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本編
7 迷宮へ:?日目……31層→36層
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「このお茶美味し……」
「良かった。このお茶は私のお店の常連さんから貰った茶葉なんですよ」
「あのお婆ちゃんのやつ?」
「そうそう、彼女のお孫さんが茶畑をしてて──……」
とりあえず休憩と言うことで茶色い髪の男性からお茶を貰う。ひと息つくとここが迷宮内だというのに少しリラックス出来た。
彼はおじさんが連れてきた魔石屋の主人だと言う。手持ちの魔石だけじゃ50層の開かずの扉に使えなくて良質の魔石を頼んでたんだった。
50層じゃあまりにも人が来れないって事で、あんまり人が来ない40層で待ってたんだけど、それでも数日待って来なかったからお姉ちゃんが痺れを切らして、30層まで登ってきた。さすがに30層だと冒険者さんがウロウロしてるからここから先に進まないようにカモフラージュを置いてワタシ達も暇だったから少し広いここで踊ってたら、おじさん達がやってきて────
「青さん? 大丈夫ですか……? 疲れてたら少し休んでても大丈夫ですよ」
「あ、大丈夫です。この後のことを考えて、お茶ありがとうございました」
「いえいえ。」
「アタシはもう一杯!」
「ちょっと、お姉ちゃん!」
「大丈夫ですよ、まだありますので」
少し考え事をしてたら魔石屋の主人、フェンさんに心配されてしまった。良質の魔石を手に入ったは良いけど本当に扉が開くのかな? それとも別の方法……?
お姉ちゃんは相変わらずマイペースに行動してて羨ましい。双子だけど性格は似てないって小さい頃から言われてきたから。
ワタシ達、お姉ちゃんが《記憶操作》ワタシが《認識操作》っていう能力を持ってる。小さい頃はイタズラ好きで双子ならではのどっちでしょう? っていう遊びをしまくってたら能力が開花したみたい。性格は真逆だけど小さい頃は髪の色も同じだったし顔もソックリだったから……
「まだ夜の時間じゃねぇか? それとも1回寝とくか?」
「ロイくんはどう?」
「まだ大丈夫!」
「んでも、この先に休憩できる所……赤達は見なかったか?」
「んー、あった気がする」
「うんうん、ここより狭かったけど部屋があったよ」
「ん、まぁちょっと休んでからそこまで目指すか」
ワタシ達が居れば魔物が襲ってくる事はほぼ無いから元気なら50層まですぐだよ、と思ったけど本職のおじさんの経験からの無理をしないって事で寝ることに。《生活魔法》で体をサッパリさせてから、寝袋へ。
にしても、おじさんと魔石屋のフェンさんは分かるんだけどワタシ達と同じぐらいのロイくんはどういう子なのかな? それと──……
・・・あ、これ明晰夢だ。
ふと、夢の中なのに意識がハッキリとする。さっきから雑念……考え事が多かったからかなぁ。と思う。
おじさん、あの二人からユナさんって呼ばれてたなぁ。あの名前を使うなんて……彼の奥さんの名前。ワタシ達はとある組織に入ってるんだけどそこにおじさんも入ってる。組織に入る前は冒険者として結構有名だったみたい。綺麗な奥さんと小さなお子さんが居て平和に暮らしてた。でも冒険者業をしてたからなかなか家に帰れてなかったみたい。依頼が終わったあと少しだけ家に帰って和やかな日々を暮らしてたって、そうやって“昔”の事を話すおじさんは幸せそうだった。
でも、ある時──奥さん達が住む街が忽然と消えてしまった。消えるといっても爆発系で周辺の畑群も巻き込んで──被害が大きかったのを覚えてる。あの頃はまだ《先読み》ちゃん達が居なかったから、魔力暴走しそうな人を教えてもらうか、暴走後の処理としてワタシ達が向かってた。
