健康優良男子が不健康女子に片思い中です。

法花鳥屋銭丸

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中学編

※中三の晩秋②

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 夢なのはわかっていた。

「イコ」

 せめて夢の中だけでも、どこにもやらずに一緒にいたい。

「……岩並君?」

 そっと頬を撫でると、ベッドの上で横になっているイコは、ぽやん、とした顔でこちらを見上げてくる。

 1度だけ、イコを運び込むときに見た部屋。
 女の子らしい8畳の部屋で目立つのが、大きな本棚とこのベッドだった。
 寝込むことの多いイコが、少しでも居心地がよくなるようにだろう。2メートルの人間でも眠れそうなしっかりしたシングルロングのベッドは、高級感のある厚いマットや白いリネンが使われていた。枕や布団のカバーはレースがあしらわれていて、これで天蓋でも付いていたらお姫様のベッドそのものだ。

「イコに早く会いたい」

 手を伸ばしてベッドへのしかかるようにイコへ抱きつくと、イコがくすくす笑って、小さな手で抱き返してくる。

「岩並君、甘えんぼさんだねえ」
「もうひと月近く会えてない。永井や仲良からイコの話を聞いてるだけじゃ、耐えられない。むしろイコに会えるのが羨ましくて、苦しくなる」

 脇谷がイコと一緒の図書当番で、朝や昼休み、放課後をイコと過ごしていたと聞いた時のあの感情は、なんて言ったらいいかわからない。ただ、ひどい顔をしていたのだろう。気がついたら部屋から脇谷がいなかった。すまん脇谷。

「ありゃー。ちょっと落ち着こうか」

 イコはなだめるように右の頬へ頬ずりしてきた。俺はイコのくせのある髪を撫でて、頬ずりしてきた顔へくちづける。

「好きだよ……イコが好きだ」

 底のうかがえない濃い色の瞳。虹彩も瞳孔も際がわからないほどの、深い色。いつまでも見入っていたい黒目がちの目。
 至近距離で見つめ、ささやく。

「会いたい。声が聞きたい。いろんな事をたくさん話して、笑い合いたい。ちょこまか動く姿を見ていたい」
「私ちょこまかしてる?」
「うん。動いてるイコは可愛い。ときどき壊れそうではらはらするけど」
「いやあ可愛いだなんてー」
「……イコは夢の中でもムードないな」

 俺が頭の中で作り出したイコ。会いたくて会いたくてたまらなくてできた産物へ、キスの雨を降らせる。

 明晰夢、というやつだろう。
 自分が夢を見ていると自覚できていて、夢の中で望んだように振るまえる。そして普通の夢と1番の違いは。
 五感があること。

 ベッドの上へあがり、一緒の布団に入る。あったかいね、と笑うイコを、パジャマの上からさらにしっかり抱きしめる。
 痩せて細く、けれど柔らかい体。背骨を指に感じながら背中を撫でる。もう片方の手で小さなお尻を撫で軽く指を沈めれば、腕の中のイコが身じろぎする。

「岩並君、手! 手があ!」
「うん」
「いろんなとこ触って、わ、え、直接お腹撫でないで」
「これから全部触るから」
「ええ!?」
「あと舐める」
「ひい!」
「せっかくだし、全身くまなくキスして、舐めて触って、最終的に挿入れる」
「ぎゃあっ、破廉恥ぃー!!」
「でもどうかな、明晰夢って、性的興奮で醒めやすいみたいだし、どこまでできるだろうな」

