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第3章
73.まだ解明できない
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「ええ!? だって、事故死したのでは……」
壁にもたれて腕組みして聞いていたフレイムが、眉間にしわを寄せる。
「過去視をしたんだがな、実は助かってたみたいだ。波にさらわれ、事故現場から離れた岸辺に打ち上げられたんだ。そこを親切な夫婦に拾われて帝都に連れて来てもらった」
「まあ、そうだったの?」
「ああ。帝都の貴族が、ちょうど海辺の別荘に来ていたらしい」
「それはラッキーね」
(全然不幸じゃないわ。むしろ幸運よね)
神罰は効かなかったのだろうか。そう期待しかけたアマーリエだが、すぐに望みを捨て去る。それで一件落着していたなら、自分の守護がどうこうという騒ぎにはなっていないはずだ。
「んで、第三子は夫婦に気に入られて、帝城で働き口を世話してもらった。そこの仕事でかなり大きな成果を上げたんだ。それも何回も。そしたら夫婦が後見になって、帝国の国王に掛け合ってくれて、爵位の授与と新しく家を立てる裁可をもらってくれたんだとよ」
「それがサード家ということだ。三番目の子だからサードにしたのだろうか。安直すぎるかな。そして、サード家の二代目が徴を発現し、神官になった。以降もそれなりに強い霊威を持つ神官を輩出していたようだ」
フレイムとラミルファが交代で説明してくれる。
「あの――それ、全然災厄に見舞われていないですよね。むしろ大幸運の連続ではありませんか?」
「それがなぁ……」
フレイムが渋面を作った。フルードとアリステルも苦い顔をしている。
「第三子にかかった神罰は、もらい事故っつーか……本当の標的が火だるまになってる近くにいたせいで、火の粉がかかっちまったようなもんだ。だからなんだと思うが――神罰の効果や発動方法が、本来のものから変質してるんだよ」
「変質?」
アマーリエの胸中に、むくむくと嫌な予感が湧き上がる。
「順を追って話すぜ。まず、そもそもレシスの血統に刻まれた神罰については、俺たちも知らなかったんだ。末裔は市井の片隅で暮らしてて、選ばれちまった奴らはひっそり不幸になってひっそり死んでたからな」
神はずっと下界を視ているわけではなく、視たとしても中央本府を筆頭とした神官府が大半だ。辺鄙な地方に目を向けることは少ない。神罰を落とした遊運命神と、最初の奇跡の聖威師になった娘は、共に入眠中。ゆえに、天の神々もレシスの神罰に気付かなかった。
「だが、セインとアリステルが神に見初められて中央本府の中枢に参入し、多くの神々が育成に関わった。そこで疑問が生じたんだよ」
かつてのことを思い出すように、山吹色の瞳が遠くに向けられた。
「俺やラミルファ、狼神様ががどれだけセインを守っても守っても、災難が襲って来て不幸な道に引きずりこまれそうになる。薄気味悪い何かを感じて探ってみたが、真相は分からないまま、セインを地上に戻すことになった」
フルードが天界のフレイムの神域にいた頃はまだ良かったが、修行を終えて地上に戻ってからはその傾向が強まったという。焔の神器がなければ取り返しのつかない事態になっていたことが幾度も起こり、ついにラミルファとぶっ飛び神器が本気でキレかけた。葬邪神がラミルファを自身と対等な神だと実感した出来事がそれである。
「こりゃあマジでおかしいってことで、俺たちも本腰入れて調べたんだ。普段は世界に合わせて抑えてる力を少しだけ多めに解放したりしてな。んで、ついに神罰のことが分かったんだ」
「僕たち悪神側も、色々と調査したのだよ。その過程で、今セインとヴェーゼが説明したことが明らかになった。悪神の守護という解決方法を見付け出したのは、セインがフレイムの神域を出た後のことだ」
ただし、守護神を付けるという方法には人数制限があった。遊運命神の強大な力でもたらされた神罰を抑えるため、基本的には悪神一柱につき一人しか守れないのだ。
特定の一人を守るためだけに、わざわざ動いてやるとなれば、その相手に並々ならぬ愛着なり思い入れを持ってなければならない。ラミルファの場合、宝玉たるフルードのためであったため、一も二もなく手を挙げて守護神を引き受けた。
「ただ、神罰の全体像については明らかにし切れてなくてな。遊運命神様は俺たちと同格の神だ。同等の神がかけた術は、細部まで見通し切れねえ。力ずくで焼き消しちまいたくても、同じ理由で下手に手出しすると危険だしな」