魔力暴走後の数日、組織専用の馬車で辿り着いた時には街が消えたという情報が出てそこの街に関係してる人々が集まっては壊れた建物、飛び散った肉片にそれに関する服や小物をみて泣き崩れる人々、その中におじさんがいた。彼はただ呆然と立ち尽くしててた。
ワタシ達はこの混乱から2次被害が出ないよう、この街、亡くなった者に集まってる関係者達記憶の鎖を切って“ここには何も無かった”“この死体とあなたは関係ない”とたんたんと作業していた。
関係が切れたものは、何故この場に居るんだろ? と近くにある乗合馬車に乗って帰っていく。
おじさんはいつの間にか自分の家らしき建物の前に居て、爆発の衝撃で全壊してる中にあった小さな靴を両手で持って泣き崩れていた。ワタシ達が近づくと鋭い視線で気づく。
『あんたらさっきの人達に“何か”してんのか?』
『……記憶を消してる。貴方もこの街と人々を忘れて──』
『俺にもそれ、やるつもりか? なあ、何が起こったんだ? あんたらは原因を知ってるのか?』
アタシ達の存在に気づくなんて、それにこんなに質問攻めされるのも初めてだった。
横にいたお姉ちゃんが、どうせ記憶を消すから教えてあげようと“ただの気まぐれ”でおじさんにどうしてこんな事が起きたのか、ワタシ達の仕事の事を教えた。
それを聞いたおじさんはワタシ達が入ってる組織に入りたいと言った。彼の能力は《変化》で、何処かに潜入調査する時に役立つだろうと言ってきた。ワタシ達が決めることじゃないからリーダーに伝えてその後に色々と試験? を経て組織のメンバーになったの。
『ユナや──の事は忘れたくないんだ。だから消さないでくれ』
『分かった。どうしても辛くなった時は言ってワタシ達が“認識”させなくするから』
『……ああ。』
いつもは明るいおじさんだけど、彼にはそういう経由でここに入ってきた。仕事では、基本能力呼びだから本名知らないしおじさんって言ってたら外で会う時にいつの間にか女性になってて、ビックリしたのを覚えてる妻ユナさんの格好らしい。また冒険者はやってるけどまた1から始めて今は中堅? ぐらいになってるみたい。
『あんまり目立つと面倒くせぇからこのぐらいで良いんだ』
って言ってたわ。おじさんの能力《変化》は他の人にも使えて、対象が死んでも変えたままの見た目になるから潜入や身代わりにしたり、にゃんこの能力《コピー》と合わせたり意外と自由度が高いんだよね。
《先読み》ちゃんが来てから魔力暴走が起こる前に現場にいけるし《転移》くんで移動も楽だし《時止め》さんのおかげで何かあっても被害がおさえられるし《魔石生成》さんはちょっと謎なところがあるけど良い人? だし、謎と言えば《記憶改変》くんもあんまり現場で会わなくて、リーダーも手を焼いてるみたい。お姉ちゃんの事を自由人ってよく言うけど彼も相当、自由人でふらっと来るぐらいで普段何してるのか分からないし……にゃんこちゃんは可愛い。癒し……! とおじさんと! えへへ。
こんなに人が多いのは初めてだし、血なまぐさい現場から離れられるようになってすごく良い。前は暴走の後だったから精神的にもキツくて……ワタシ達も不安定だったし。
ワタシ達普段は考古学者をしてる。小さい時にお家に祖父が書いた本がいっぱいあって、大昔にエルフ族が持ってたアーティファクトを研究した結果とかもっと太古の遺跡を調べたり、それこそ魔王がいた時代の迷宮とかね。お姉ちゃんもワタシと同じくそういうのに興味があったのか、一緒に考古学者になった。
普段は迷宮とかに入って普通の冒険者がなんパーティーも組んだり軍で進んだりしないといけないけど、ワタシ達は魔物相手なら《操作》能力で突破出来るからスイスイ~と進むし、シーフスキル持ちの方を雇って罠解除したりして迷宮の遺跡を調べたりしてるの。