 明晰夢は浅い眠りに、何か条件が重なって起きる。激しい興奮なんてしようものならすぐ目覚めるだろう。

「どこまでできるかわからなくとも、どこまでだって試すおつもりですか」
「正解」
「このへんたい大魔神!」
「それも正解」

 まるで本物としているような会話に、笑いがこみ上げる。
 俺は本当にイコが大好きで、イコとの会話を宝物みたいに感じているのだと、改めて思い知る。

「俺に似合うと言ってた種付〇プレス、試してみようか」
「いやいや、いやいやいや、私折れちゃうから」
「夢だから大丈夫」

 ひとごろしー! とわめくイコの顔をこちらに向けさせ、小さな唇にくちづける。はじめは軽いキス。次に下唇をちう、と吸って、舌でくすぐる。柔らかさに身震いする。
 小さな口に舌を入れれば、やっぱり小さな舌が震えている。夢中になって舌を絡める。

 くたり、と力の抜けた体を、パジャマの裾から手を入れてなで回す。すべすべだ。折れそうな腰からなで上げれば、胸に近づくにつれ、指にあばらの骨を感じる。
 リアルさに自分の執念を感じて、おかしくてたまらない。
 こだわりすぎだろう俺。

 唇を離し顔を上げると、イコは上気した頬をしてぼんやりこちらを見上げてくる。潤んだ目が焦点を結ぶと、うわあと叫んでこちらに背を向けた。

「顔、見せてくれないのか。すごく可愛いのに」
「知らないよう、岩並君のえっち!」
「今更だ」

 後ろから抱きしめながら、両手で直接胸を包み込む。小さくて柔らかくて可愛い。本物はどんなだろう。もっと小さいのだろうか。

「く、くすぐったいぃ」
「我慢我慢」

 夢の中でなら強引にもなれる。

「イコ、好きだ。……大好きだよ」

 何度となくイコの名を呼びながら、赤くなった可愛い耳を舐め、細い首筋にくちづけ、そのまま指先で胸をもてあそぶ。イコから甘い吐息が聞こえてきて、もう、触ってるだけでイきそうだ。
 これが本物のイコだったら。
 もしかしたらさっきのキスだけで持たないかもしれない。興奮しすぎて鼻血とか出しかねない。醜態をさらしそうで怖い。
 けど、と俺は苦く笑う。
 本物のイコとキスなんて、とてもできる間柄じゃない。

 好きだ、と伝えて引かれるのが恐ろしかった。無理に迫って嫌われるのが怖かった。「ごめんなさい」と振られてしまったら、自分がどうなってしまうのかわからなかった。
 この二年ちょっと、『塾での友達』以上になれなかったのはそのせいだ。

 でも、今だけは。夢の中で作り出したイコだけは別だ。
 それがどんなにむなしい行為だとしても、腕の中の小さな暖かさに縋りたい。もうひと月、イコに会えていないんだ。
 寂しくて、辛い。
 会いたい。

 なあ、イコ。
 俺はこんな、どうしようもない奴だけど。
 心の底から、イコのことが大好きなんだよ。

 苦い思いを押し殺して、俺は腕の中のイコへことさら意地悪く声を掛ける。

「やらしい声出てきたな。可愛い」
「やらしいの、岩並君だもん……。固いの、当たってるよ」
「当ててるから。ああもう、イコが好きすぎてどうにかなりそうだ」
「え、それ―――ひんっ♡」

 胸の先を軽く摘まむと、びくん、とイコの体が跳ねた。イコの体が布越しに、張り詰めた股間と擦れ合う。

「うあッ、出―――」



「ッ!!」

 直前で目が覚めて、ヤバいと思った時には間に合わなかった。

「あっ、う、ううッ!」

 枕を後ろ手に握りしめて、体を震わせる。熱い欲が、はじけて、はじけて、目の前がチカチカする。

「う、うあッ、あ、く、くうッ……」

 気持ちよくて堪らなくて、そんな自分が嫌で、早く終われと祈るように願う。
 びくびく震える体に力を込めて、押さえつけようとあがいても、次から次へとほとばしる快楽に翻弄されて抗えない。

 いっそ、悲しいくらい気持ちいい。

 唇を震わせて、情けない声をあげて、下着を汚す。

(ああもう、ほんと、ほんとに、俺は―――)



 どうしようもないくらい、イコに囚われている。


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