49 / 602
第1章
49.邪神の事情②
しおりを挟む
『初めは僕も納得していた。霊威が弱ければ無能扱いされてもおかしくはない。だが……段々と違和感を感じ始めた。確かにこの世界は霊威至上主義だが、神が全面的に認める気を持つ者に対して、さすがに侮蔑が過ぎるのではないかと』
悪神にすらはっきりと言われ、ダライとネイーシャは今にも倒れそうになっている。フレイムがそら見たことかと言わんばかりにふんと鼻を鳴らした。
『それに、神使選定では被選定者の精神や人格も考慮されるから、気が美しいというのは大きな加点要素になる。なのに姉は、お前など神使に選ばれるはずがないと何度も言われていた。判を押したように霊威が弱いと繰り返されているばかりで、気が綺麗だという話題は欠片も出ない。おかしいと思ったよ』
聖威師たちの目が険しい。フルードが普段と打って変わって冷ややかな目で、ダライたちを睨んでいる。
『どういうことだろうと、色々な可能性を考えた。そして、その中の一つとしてある推測を出した。もしかしたら、今後複数の神に目通りさせて気の清濁を問うてみよという僕の神託が、実行されていないのではないかと』
……実際はそれ以前の問題で、神託そのものが届いていなかったわけだが。
黙って聞いていたフレイムが言った。
「つまり……アマーリエを他の神に会わせて気がどう見えるかを確認してないから、その美しさに気付いてないんじゃないかってことか?」
『ああ。もしそうなら、僕の基準が他の神と違っていることも分からないから、僕たちが悪神だとは気付いていないだろう。……といっても、この推測は数ある可能性の一つに過ぎない。もう少し調べてみようかと思った』
「何でわざわざ調べるんだよ。神威で過去を視れば一発じゃねえか」
ラミルファはフレイムのように神格を抑制しているわけではない。色々と憶測を巡らせずとも、過去視をしてしまえば何がどうなって今の状況になったのか分かるはずだ。だが、返事は否だった。
『天界も今はピリピリしている。神々とて良い神使を確保したいからね。神同士は結束が強いから、大きな問題までは起きていないが……ちょっとした小競り合いは発生し始めている。それもあり、天界では神威の使用をなるべく控えるようにという通達が最高神から出た。君が地上に降りた後のことだ』
そして、ラミルファが本格的にサード家の面々に疑問を持つようになったのも、通達が出た後だったのだという。
「は? マジか……。神使選定の開催は失敗だったんじゃねえか。神使の割り当てで色んな神がぎゃあぎゃあ言うから、最高神たちがイラッとして、じゃあ自分たちで決めろって言い出したのが最初だったよな」
フレイムが天を仰いで言い、それを聞いたアマーリエも遠い目になった。どうやら、神々の世界も色々とあるようだ。
『まだ初回だ。今後改善していく余地はある。……まあそういうわけで、余計な神威は使わない方がいいと思ったのだよ。だから過去視はせず、レフィーとその周辺を遠視するだけに留めていた。それに、せっかく見付けた愛し子を早く手に入れたいという思いもあった。だから機を見てレフィーに接触し、仮誓約を結んだ。姿は見せず声だけを下ろして』
ミリエーナがラミルファの容姿を伝え聞いており、かつ悪神ではないかということに思い至っていることを想定し、姿を見せなかったのだろう。無用な心配だった訳だが。
『結果は上々だったよ。我が愛し子は何の疑いもなくコロリとこの手に転がり込んで来てくれた。これで聖威師も手が出せない』
悪神にすらはっきりと言われ、ダライとネイーシャは今にも倒れそうになっている。フレイムがそら見たことかと言わんばかりにふんと鼻を鳴らした。
『それに、神使選定では被選定者の精神や人格も考慮されるから、気が美しいというのは大きな加点要素になる。なのに姉は、お前など神使に選ばれるはずがないと何度も言われていた。判を押したように霊威が弱いと繰り返されているばかりで、気が綺麗だという話題は欠片も出ない。おかしいと思ったよ』
聖威師たちの目が険しい。フルードが普段と打って変わって冷ややかな目で、ダライたちを睨んでいる。
『どういうことだろうと、色々な可能性を考えた。そして、その中の一つとしてある推測を出した。もしかしたら、今後複数の神に目通りさせて気の清濁を問うてみよという僕の神託が、実行されていないのではないかと』
……実際はそれ以前の問題で、神託そのものが届いていなかったわけだが。
黙って聞いていたフレイムが言った。
「つまり……アマーリエを他の神に会わせて気がどう見えるかを確認してないから、その美しさに気付いてないんじゃないかってことか?」
『ああ。もしそうなら、僕の基準が他の神と違っていることも分からないから、僕たちが悪神だとは気付いていないだろう。……といっても、この推測は数ある可能性の一つに過ぎない。もう少し調べてみようかと思った』
「何でわざわざ調べるんだよ。神威で過去を視れば一発じゃねえか」
ラミルファはフレイムのように神格を抑制しているわけではない。色々と憶測を巡らせずとも、過去視をしてしまえば何がどうなって今の状況になったのか分かるはずだ。だが、返事は否だった。
『天界も今はピリピリしている。神々とて良い神使を確保したいからね。神同士は結束が強いから、大きな問題までは起きていないが……ちょっとした小競り合いは発生し始めている。それもあり、天界では神威の使用をなるべく控えるようにという通達が最高神から出た。君が地上に降りた後のことだ』
そして、ラミルファが本格的にサード家の面々に疑問を持つようになったのも、通達が出た後だったのだという。
「は? マジか……。神使選定の開催は失敗だったんじゃねえか。神使の割り当てで色んな神がぎゃあぎゃあ言うから、最高神たちがイラッとして、じゃあ自分たちで決めろって言い出したのが最初だったよな」
フレイムが天を仰いで言い、それを聞いたアマーリエも遠い目になった。どうやら、神々の世界も色々とあるようだ。
『まだ初回だ。今後改善していく余地はある。……まあそういうわけで、余計な神威は使わない方がいいと思ったのだよ。だから過去視はせず、レフィーとその周辺を遠視するだけに留めていた。それに、せっかく見付けた愛し子を早く手に入れたいという思いもあった。だから機を見てレフィーに接触し、仮誓約を結んだ。姿は見せず声だけを下ろして』
ミリエーナがラミルファの容姿を伝え聞いており、かつ悪神ではないかということに思い至っていることを想定し、姿を見せなかったのだろう。無用な心配だった訳だが。
『結果は上々だったよ。我が愛し子は何の疑いもなくコロリとこの手に転がり込んで来てくれた。これで聖威師も手が出せない』
50
あなたにおすすめの小説
結婚十年目の夫から「結婚契約更新書」なるものが届いた。彼は「送り間違えた」というけれど、それはそれで問題なのでは?