今回は、王都近くにある迷宮なのに、意外と奥まで進んでないし、色々と調べてたの。珍しいのよ。地方や魔王が居たとされる地域の迷宮とかならね、未開の地だったりするんだけど、しかも王都だしね。
で、40層後半ぐらいから壁とかも壁画とか装飾されたものが増えていく。ここが何層まで続くのか分からないけど、降りる階段も整備されてないのが分かる。
・・・それは追々で良いかな。
『あおー?』
『青っ! そろそろ行くよ!』
『おーい、ねぼすけさん!』
遠くから声がする……あ。
「やっと、目が覚めたか。」
「んっ~ぅ! ……おはようございます?」
「結構、呼びかけたんだぞ」
目が醒めると、皆が覗き込んでて少し恥ずかしかった。ワタシが一番遅かったみたいでとっとと準備して出発した。
「今、どれぐらいの所だっけ」
「さっきのが30層あたりなら34層ぐらいですかね」
「部屋ってどこら辺だったっけ」
「ちょ、赤さん! 忘れないでよ」
誰かのお腹の音が鳴って仮眠は取ったけどお腹は空いたなぁって。ちなみに魔物がうようよ居る場所を通ってるけど、彼らはワタシ達の事を気にせず行動してる。最初はロイくんとかはおっかなびっくりだったけど、今ではあんなに談笑するまでにもなってる。うーん、ロイくんの髪色何処かで見たことがあるんだけどなぁ。何処だろ。
「あ! ここ、ここを右に……逆だから左に曲がって~……ここ!」
「あ、本当にあった!」
お姉ちゃんが突然、声をあげるからビックリしちゃった。さっきといってもだいぶ前に通った道を思い出してお姉ちゃんが走っていくのを追いかける。
ドア付きの小部屋があって、そうそうここ! って入ってく。
5人入っても例え横になってもあと1人、2人分ぐらいは大丈夫なぐらいの広さ。持ってきた保存食の準備と《生活魔法》で出した水の確保とか手分けして。
「そういや、王都でも聖塔の保存食バリエーションが増えましたね」
「あー、長期用缶詰だっけ」
「あれ美味しいのかな」
「マジックボックスがあるからあんまどうだろう。」
「あれって結局、軍用に開発されたとか言ってなかったけ」
ワタシ達はその缶詰食べたことないんだよね、ちょっと値段も他の缶詰めとか保存食と比べると高いし。良いものを使ってるっていう触れ込みだけど、軍か貴族用かな。
生き物以外ならマジックボックスに入れたら良いってのもあるしね。前に鍋ごと持ってきたなんて話もあったけど……うーん、どうなんだろ。
ワイワイと部屋の外では魔物達が居るけど話しながら食べてる。普段からお姉ちゃんは明るいけど、2人っきりだとあうんの呼吸みたいなあんまり喋らない時もあるから迷宮内でこんなに喋りながら食べるのは久しぶりで楽しい!
沸騰させた鍋に野菜スープを入れて少しかき混ぜる。これぐらいの層で野菜を食べれるのは良いよね。野菜自体を持ってくる人も居るけど普通は近くに魔物が居たら警戒しながら料理をしづらいってものあるし、軍とか大人数とかなら別かもしれないけどね。5人分に分けて飲むと、優しい甘みでホッとする。細かい野菜だけど食べ応えもあって美味しい。
「ん、それは?」
「それがさっきの缶詰?」
「いやいや、これはオツマミ缶詰って言ってな、ほれ。」
おじさんが取り出した缶詰の中身を皿に出すと卵、コンニャク、根野菜、練り物が出てきた。おじさんが各地に行った時に商人から買った、おでん缶という料理らしい。
「東の商人だったらしくてさ。これを食べた時は衝撃だったわ。んで、その商人に会うたびに仕入れるんだわ。酒ともよく合うんだわこれが」
「へー、あ。この野菜、ダシの味が染み込んでて美味しいですね。お酒ですか、」
「フェンさん、お酒はだめですからね!」
お酒かー、ワタシ達はまだ成人の年になってないからおじさんのいうお酒は飲んだことないんだよね。フェンさんは飲めるみたいだけどロイくんが必死に止めてて──あ!
