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第5章
21.悪意がなかったから
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ピタリと声をハモらせる戦闘神。葬邪神と疫神よりも、この二神の方がよほど双子のようだ。
『遊運命神様、絶対寝ぼけてますって! なんか盛大に勘違いしてるんですよ! 天界の神々にそこら辺のトコを一からちゃんと聞いてみて下さい、そしたら誤解だって分かりますから!』
『そもそも、遊運命神様は何故そのような誤解をなさったのだろう』
全力で思い違いを正そうとするフレイム。ラミルファも解せないという表情を浮かべた。
『そうか!』
唐突にフロースが声を上げた。アマーリエたちは驚いて飛び上がる。
『な、何だよ泡神様? 突然大声出して』
『悪意がなかったからだ』
「フロース様、何のお話ですの?」
リーリアが困惑した眼差しで聞く。
『防御壁が反応しなかった理由だ。遊運命神様も、戦神様も闘神様も、聖威師たちに対して悪意も敵意も害意も全く持っていなかったんだよ。ただただ助けたい、救いたいという善意と好意と親切心だけで行動していたから、防御壁の感知に引っかからなかったんだ』
(あっ……!)
アマーリエは愕然とした。襲われたこちらから見れば、どのような事情があったにせよ攻撃された以上、害意はあったと考える。だが遊運命神たちの側は、本気で慈愛と憐憫の想いだけしか抱いていなかったとすれば――
『私たちは、半覚醒状態の遊運命神様が聖威師を同胞だと気付かない可能性を予期していた。なまじレシスの神罰とも関連付けて、襲って来るかもしれないと身構えていたんだ。だけど実際は、最初から聖威師を身内だと分かっていて、向こうからすれば襲うのではなく助けようとしていた』
最初の前提の時点で、双方の認識及び目的に大きな齟齬と乖離があったため、余計に遊運命神の意図が分かりにくくなっていたのではないかと、フロースは言った。
『今回の件はレシスとも神罰とも強硬派とも関係ない、純粋な勘違いによるものだったんだよ』
弾き出した推測に反応したのは、他ならぬ戦神と闘神だ。
『強硬派? いやいや違うぞ。安心しろ、俺たちはバリバリの尊重派だ!』
『雛たちの意志を慮り、今ここで昇天させてやろう』
任しとけ、とばかりに胸を叩く戦神と、やたら自信満々に言い切る闘神。共に瞳をキラキラさせ、満タンの思いやりを溢れさせながらこちらを見つめている。
「…………」
言葉もないアマーリエたちと頭を抱えているフロースを背後に庇い、フレイムとラミルファが遠い目をした。
『ここまで尊重していない尊重派は初めてだよ』
『やってるコトは強硬派そのものだな』
その声を華麗に聞き流し、戦闘を司る神々が獲物を構えた。
『さあ行くぞ、すぐ楽にしてやるからな!』
『我らに任せておけば何の心配もない』
「フ、フレイム、何とかして!」
「邪神様、お助け下さい」
アマーリエとフルードがそれぞれの神へ呼びかけた。誤解だと叫びたいが、先ほどからフレイムが何度も声を上げては黙殺されているのだから、聖威師たちが訴えても同じ結果になるだけだ。話し合いが無理なら力で止めてもらうしかない。
『任しとけ。――冗談じゃねえわ!』
『君たちはここにいろ。……お断りですよ』
フレイムとラミルファが答える。前半は己の最愛に、後半は戦神と闘神に向かっての言葉だ。
『葬邪神様はまだ来ないのか? 私の方で葬邪神様と疫神様、あと煉神様にも念話して、今の状況と分かったことを伝えてみる。早く来てくれと要請するよ』
『そうしてくれ、泡神様』
『ああ、頼んだよ』
戦神と闘神が予備動作もなく跳躍する。フレイムとラミルファの姿が消えた。半瞬後、四つの光が天堂に舞い上がった。紅蓮と赤黄の輝きが飛び、蘇芳と群青と激しく交錯する。
(何とか止まって、お願い)
アマーリエが祈るように手を組んだ時、宙を睨んで念話していたフロースが瞳を揺らした。
『…………えっ? そんな』
ポロリと漏れた肉声。アマーリエたちが一斉に泡の神を注視し、激しい空中戦闘を展開する四神もチラリと視線を向ける。
「ど、どうしたんですかフロース様?」
「まさか、葬邪神様の方でもまずいことが起こりましたの?」
張り詰めた声で聞くアマーリエとリーリア。ラモスとディモスがアマーリエを守るように寄り添っている。
『天の神々がこちらの状況を察して騒ぎ出したみたいなんだ。天堂なら制限なく降臨できるし、神威も抑えず自由に動けるんじゃないかって。この棟は神官府と繋がってはいるけど、一種の異空間に存在していて、地上にあるとは言えないから』
神が原則干渉しないのは地上だ。隔絶された異空間は含めない。
『戦神様と闘神様が動いたことが分かって、強硬派が触発されてしまったようだ。今にも天堂になだれ込んで聖威師の命を狙いに行きそうな感じだと言っている』
『遊運命神様、絶対寝ぼけてますって! なんか盛大に勘違いしてるんですよ! 天界の神々にそこら辺のトコを一からちゃんと聞いてみて下さい、そしたら誤解だって分かりますから!』
『そもそも、遊運命神様は何故そのような誤解をなさったのだろう』
全力で思い違いを正そうとするフレイム。ラミルファも解せないという表情を浮かべた。
『そうか!』
唐突にフロースが声を上げた。アマーリエたちは驚いて飛び上がる。
『な、何だよ泡神様? 突然大声出して』
『悪意がなかったからだ』
「フロース様、何のお話ですの?」
リーリアが困惑した眼差しで聞く。
『防御壁が反応しなかった理由だ。遊運命神様も、戦神様も闘神様も、聖威師たちに対して悪意も敵意も害意も全く持っていなかったんだよ。ただただ助けたい、救いたいという善意と好意と親切心だけで行動していたから、防御壁の感知に引っかからなかったんだ』
(あっ……!)
