神様に嫌われた神官でしたが、高位神に愛されました

土広真丘

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第2章

54.君の願いは全て叶える

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 困ったもんだとうそぶき、一の邪神は続けた。

『ここからは話を聞いた邪霊二体の推測だが、逃走したボンクラが地上に出た際にリーリアに会い、自分のものにしようと企んだのではないかとのことだ。リーリアは、ボンクラが振った娘に良く似ているそうなのでな』

 ならば、邪霊の娘はさぞかし美しかったのだろう。リーリアは眼が覚めるような美人だ。

『また、地上で俺の駒として動く邪霊たちを発見し、密かに様子を窺い、神威で霊威を覆って神になりすます技を盗んだのだろうとも言っていた。俺の手足に選ばれた邪霊たちは、優秀な奴ばかりらしい。ソイツらの真似をしていれば大丈夫だと思い、とにかくやることなすことを全てコピーしたのではないかという予想だ』

 神器の神威で邪霊の霊威を包んでしまえば、神官府の神聖な場所にも降り立つことができる。

 葬邪神の使いとなっている邪霊たちは、少し前に、リーリアの影にいる末王子の気配に気付いて王に連絡した。王は追手を差し向けて秘密裏に捕らえようとしたが、ゲイルも神器の力を駆使して隠れ、逃げ回るので上手くいかなかったという。

『その末っ子が神器を持ち出したのと、兄上の駒たちが動き出したのはどちらが先なのです?』
『ボンクラが神器を持ち出して出奔した後に、俺の使役たちが出動したらしい』
『やはりですか。リーリアは既に地下行きのリミットを過ぎていました』

 リーリアが大事に付けていた指輪が、地獄へのトリガーだ。

『おそらく、邪霊の末王子がリーリアに目を付けた後で、兄上の駒が動き出したことに気付き、こっそり様子を見ていた。そして、神威で霊威をくるんで標的に近づくやり方を見てすぐに真似たのだと思いますよ。その後も影から動きを観察していたのでしょう。だから、全ての邪霊の動きが一致していて、タイムラグがほとんど無かった』
「では、リーリアに落ち度はないのですね。ならば助けなくては。このままでは、彼女は地下に連れて行かれてしまいます」

 硬い顔をしたフルードが言う。煌めく碧眼が葬邪神を見た。

「お願いいたします。どうか、私をここから出して下さい」
『大事なお前の頼みとはいえ、それは聞けんなぁ~。もう少しだけここにいろ』
「お願いいたします。どうか、私をここから出して下さい」

 フルードは全く同じ台詞を繰り返した。ただし、今度はラミルファの方を見て。『あちゃ~やっぱりなぁ~』と額を抑える最古の邪神の前で、末の邪神は陶酔した眼差しを向ける。

『良いよ、良いよ。君がそう願うなら。叶えてあげよう、我が宝玉の願いなら。その全てを僕が叶えてやろうとも。ふふふ、今すぐここから出たいのだね。良いよ良いよ、うんうん良いよ良いよ』

 歌うように言いながら、右腕を掲げる。掌中に漆黒の剣が現れた。黒い炎が刃に灯り、ゴゥと渦を巻く。

『ちょ、ちょっと待ってくれラミ。あんまり駄々っ子されたらお兄ちゃん泣いちゃうぞ』

 止めようとする長兄に構わず、ラミルファは剣を斜に薙ぎ払った。

『開け』

 大気に一直線の亀裂が走り、閉ざされた空間を真っ二つに切り飛ばす。パックリと割れた先に現れたのは、大神官室だった。ちょうど、20の時を告げる鐘の音が鳴っている。

『ほら、君の部屋に繋いであげた』
「ありがとうございます。……私を回復して下さい」

 フルードがポンと胸に手を当てて発した瞬間、全身を紅蓮の焔が取り巻いた。消耗していた心身が、刹那で全回復する。

『例の反則神器か』

 舌打ちした葬邪神が腕を振ると、黒い蔓が無数に出現し、フルードの行く手を遮った。空間の割れ目が瞬く間に閉じていく。

『この鳥籠から出られはしない。――逃げようとするなら、また少しだけ手荒にするぞ。すまんがなぁ』

 最古の邪神が蔓を一瞥して号令を放つ。

『フルードを拘束しろ。ただし決して傷付けるな、捕らえるだけだ。くれぐれも丁重に扱え』

 蔓が一斉に殺到し、焔の神器が不穏に爆ぜる。だが、それより早くラミルファがフルードの前に滑り込んだ。

『君は外に羽ばたきたいのだろう。その願いを叶えてあげよう、この僕が』

 掌中の剣を一回転させてから、横一文字に振り抜く。

『君は飛べる。飛べるのだよ、どこまでも』

 漆黒の炎が炸裂し、一の邪神の空間と蔓をことごとく焼き尽くした。そして、爆風と轟音を上げながら神官府をも呑み込んだ。

 ついでにタペストリーも燃えた。
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