「あっ!」
「どうしたの青」
「あ、このパンも甘くて美味しいね! って思ったの!」
「うんうん、これ青が好きそうだなーって思って買っといたんだ!」
咄嗟に、お姉ちゃんが買ってきてたフワフワの甘いパンを食べる。美味しいけど、そうじゃなくて……あの子《転移》くんだ。組織にいる時はフード被ってて髪の色分かりづらかったし、必要な事以外は喋らない無口な人だったから気付かなかった……! って事は、隣の人は《魔石生成》さん? おじさんは知ってるのかな、うーん……ユナさんの名前を教えてたし知らないのかも。
お姉ちゃんも気づいてない? でも《魔石生成》さんも仮面を被ってるから顔わかんないし……《記憶操作》をワタシが使えたら、一回聞いてみて違かったら忘れさせたり出来るんだけどなぁ。でも、もし、そうだったらカッコいい人なのかも。魔石屋さんしてるんだ……
本当か分からないけどね?
組織での彼は、感情が無いイメージだったからああいう姿を見れたのは良かったかも。前に幼い女の子を魔石にしてた時も口元しか分からなかったから、そういう仕事って辛くないのかなぁとか、考えてた。ワタシ達の昔の事とちょっとね。
食べてから片付けて寝袋をひいて就寝。たっぷり寝よう、おやすみなさい!
+メモ
秘密結社【プラムプトゥリィ】
先読み:サキ:車椅子の女の子
時止め:トキ:車椅子側近の眼鏡をかけた女性
転移:弓:ロイ:フードを被った無口な少年
魔石生成:ハンマー:フェン:仮面を付けた青年
記憶操作:赤:赤い髪の少女(双子の姉)
認識操作:青:青い髪の少女(双子の妹)
記憶改変:黒髪黒目の少年
コピー:人語を話す黒猫
変化:大剣:ユナ:50代のおっさん
お茶っ葉…魔石屋の常連お婆ちゃんの孫が作った。リラックス効果がある。イメージとしては緑茶。
お鍋…炊飯器ごと持ってきたみたいな言い方になってしまった。検索してももう出ないのか。名前で検索したら出はするだろうけど。大食いの人が昔飛行機に炊飯器を持って(略
保存食…色んなサイトを見て上位だったもの
おでん缶…写真を見た感じ色々と入ってて美味しそうだった。卵は鶉の卵だっけど数個入ってたし
野菜スープ…ミックスベジタブル的な細々と野菜が入ってるやつ
甘いパン…王道の。昔からこの手のフワフワ系長期保存パン多いよね。チョコ味
最近はローリングストックが一般的になって普段から賞味が近くなったものを食べてまた保存するってのが多くなったから味とかバリエーションとかフリーズドライ系とか多くなったね。子供の頃なんかカンパンぐらいだったよ。
双子…小さい時は紫色の髪色だった。アタシがワタシでワタシがアタシ。性格は真逆で赤が活発、青がしっかり者。
過去の魔力暴走2
長閑な街、周辺には畑や放牧があり乳製品が有名な所だった。ユナの家は街から少し離れた丘にあって彼女が作る乳製品、チーズやヨーグルトなどは街でも人気だった。あと美人なのでそこも人気があった。
冒険者の夫と結婚、出産で子供1人が出来る。まだ赤子だった為判別不明
小さな洋服の編み物や靴などを作ったり集めてたりしてた。
魔力暴走の当事者はどこにでも居るカップルで痴話喧嘩の内容が大きくなり突然別れを聞かされてショックのあまり爆発。(こんな単純な内容でも暴走は起きる)当時は組織のメンバーが少なく《先読み》も居なかったので、暴走が起こってからの後処理として双子の能力《記憶操作》とかで“ここには何もなかった”というやつをやっていた。この頃の双子達も仕事の時はかなりドライでたんたんと仕事をしている。
「良かった。このお茶は私のお店の常連さんから貰った茶葉なんですよ」
「あのお婆ちゃんのやつ?」