ぽんた
恋愛
レミ・マカリスター侯爵夫人は、夫と政略結婚をして十周年。侯爵夫人として、義父母の介護や領地経営その他もろもろを完ぺきにこなしている。そんなある日、王都に住む夫から「結婚契約更新書」なるものが届いた。義弟を通じ、夫を追求するも夫は「送り間違えた。ほんとうは金を送れというメモを送りたかった」という。レミは、心から思った。「それはそれで問題なのでは?」、と。そして、彼女の夫にたいするざまぁがはじまる。
※ハッピーエンド確約。ざまぁあり。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。
幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。
灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。
曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。
婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。
前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。
君といるのは疲れると言われたので、婚約者を追いかけるのはやめてみました
水谷繭
恋愛
メイベル・ホワイトは目立たない平凡な少女で、美人な姉といつも比べられてきた。
求婚者の殺到する姉とは反対に、全く縁談のなかったメイベル。
そんなある日、ブラッドという美少年が婚約を持ちかけてくる。姉より自分を選んでくれたブラッドに感謝したメイベルは、彼のために何でもしようとひたすら努力する。
しかしそんな態度を重いと告げられ、君といると疲れると言われてしまう。
ショックを受けたメイベルは、ブラッドばかりの生活を改め、好きだった魔法に打ち込むために魔術院に入ることを決意するが……
◆なろうにも掲載しています
『外見しか見なかったあなたへ。私はもう、選ぶ側です』
鷹 綾
恋愛
「お前のようなガキは嫌いだ」
幼く見える容姿を理由に、婚約者ライオネルから一方的に婚約を破棄された
公爵令嬢シルフィーネ・エルフィンベルク。
その夜、嫉妬に狂った伯爵令嬢に突き落とされ、
彼女は一年もの間、意識不明の重体に陥る――。
目を覚ました彼女は、大人びた美貌を手に入れていた。
だが、中身は何ひとつ変わっていない。
にもかかわらず、
かつて彼女を「幼すぎる」と切り捨てた元婚約者は態度を一変させ、
「やり直したい」とすり寄ってくる。
「見かけが変わっても、中身は同じです。
それでもあなたは、私の外見しか見ていなかったのですね?」
静かにそう告げ、シルフィーネは過去を見限る。
やがて彼女に興味を示したのは、
隣国ノルディアの王太子エドワルド。
彼が見ていたのは、美貌ではなく――
対話し、考え、異論を述べる彼女の“在り方”だった。
これは、
外見で価値を決められた令嬢が、
「選ばれる人生」をやめ、
自分の意思で未来を選び直す物語。
静かなざまぁと、
対等な関係から始まる大人の恋。
そして――
自分の人生を、自分の言葉で生きるための物語。
---
最初からここに私の居場所はなかった
kana
恋愛
死なないために媚びても駄目だった。
死なないために努力しても認められなかった。
死なないためにどんなに辛くても笑顔でいても無駄だった。
死なないために何をされても怒らなかったのに⋯⋯
だったら⋯⋯もう誰にも媚びる必要も、気を使う必要もないでしょう?
だから虚しい希望は捨てて生きるための準備を始めた。
二度目は、自分らしく生きると決めた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
いつも稚拙な小説を読んでいただきありがとうございます。
私ごとですが、この度レジーナブックス様より『後悔している言われても⋯⋯ねえ?今さらですよ?』が1月31日頃に書籍化されることになりました~
これも読んでくださった皆様のおかげです。m(_ _)m
これからも皆様に楽しんでいただける作品をお届けできるように頑張ってまいりますので、よろしくお願いいたします(>人<;)
ローザリンデの第二の人生
梨丸
恋愛
伯爵令嬢、ローザリンデの夫はいつも彼女より仕事を優先させ、彼女を無碍にしている。
彼には今はもういない想い人がいた。
私と結婚したことにいい思いをしていないことは知っていた。
けれど、私の命が懸かっていた時でさえも、彼の精神は変わらなかった。
あなたが愛してくれないのなら、私は勝手に幸せになります。
吹っ切れたローザリンデは自分自身の幸せのために動くことにした。
※投稿してから、誤字脱字などの修正やわかりにくい部分の補足をすることがあります。(話の筋は変わらないのでご安心ください。)
1/10 HOTランキング2位、ありがとうございます。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる