不定期∶王道無糖

加速・D・歩

文字の大きさ
78 / 123
本編

66 試練9 竜と竜

しおりを挟む
「アタシ達4人……レイラが居ないけど無事よね。」
「ソユラ姉さま、心配だ早く探しに行かないと」
「うんうん、行きましょう!」

 クロくんにソックリなカゲさんって方も後ろからついてくる。彼はメリメロさん達としか話せ……意思疎通ができないらしいですわ、さっきも何度かカゲさんに話しかけてみたものの少し見つめられるだけでしたから。でもあの後メロさんから『少しの間、よろしく頼む』と言ってたと言われましたわ。もしかしてかなり声が小さい方なのかしらと思ったけどやっぱり違うみたいね。

「にしても、かなり細い道ね、薄暗いし……」
「光を灯せ《ライト》」
「ありがとう、ん……? 何か聴こえませんでしたか?」
「あたしたちには何も、何かあるの、」

 ピーチくんに光をつけてもらうと、細い道の先から『オオオォォオオ──……』と隙間風の様な音が聴こえた。アタシの大きなキツネ耳には聴こえたんだけど3人には聴こえなかったみたいでもう一回、その場で耳を澄ませた。


「やっぱり、何か居ますわ」
「でもこの先に進むしか無いよね、分かれ道も無かったし……」
「回復役、ピーチ様は《聖魔法》を使えるから回復も使えます?」
「ただの《ヒール》ぐらいなら、専門のソユラ姉様に比べたら回復力も……」
「はい、あたしとカゲさんで前衛をするので、中衛はアーニャ、後衛はピーチ様でお願いしますね」
「「了解!」」

 
 先に進むとさっき聴こえてた音が3人にも分かるぐらい大きく聴こえるようになってた。開けた場所に出ると足元がくるぶしぐらい水がはってて、歩くたびにピチャ、ピチャンと音がする。
 何か、居る──アタシ達は武器を構え、ピーチくんがさっきよりも強めの灯りをともすと──


「嘘でしょ……」
「水竜……って、アタシ達4人で?」

 
 アタシたちが居る少し先は池みたいになっててそこには、一体の水竜が居た……わ。相手もアタシたちを見てて認識してるわね。口を開けたと思ったら《水鉄砲》が来て咄嗟にアタシは《マジック》で、何枚かの《バリア》を出現させ軌道をそらせ、各々の配置につく。

「あの《水鉄砲》に当たったらかなり痛そう、気をつけないと……」

 メロさんとカゲさんは、アタシの出した足場(マジック)に乗って水竜に斬りつけていく。胴体が長く、ニョロニョロと体を捻り、抵抗していく。体には硬い鱗がビッシリ生えてるわ。

「くっ、一体だけどやっぱり強いね……っ、」
「メロさん! 危ないっ!」
「メロを癒せ──《ヒール》!」

 油断はしてない、けど、遠心力で尻尾がメロさんへ向かっていき当たる既の所でカゲさんが弾く。その尻尾の先がメロさんに当たってピーチくんが回復させる。
 カゲさんはそのまま、片手剣で水竜へ向かっていく。


「はっ、はっ、……っ」
「メロ、さん……? 大丈夫、」

 メロさんが胸を押さえて苦しそうにしてるから、『大丈夫なの?』って声をかけようとした時、メロさんは小声で『あたしも、やらなきゃ……』って苦しそうな声がした。


「は、……っ、ハアアア────ッ!《変身》!!」
「……」

 メロさんがそう叫ぶと、指先から白い鱗でおおわれていく、元々白い尻尾は生えてたので竜属の何かではあるんだろうけど、アタシにはなんで苦しそうにしてたのか分からなくて──

 アアァァ──!!