「そうそう、彼女のお孫さんが茶畑をしてて──……」
とりあえず休憩と言うことで茶色い髪の男性からお茶を貰う。ひと息つくとここが迷宮内だというのに少しリラックス出来た。
彼はおじさんが連れてきた魔石屋の主人だと言う。手持ちの魔石だけじゃ50層の開かずの扉に使えなくて良質の魔石を頼んでたんだった。
50層じゃあまりにも人が来れないって事で、あんまり人が来ない40層で待ってたんだけど、それでも数日待って来なかったからお姉ちゃんが痺れを切らして、30層まで登ってきた。さすがに30層だと冒険者さんがウロウロしてるからここから先に進まないようにカモフラージュを置いてワタシ達も暇だったから少し広いここで踊ってたら、おじさん達がやってきて────
「青さん? 大丈夫ですか……? 疲れてたら少し休んでても大丈夫ですよ」
「あ、大丈夫です。この後のことを考えて、お茶ありがとうございました」
「いえいえ。」
「アタシはもう一杯!」
「ちょっと、お姉ちゃん!」
「大丈夫ですよ、まだありますので」
少し考え事をしてたら魔石屋の主人、フェンさんに心配されてしまった。良質の魔石を手に入ったは良いけど本当に扉が開くのかな? それとも別の方法……?
お姉ちゃんは相変わらずマイペースに行動してて羨ましい。双子だけど性格は似てないって小さい頃から言われてきたから。
ワタシ達、お姉ちゃんが《記憶操作》ワタシが《認識操作》っていう能力を持ってる。小さい頃はイタズラ好きで双子ならではのどっちでしょう? っていう遊びをしまくってたら能力が開花したみたい。性格は真逆だけど小さい頃は髪の色も同じだったし顔もソックリだったから……
「まだ夜の時間じゃねぇか? それとも1回寝とくか?」
「ロイくんはどう?」
「まだ大丈夫!」
「んでも、この先に休憩できる所……赤達は見なかったか?」
「んー、あった気がする」
「うんうん、ここより狭かったけど部屋があったよ」
「ん、まぁちょっと休んでからそこまで目指すか」
ワタシ達が居れば魔物が襲ってくる事はほぼ無いから元気なら50層まですぐだよ、と思ったけど本職のおじさんの経験からの無理をしないって事で寝ることに。《生活魔法》で体をサッパリさせてから、寝袋へ。
にしても、おじさんと魔石屋のフェンさんは分かるんだけどワタシ達と同じぐらいのロイくんはどういう子なのかな? それと──……
・・・あ、これ明晰夢だ。
ふと、夢の中なのに意識がハッキリとする。さっきから雑念……考え事が多かったからかなぁ。と思う。
おじさん、あの二人からユナさんって呼ばれてたなぁ。あの名前を使うなんて……彼の奥さんの名前。ワタシ達はとある組織に入ってるんだけどそこにおじさんも入ってる。組織に入る前は冒険者として結構有名だったみたい。綺麗な奥さんと小さなお子さんが居て平和に暮らしてた。でも冒険者業をしてたからなかなか家に帰れてなかったみたい。依頼が終わったあと少しだけ家に帰って和やかな日々を暮らしてたって、そうやって“昔”の事を話すおじさんは幸せそうだった。
でも、ある時──奥さん達が住む街が忽然と消えてしまった。消えるといっても爆発系で周辺の畑群も巻き込んで──被害が大きかったのを覚えてる。あの頃はまだ《先読み》ちゃん達が居なかったから、魔力暴走しそうな人を教えてもらうか、暴走後の処理としてワタシ達が向かってた。
魔力暴走後の数日、組織専用の馬車で辿り着いた時には街が消えたという情報が出てそこの街に関係してる人々が集まっては壊れた建物、飛び散った肉片にそれに関する服や小物をみて泣き崩れる人々、その中におじさんがいた。彼はただ呆然と立ち尽くしててた。