そのため、今もなお全てを解明することはできていないそうだ。
壁にもたれて腕組みして聞いていたフレイムが、眉間にしわを寄せる。
「過去視をしたんだがな、実は助かってたみたいだ。波にさらわれ、事故現場から離れた岸辺に打ち上げられたんだ。そこを親切な夫婦に拾われて帝都に連れて来てもらった」
「まあ、そうだったの?」
「ああ。帝都の貴族が、ちょうど海辺の別荘に来ていたらしい」
「それはラッキーね」
(全然不幸じゃないわ。むしろ幸運よね)
神罰は効かなかったのだろうか。そう期待しかけたアマーリエだが、すぐに望みを捨て去る。それで一件落着していたなら、自分の守護がどうこうという騒ぎにはなっていないはずだ。
「んで、第三子は夫婦に気に入られて、帝城で働き口を世話してもらった。そこの仕事でかなり大きな成果を上げたんだ。それも何回も。そしたら夫婦が後見になって、帝国の国王に掛け合ってくれて、爵位の授与と新しく家を立てる裁可をもらってくれたんだとよ」
「それがサード家ということだ。三番目の子だからサードにしたのだろうか。安直すぎるかな。そして、サード家の二代目が徴を発現し、神官になった。以降もそれなりに強い霊威を持つ神官を輩出していたようだ」
フレイムとラミルファが交代で説明してくれる。
「あの――それ、全然災厄に見舞われていないですよね。むしろ大幸運の連続ではありませんか?」
「それがなぁ……」
フレイムが渋面を作った。フルードとアリステルも苦い顔をしている。
「第三子にかかった神罰は、もらい事故っつーか……本当の標的が火だるまになってる近くにいたせいで、火の粉がかかっちまったようなもんだ。だからなんだと思うが――神罰の効果や発動方法が、本来のものから変質してるんだよ」
「変質?」
アマーリエの胸中に、むくむくと嫌な予感が湧き上がる。
「順を追って話すぜ。まず、そもそもレシスの血統に刻まれた神罰については、俺たちも知らなかったんだ。末裔は市井の片隅で暮らしてて、選ばれちまった奴らはひっそり不幸になってひっそり死んでたからな」
神はずっと下界を視ているわけではなく、視たとしても中央本府を筆頭とした神官府が大半だ。辺鄙な地方に目を向けることは少ない。神罰を落とした遊運命神と、最初の奇跡の聖威師になった娘は、共に入眠中。ゆえに、天の神々もレシスの神罰に気付かなかった。
「だが、セインとアリステルが神に見初められて中央本府の中枢に参入し、多くの神々が育成に関わった。そこで疑問が生じたんだよ」
かつてのことを思い出すように、山吹色の瞳が遠くに向けられた。
「俺やラミルファ、狼神様ががどれだけセインを守っても守っても、災難が襲って来て不幸な道に引きずりこまれそうになる。薄気味悪い何かを感じて探ってみたが、真相は分からないまま、セインを地上に戻すことになった」
フルードが天界のフレイムの神域にいた頃はまだ良かったが、修行を終えて地上に戻ってからはその傾向が強まったという。焔の神器がなければ取り返しのつかない事態になっていたことが幾度も起こり、ついにラミルファとぶっ飛び神器が本気でキレかけた。葬邪神がラミルファを自身と対等な神だと実感した出来事がそれである。
「こりゃあマジでおかしいってことで、俺たちも本腰入れて調べたんだ。普段は世界に合わせて抑えてる力を少しだけ多めに解放したりしてな。んで、ついに神罰のことが分かったんだ」
「僕たち悪神側も、色々と調査したのだよ。その過程で、今セインとヴェーゼが説明したことが明らかになった。悪神の守護という解決方法を見付け出したのは、セインがフレイムの神域を出た後のことだ」
ただし、守護神を付けるという方法には人数制限があった。遊運命神の強大な力でもたらされた神罰を抑えるため、基本的には悪神一柱につき一人しか守れないのだ。
特定の一人を守るためだけに、わざわざ動いてやるとなれば、その相手に並々ならぬ愛着なり思い入れを持ってなければならない。ラミルファの場合、宝玉たるフルードのためであったため、一も二もなく手を挙げて守護神を引き受けた。
「ただ、神罰の全体像については明らかにし切れてなくてな。遊運命神様は俺たちと同格の神だ。同等の神がかけた術は、細部まで見通し切れねえ。力ずくで焼き消しちまいたくても、同じ理由で下手に手出しすると危険だしな」
そのため、今もなお全てを解明することはできていないそうだ。
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