司っている神もいるが、その場合は四神全柱に均等に所属している。
(あと、鳥は空を飛ぶから風神にも属していたはず)
考えている内に、ミリエーナを始めとする神官たちは拝み倒さんばかりに佳良にしがみつく。
「鷹神様に私を使いにして下さるよう頼んで下さいませ!」
「鷹の神は勇猛で正義感に溢れ、四大高位神からの覚えもめでたい由緒正しい神ですもの。お仕えできることは栄誉ですわ!」
「いっそ佳良様が昇天なされた暁に私を神使にして下さいませんか!?」
(す、すごい熱気だわっ……!)
必死の形相で佳良に詰め寄る神官たちの間をすり抜け、アマーリエは部屋の外に逃れた。冷たい空気を吸い込んで一息つく。
(あんな所にいたら窒息死してしまうわよ)
そして佳良の気に意識を集中し、霊威を用いて念話を放つ。お世辞にも強い力を持つとは言えないアマーリエでも、基本的な能力くらいは使える。
《佳良様、上の者を呼んで来ます。少々ご辛抱下さい》
《そうですか。頼みましたよ》
佳良の良く通る声が脳裏に響いた。全く動揺を感じさせない応えだ。
(落ち着いていらっしゃるわね。もう慣れているのかも)
踵を返し、足早に廊下を歩いていると、横でキュイッと声が上がった。何だろうと顔を向けると、佳良の肩に留まっていた桃色の小鳥がパタパタと羽ばたいている。
「あら、あなた付いて来ちゃったの?」
「ピィ!」
「びっくりしたでしょう。最近の神官府は連日こんな感じらしいわよ。私が来たのは数日前だけれど」
「キュィキュィ~」
「そもそも、神々の神託が始まりだったのよ――神使を直接選ぶという託宣がね」
溜め息を吐きながら、アマーリエは事の発端である神々からのお告げに思いを馳せた。
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