ワタシ達はこの混乱から2次被害が出ないよう、この街、亡くなった者に集まってる関係者達記憶の鎖を切って“ここには何も無かった”“この死体とあなたは関係ない”とたんたんと作業していた。
関係が切れたものは、何故この場に居るんだろ? と近くにある乗合馬車に乗って帰っていく。
おじさんはいつの間にか自分の家らしき建物の前に居て、爆発の衝撃で全壊してる中にあった小さな靴を両手で持って泣き崩れていた。ワタシ達が近づくと鋭い視線で気づく。
『あんたらさっきの人達に“何か”してんのか?』
『……記憶を消してる。貴方もこの街と人々を忘れて──』
『俺にもそれ、やるつもりか? なあ、何が起こったんだ? あんたらは原因を知ってるのか?』
アタシ達の存在に気づくなんて、それにこんなに質問攻めされるのも初めてだった。
横にいたお姉ちゃんが、どうせ記憶を消すから教えてあげようと“ただの気まぐれ”でおじさんにどうしてこんな事が起きたのか、ワタシ達の仕事の事を教えた。
それを聞いたおじさんはワタシ達が入ってる組織に入りたいと言った。彼の能力は《変化》で、何処かに潜入調査する時に役立つだろうと言ってきた。ワタシ達が決めることじゃないからリーダーに伝えてその後に色々と試験? を経て組織のメンバーになったの。
『ユナや──の事は忘れたくないんだ。だから消さないでくれ』
『分かった。どうしても辛くなった時は言ってワタシ達が“認識”させなくするから』
『……ああ。』
いつもは明るいおじさんだけど、彼にはそういう経由でここに入ってきた。仕事では、基本能力呼びだから本名知らないしおじさんって言ってたら外で会う時にいつの間にか女性になってて、ビックリしたのを覚えてる妻ユナさんの格好らしい。また冒険者はやってるけどまた1から始めて今は中堅? ぐらいになってるみたい。
『あんまり目立つと面倒くせぇからこのぐらいで良いんだ』
って言ってたわ。おじさんの能力《変化》は他の人にも使えて、対象が死んでも変えたままの見た目になるから潜入や身代わりにしたり、にゃんこの能力《コピー》と合わせたり意外と自由度が高いんだよね。
《先読み》ちゃんが来てから魔力暴走が起こる前に現場にいけるし《転移》くんで移動も楽だし《時止め》さんのおかげで何かあっても被害がおさえられるし《魔石生成》さんはちょっと謎なところがあるけど良い人? だし、謎と言えば《記憶改変》くんもあんまり現場で会わなくて、リーダーも手を焼いてるみたい。お姉ちゃんの事を自由人ってよく言うけど彼も相当、自由人でふらっと来るぐらいで普段何してるのか分からないし……にゃんこちゃんは可愛い。癒し……! とおじさんと! えへへ。
こんなに人が多いのは初めてだし、血なまぐさい現場から離れられるようになってすごく良い。前は暴走の後だったから精神的にもキツくて……ワタシ達も不安定だったし。
ワタシ達普段は考古学者をしてる。小さい時にお家に祖父が書いた本がいっぱいあって、大昔にエルフ族が持ってたアーティファクトを研究した結果とかもっと太古の遺跡を調べたり、それこそ魔王がいた時代の迷宮とかね。お姉ちゃんもワタシと同じくそういうのに興味があったのか、一緒に考古学者になった。
普段は迷宮とかに入って普通の冒険者がなんパーティーも組んだり軍で進んだりしないといけないけど、ワタシ達は魔物相手なら《操作》能力で突破出来るからスイスイ~と進むし、シーフスキル持ちの方を雇って罠解除したりして迷宮の遺跡を調べたりしてるの。
今回は、王都近くにある迷宮なのに、意外と奥まで進んでないし、色々と調べてたの。珍しいのよ。地方や魔王が居たとされる地域の迷宮とかならね、未開の地だったりするんだけど、しかも王都だしね。