アマーリエは愕然とした。襲われたこちらから見れば、どのような事情があったにせよ攻撃された以上、害意はあったと考える。だが遊運命神たちの側は、本気で慈愛と憐憫の想いだけしか抱いていなかったとすれば――
『私たちは、半覚醒状態の遊運命神様が聖威師を同胞だと気付かない可能性を予期していた。なまじレシスの神罰とも関連付けて、襲って来るかもしれないと身構えていたんだ。だけど実際は、最初から聖威師を身内だと分かっていて、向こうからすれば襲うのではなく助けようとしていた』
最初の前提の時点で、双方の認識及び目的に大きな齟齬と乖離があったため、余計に遊運命神の意図が分かりにくくなっていたのではないかと、フロースは言った。
『今回の件はレシスとも神罰とも強硬派とも関係ない、純粋な勘違いによるものだったんだよ』
弾き出した推測に反応したのは、他ならぬ戦神と闘神だ。
『強硬派? いやいや違うぞ。安心しろ、俺たちはバリバリの尊重派だ!』
『雛たちの意志を慮り、今ここで昇天させてやろう』
任しとけ、とばかりに胸を叩く戦神と、やたら自信満々に言い切る闘神。共に瞳をキラキラさせ、満タンの思いやりを溢れさせながらこちらを見つめている。
「…………」
言葉もないアマーリエたちと頭を抱えているフロースを背後に庇い、フレイムとラミルファが遠い目をした。
『ここまで尊重していない尊重派は初めてだよ』
『やってるコトは強硬派そのものだな』
その声を華麗に聞き流し、戦闘を司る神々が獲物を構えた。
『さあ行くぞ、すぐ楽にしてやるからな!』
『我らに任せておけば何の心配もない』
「フ、フレイム、何とかして!」
「邪神様、お助け下さい」
アマーリエとフルードがそれぞれの神へ呼びかけた。誤解だと叫びたいが、先ほどからフレイムが何度も声を上げては黙殺されているのだから、聖威師たちが訴えても同じ結果になるだけだ。話し合いが無理なら力で止めてもらうしかない。
『任しとけ。――冗談じゃねえわ!』
『君たちはここにいろ。……お断りですよ』
フレイムとラミルファが答える。前半は己の最愛に、後半は戦神と闘神に向かっての言葉だ。
『葬邪神様はまだ来ないのか? 私の方で葬邪神様と疫神様、あと煉神様にも念話して、今の状況と分かったことを伝えてみる。早く来てくれと要請するよ』
『そうしてくれ、泡神様』
『ああ、頼んだよ』
戦神と闘神が予備動作もなく跳躍する。フレイムとラミルファの姿が消えた。半瞬後、四つの光が天堂に舞い上がった。紅蓮と赤黄の輝きが飛び、蘇芳と群青と激しく交錯する。
(何とか止まって、お願い)
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『…………えっ? そんな』
ポロリと漏れた肉声。アマーリエたちが一斉に泡の神を注視し、激しい空中戦闘を展開する四神もチラリと視線を向ける。
「ど、どうしたんですかフロース様?」
「まさか、葬邪神様の方でもまずいことが起こりましたの?」
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『天の神々がこちらの状況を察して騒ぎ出したみたいなんだ。天堂なら制限なく降臨できるし、神威も抑えず自由に動けるんじゃないかって。この棟は神官府と繋がってはいるけど、一種の異空間に存在していて、地上にあるとは言えないから』
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