 瞬きした瞬間、メロさんは白い竜になっていた。彼女は竜になった途端、目の前に居る水竜へ噛み付いた。水竜も戸惑いながらもお互い絡みつくように抵抗してる。

 
「だ、駄目だ! ボクの《ヒール》じゃ、メロの傷が……」
「メロさんが相手をおさえてるうちに、水竜を倒しましょう!」

 ピーチくんが何度もメロさんの傷を癒してはその瞬間別の傷が出来て、メロさんだけでは……
 アタシ達も援護するように攻撃をする。カゲさんの攻撃に合わせて《マジック》を使い、自分もナイフを投げる。




 オオォォ──!
 
 メロさんが水竜の首を噛み砕き、高らかに勝利の咆哮をする。アタシたちもホッとしてたら、メロさんの爪攻撃が──咄嗟にカゲさんが剣で防御したから良かったけど……!

「め、メロさん?!」
「ドラゴン姿になってから正気を保ってない、か、カゲどうにかしろっ!」
「《マジック》沼になれ!」

 水竜を倒した時に水が引いて普通の地面に戻ったんだけど、メロさんが暴れるので彼女の足元だけに沼を作って行動を制御しようとした。白い竜の口元はさっきの水竜の血で赤く染まり黄色い目が輝いてる。

 カゲさんが動いてメロさんを気絶させようと動くけど、どうしよう、このままじゃ……


「なんや、騒がしいなぁ」


 アタシ達以外の声がして振り向くと、知らない男性が居た。
 いつの間に、と思ってると彼は「へぇ、ドラゴンさんや」と呟いた瞬間、メロさんへ──だけど、カゲさんがその攻撃を弾く。

「んー? えらい事になってそうだから助太刀しようと思ったんやけどなぁ?」
「あ、あの! あの白い竜はアタシ達の仲間で、」
「ふーん?」

 だから、殺さないで──と言おうとした瞬間、ピカッと一瞬光ったと思ったらメロさんの体が地面にドォン──と音をたてて倒れた。

「「、め、メロさん──!!」」

 アタシはメロさんに駆け寄るピーチくんと一緒に彼女の下へ《マジック》を使って目眩ましをすると同時に《ヒール》をかけるピーチくん。
 後ろでは金属のぶつかる音が鳴り響く──

「まずい、傷が深いぞ《ヒール》《ヒール》《ヒール》!!」
「そんなっ、アタシも!」

 鞄に入れてたポーションをドラゴン姿から徐々に人型に戻る体にかける。傷はジュワジュワと音をたてながら治ってくけど、出した血の量が──……!

 目眩ましの隙間から、カゲさんを見ると相手の素早い攻撃を無表情でさばいて、こっちに攻撃が来ないようにしてるけど、メロさんの事心配だよね。でも、あの人誰なの……

「勇者たる者、ドラゴン討伐は夢でしょ」
「……」
「自分、さっきから無言さんやねぇ」

 ゆ、勇者……? 嘘でしょ、こんな所で??
 で、でも、あの強さ……なら、本当に? でも、仲間が攻撃されるなんて……アタシは頭の中が混乱してる。

「アーニャ、メロの外傷は治った、担いでソユラ姉さまの所へ行こう」
「う、うん、そうね! カゲさんは、」
「アイツはあれの足止め、オレらはさっさと行こう!」

 カゲさんを見ると無言だけど、分かってくれたみたいな視線をもらい《マジック》でメロの体を軽くして、アタシはお姫様抱っこで運ぶ。3人でこの部屋から出た。



+メモ
【海底神殿】ピーチ、メロ、アーニャ、カゲ
《水鉄砲》…意外と威力がある。普通の対象物が当たると貫通するほどの威力。
《バリア》…アーニャが出したのは無属性の一般的なバリア。
《足場》…水竜の体長が15mなので、上に伸びるとその場だと届かない。


名前:光の勇者ルート
種族:人間
見た目:茶髪オレンジ目男性
一人称:オレ
二人称:自分、あんたさん
背:174
歳:20代前半
武器:刀
《雷魔法》《一閃》
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

処理中です...