で、40層後半ぐらいから壁とかも壁画とか装飾されたものが増えていく。ここが何層まで続くのか分からないけど、降りる階段も整備されてないのが分かる。
・・・それは追々で良いかな。
『あおー?』
『青っ! そろそろ行くよ!』
『おーい、ねぼすけさん!』
遠くから声がする……あ。
「やっと、目が覚めたか。」
「んっ~ぅ! ……おはようございます?」
「結構、呼びかけたんだぞ」
目が醒めると、皆が覗き込んでて少し恥ずかしかった。ワタシが一番遅かったみたいでとっとと準備して出発した。
「今、どれぐらいの所だっけ」
「さっきのが30層あたりなら34層ぐらいですかね」
「部屋ってどこら辺だったっけ」
「ちょ、赤さん! 忘れないでよ」
誰かのお腹の音が鳴って仮眠は取ったけどお腹は空いたなぁって。ちなみに魔物がうようよ居る場所を通ってるけど、彼らはワタシ達の事を気にせず行動してる。最初はロイくんとかはおっかなびっくりだったけど、今ではあんなに談笑するまでにもなってる。うーん、ロイくんの髪色何処かで見たことがあるんだけどなぁ。何処だろ。
「あ! ここ、ここを右に……逆だから左に曲がって~……ここ!」
「あ、本当にあった!」
お姉ちゃんが突然、声をあげるからビックリしちゃった。さっきといってもだいぶ前に通った道を思い出してお姉ちゃんが走っていくのを追いかける。
ドア付きの小部屋があって、そうそうここ! って入ってく。
5人入っても例え横になってもあと1人、2人分ぐらいは大丈夫なぐらいの広さ。持ってきた保存食の準備と《生活魔法》で出した水の確保とか手分けして。
「そういや、王都でも聖塔の保存食バリエーションが増えましたね」
「あー、長期用缶詰だっけ」
「あれ美味しいのかな」
「マジックボックスがあるからあんまどうだろう。」
「あれって結局、軍用に開発されたとか言ってなかったけ」
ワタシ達はその缶詰食べたことないんだよね、ちょっと値段も他の缶詰めとか保存食と比べると高いし。良いものを使ってるっていう触れ込みだけど、軍か貴族用かな。
生き物以外ならマジックボックスに入れたら良いってのもあるしね。前に鍋ごと持ってきたなんて話もあったけど……うーん、どうなんだろ。
ワイワイと部屋の外では魔物達が居るけど話しながら食べてる。普段からお姉ちゃんは明るいけど、2人っきりだとあうんの呼吸みたいなあんまり喋らない時もあるから迷宮内でこんなに喋りながら食べるのは久しぶりで楽しい!
沸騰させた鍋に野菜スープを入れて少しかき混ぜる。これぐらいの層で野菜を食べれるのは良いよね。野菜自体を持ってくる人も居るけど普通は近くに魔物が居たら警戒しながら料理をしづらいってものあるし、軍とか大人数とかなら別かもしれないけどね。5人分に分けて飲むと、優しい甘みでホッとする。細かい野菜だけど食べ応えもあって美味しい。
「ん、それは?」
「それがさっきの缶詰?」
「いやいや、これはオツマミ缶詰って言ってな、ほれ。」
おじさんが取り出した缶詰の中身を皿に出すと卵、コンニャク、根野菜、練り物が出てきた。おじさんが各地に行った時に商人から買った、おでん缶という料理らしい。
「東の商人だったらしくてさ。これを食べた時は衝撃だったわ。んで、その商人に会うたびに仕入れるんだわ。酒ともよく合うんだわこれが」
「へー、あ。この野菜、ダシの味が染み込んでて美味しいですね。お酒ですか、」
「フェンさん、お酒はだめですからね!」
お酒かー、ワタシ達はまだ成人の年になってないからおじさんのいうお酒は飲んだことないんだよね。フェンさんは飲めるみたいだけどロイくんが必死に止めてて──あ!
