神様に嫌われた神官でしたが、高位神に愛されました

土広真丘

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第2章

88.フロースの目的

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「なら神威を消せ。んでもう少し離れろ」

 音もなくフロースの背後に出現していたフレイムが、静かな声で返す。

「分かったよ」

 漂っていた水球が、一斉にパチンと弾けて消滅した。そのままフルードから距離を取ると、フレイムから威圧の気がかき消える。

「うぅん、やっぱり焔神様は動くか」

 あーあと肩を落として頭を振るフロースを他所に、山吹色の瞳がラミルファを睨んだ。

「お前はセインの包翼だろ。自分の珠をちゃんと守れ」
「ごめん、焔神様。邪神様には、私が事前に念話で頼んでいたんだ。パパさんには絶対手出しはしないと誓うから、黙って見ていて欲しいと」
「は? 何だそれ……つかは何やってんだよ。何で弟を守らねえ」

『俺』とは、フルードの内に在るもう一柱の自分のことだろう。

「こわーい顔の君が早々にすっ飛んで来たからね、ここは任せようと思ったのだろう」
「あー、そうかよ。ったく」

 頭を乱暴にかき、フレイムは声を穏やかに変じさせた。

「セイン、大丈夫だったか?」
「はい」

 ぽやんと微笑むフルードに、フロースが二の腕をさすりながら呆れ声を漏らす。

「今の気を浴びたのに、パパさんは何故平気な顔をしていられるんだ」
「この子は気を感じ取れないようにされていたのだよ。フレイムは弟を威圧などしない」
「邪神様は怖く……なかったか。あなたも焔神様となんだから。私はまだ鳥肌が止まらないよ」
「ふふふ」
「そんなにビビらせちまったのか? すまん。ちょっとばかり、お~いやめろ~ってストップかけただけのつもりだったんだが。別に怒ったとかじゃねえから」

 フレイムが若干気まずそうに言う。

「分かっているよ。だけど、あれでちょっとばかりか。やはりあなたたちの基準は、普通の神とは大きく乖離かいりしている。何しろ……」
「僕は一足前にネタばらしをされていたが、泡神様が降臨した目的の一つは滞留書だったのだな」

 言葉の途中で、ラミルファがマイペースに口を挟む。

「愛し子探しも大きな理由だが、それだけではなかったと」
「うん。焔神様とパパさんにも説明するよ。……愛し子を見付けるために地上に降りたいと話した時、私は父神に言われた。それだけでは特別降臨の理由としては弱いから、別に頼み事も申し付けると」


 ――ある意味ではお前に打ってつけの役割かもしれない。


 そう苦笑した水神は、末子に命を下した。

「もし可能だったら、パパさんが持つ滞留書を奪って破損させたいと思っている。そう言われた」
「何故でしょうか?」

 フルードがそっと胸を押さえて問う。この衣の下に、聖威師を地上に繫ぎ止める手段が秘められている。

「聖威師が地上に留まることに難色を示している神々がいる。理由は幾つかあるけど、一つは身内と離れていたくないという単純なものだ」

 最広義では、至高神も含めた全ての神々が一つの大きな家族と認識される。これが神の世界における最も大きな家族単位だ。

「だが、聖威師が寿命まで地上にいるってのは、昔から続いて来たことじゃねえか。何で今更動くんだ?」
「ずっと我慢して来たのが限界になりつつあるのと、今回は他の理由も加わっているから。……神々の会議だよ。夢見る神々が起きて来れば、それを好機と大規模な神会議かむはかりが開かれる」
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