不定期∶王道無糖

加速・D・歩

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本編

40 あの日の夢2

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「そうか、あの子に悪い事したね。気に病むことないよ」
『……』
「これからも、もしあたしに何かあって居なくなっても……メリの側に居てやって」
『メロ、……いや、何でもない』

 
 メリが倒れた時にあたしも“双子”だからか同じ白い空間に居た──っていってもメリとはまた別の場所みたいで、その時もカゲさんじゃない“誰か”から提案があった。あたし達が知らなかった記憶……家族達やみんながどうなったのか、とか。
 あの施設では酷い目に遭ったし、過去の事は本当は思い出したくない。けど、……多分知らないといけないと思ってカゲさんに話してメリの事を頼んでいた。全部じゃないけど家族がどうなったのかは、分かったみたい。


 缶詰の件でいつかは何処かで知るとは思うけど、その時より今の方知った方がまだ──ううん、……あたしの勝手なエゴかもしれない。今でも本当は迷ってた。それと──途中でメリが見るのをやめてくれて、良かったと思った。




 あの日、捕まってあたしは左のドアに入れと言われた。こっちも捕まった数人が動く道で長い事運ばれた先にあったその奥の部屋に連れてかれ着いた先は孤児院みたいな場所だった──

 人間の歳で10歳も満たない子供達がいっぱい居て、あたしたちは戸惑ってるとお世話係りの人に『やっと来た、早く手伝って!』と言われた。ここに来る道中酷い目に遭った子も居て、絶対に殺される……と思ってたし、離れ離れになったメリの心配もあった。


 近くには“お世話係の服”が積んであってあたしたちはそれを着る。簡易的なエプロンみたいな形でポケットもついていた。キャアキャア騒ぐ子供たちをテーブルに付かせて、一人一人にトレーの上に1人分のご飯があって野菜、お肉と飲み物とバランスが取れた食事と不思議なカプセル一つだった。
 係の人の説明ではここは、色んな国、種族の親がいない子供がある程度の年齢と成長になるまでお世話する場所らしい。係りの人たちもあたしたちの様な境遇で働いてる人達も居て、『心配ないわ、すぐにお世話のコツと子供達と仲良くなるわ』って言われ過ごす事に。


 その日からそこだけ見れば幸せな日々だった。子供たちのお世話して自分達も美味しいご飯といい寝床で就寝して次の日へと、あたし達が良い生活をしてるならメリもきっと──大丈夫。そう思えるようになってた。

 カプセルは栄養剤らしくて、毎食飲ませないといけなかった。子供達はご飯を食べてはくれるんだけど、お薬は嫌がって飲んでくれない。お薬を飲む歌があって係りの人はジャムをすくったスプーンの上にお薬を出して歌を歌いながら口に入れるのが恒例だった。

 ジャムはそんなにめったに食べれないから普段から飲める子達も欲しさにこれを要求してたり……そんな事があったわね。
 日中は少しのお勉強と運動場で体操やかけっこ、結構体力が必要で左のドアから来た人は体力があるものが多かった。前に捕まる前の生活を聞いたら、畑仕事をしてたり、狩りの仕事とかあたしも狩りは得意だった。弓で獲物を狙って取って家族の元に帰るとみんなが喜んでくれた。

 ……そんな事を思い出すとみんなに会いたくなって、それは子供達も。夜は寝なきゃいけないけど家族の事を思い出しホームシックて、泣きたしちゃう子が居てそれをなだめて寝かしつけるのも係の仕事だった。


『せんせー、お花で髪飾り作ったの!』
『あたちも! メロせんせーに!』

 お世話係りだけど勉強も教えてるせいか先生呼びで親しまれてた。お庭には色んな花が植えてあって、それを摘み輪っかに編んで花の冠をみんなが作ってくれた。あたしも教えてもらいながら作ってみたんだけど、少し歪でこういうのは妹のメリの方が上手かったな、と思ったり。


 あたしの種族は、ダークエルフと言われてる。あたしたちの肌が黒いから普通のエルフとの区別差別でそう呼ばれてる。ここには人間、ドワーフ、獣人、他の種族色々と居てダークエルフは一番寿命が長いから色んな人を“見送り”また新しい人達があとからも来てたわ。いつの間にかあたしはこの施設で係りのリーダーみたいな立場になっていた。

 子供達もどんどん卒業して、係の人もある程度の時期で移動する事になっていた。笑顔で手を振り、また何処かで──なんて言って別れた。


 ここのご飯は畑で栽培してる野菜と別の部屋から缶詰で運ばれてくるお肉だった。前に係りの子が別の部屋にいる人達に作った野菜を渡しに行ったら──


『お前達は食べてるのかそれ、』
『うげ……考えられねぇ』
『まぁ、人間が食べるもんじゃないしな』

 なんて言われて酷くショックだったと涙ながら話していた。この野菜達はあたし達や子供達と一緒に愛情を込めて作ったものだからそう言われて嫌な気持ちになったのは分かる。
 あまり、ここの施設の他の場所の人間達で良い人は見かけなかった。係りだけで歩いてても変な目やヒソヒソと話し声が聞こえる。こうして他の部屋に行かないと行けない理由はあたしたちお世話係も健康診断があるから。ここに来てから年に1回行う。

 病院とやらで、そういう先生と助手が居て一人一人全裸になってひと通り受ける。その間、首輪だけ着けないと行けなくて恥ずかしい。細いチューブを口から胃の中に入れたり、下の穴からも入れないと行けなくて……一応、先生の顔は見れないように寝かせられ腰辺りにカーテンがあってしてくれるんだけど……少し太い棒を挿れられたあと空気を入れてくる、あたしの赤ちゃんの部屋の検査をしてるみたいでそれも最初は顔が真っ赤になるぐらい恥ずかしかった。あとは血を取ったり、白い液体を飲ませられたりと色々やって解放される。初めてな子達は泣きながら受けてる子も居て、あたし達は『子供達のお世話をするには健康で居ないと』とよく説得していたわ。


『メロ、長く働いてくれたね。助かるよ』
『はい。』
『君の移動先が決まったからここのリストにある数人にも声をかけて』

 初めてここに来てから何十年経った頃か、何人もの卒業した子供や同僚を見送って働いてた。まだまだ現役で働けると思ってたら移動しなきゃいけなくなって、あたしと同じぐらい長く働いてた数人に声をかけて荷物を小さなカバンに入れてみんなと別れる。
『行かないで──!』って悲しまれるけど、上からの命令だったのと近年何処かの国で戦争があって色んな人が多く来てたのもあっての移動なんだろうと自分を納得させた。


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