「あっ!」
「どうしたの青」
「あ、このパンも甘くて美味しいね! って思ったの!」
「うんうん、これ青が好きそうだなーって思って買っといたんだ!」
咄嗟に、お姉ちゃんが買ってきてたフワフワの甘いパンを食べる。美味しいけど、そうじゃなくて……あの子《転移》くんだ。組織にいる時はフード被ってて髪の色分かりづらかったし、必要な事以外は喋らない無口な人だったから気付かなかった……! って事は、隣の人は《魔石生成》さん? おじさんは知ってるのかな、うーん……ユナさんの名前を教えてたし知らないのかも。
お姉ちゃんも気づいてない? でも《魔石生成》さんも仮面を被ってるから顔わかんないし……《記憶操作》をワタシが使えたら、一回聞いてみて違かったら忘れさせたり出来るんだけどなぁ。でも、もし、そうだったらカッコいい人なのかも。魔石屋さんしてるんだ……
本当か分からないけどね?
組織での彼は、感情が無いイメージだったからああいう姿を見れたのは良かったかも。前に幼い女の子を魔石にしてた時も口元しか分からなかったから、そういう仕事って辛くないのかなぁとか、考えてた。ワタシ達の昔の事とちょっとね。
食べてから片付けて寝袋をひいて就寝。たっぷり寝よう、おやすみなさい!
+メモ
秘密結社【プラムプトゥリィ】
先読み:サキ:車椅子の女の子
時止め:トキ:車椅子側近の眼鏡をかけた女性
転移:弓:ロイ:フードを被った無口な少年
魔石生成:ハンマー:フェン:仮面を付けた青年
記憶操作:赤:赤い髪の少女(双子の姉)
認識操作:青:青い髪の少女(双子の妹)
記憶改変:黒髪黒目の少年
コピー:人語を話す黒猫
変化:大剣:ユナ:50代のおっさん
お茶っ葉…魔石屋の常連お婆ちゃんの孫が作った。リラックス効果がある。イメージとしては緑茶。
お鍋…炊飯器ごと持ってきたみたいな言い方になってしまった。検索してももう出ないのか。名前で検索したら出はするだろうけど。大食いの人が昔飛行機に炊飯器を持って(略
保存食…色んなサイトを見て上位だったもの
おでん缶…写真を見た感じ色々と入ってて美味しそうだった。卵は鶉の卵だっけど数個入ってたし
野菜スープ…ミックスベジタブル的な細々と野菜が入ってるやつ
甘いパン…王道の。昔からこの手のフワフワ系長期保存パン多いよね。チョコ味
最近はローリングストックが一般的になって普段から賞味が近くなったものを食べてまた保存するってのが多くなったから味とかバリエーションとかフリーズドライ系とか多くなったね。子供の頃なんかカンパンぐらいだったよ。
双子…小さい時は紫色の髪色だった。アタシがワタシでワタシがアタシ。性格は真逆で赤が活発、青がしっかり者。
過去の魔力暴走2
長閑な街、周辺には畑や放牧があり乳製品が有名な所だった。ユナの家は街から少し離れた丘にあって彼女が作る乳製品、チーズやヨーグルトなどは街でも人気だった。あと美人なのでそこも人気があった。
冒険者の夫と結婚、出産で子供1人が出来る。まだ赤子だった為判別不明
小さな洋服の編み物や靴などを作ったり集めてたりしてた。
魔力暴走の当事者はどこにでも居るカップルで痴話喧嘩の内容が大きくなり突然別れを聞かされてショックのあまり爆発。(こんな単純な内容でも暴走は起きる)当時は組織のメンバーが少なく《先読み》も居なかったので、暴走が起こってからの後処理として双子の能力《記憶操作》とかで“ここには何もなかった”というやつをやっていた。この頃の双子達も仕事の時はかなりドライでたんたんと仕事をしている。
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