家出仙女は西側世界で無双する

Ryoko

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ヒドラ解体

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 次期領主についての家族会議の翌朝。

 さて、アンドレとレイアとの仲について、どうするべきかと思案していたバルドの元に、来客の知らせが届く。

 なんと、来客はレイア嬢とのこと。

 冒険者ギルドの副ギルド長であるレイアとは、領政に関する話し合いで何度か接したことがある。

 あまり机仕事が得意ではない現ギルドマスターに替わって辣腕を振るう様は、なかなかにしっかりした娘という印象だったが……。

 まさか、あの息子アンドレがレイア嬢に惹かれていたなど、思いもしなかった。

 領主の息子の相手が、副ギルド長とはいえただの冒険者というのは前代未聞だが、冒険者ギルドの仕事を通して領政にも関わることの多いレイア嬢なら、息子の嫁としては案外良いかもしれない。


「わかった。レイア嬢を応接室にお通ししろ。あぁ、それから、アンドレにも同席するように伝えてくれ」


 レイアの来訪を伝えに来た執事にそう伝えると、バルドはどう息子をレイア嬢に売り込もうかと思案しつつ、応接室へと向かうのだった。


「それで、レイア殿、今日はどのような用件だったかな?
 ヒドラの襲来が恐らく何者かの策略であろうことはアンドレからも聞いているが、何か調査に進展でも?」

「いえ、その……。実は今回は別件でご相談したいことが……その、例のヒドラの素材の件で、少々問題が起きてまして……」


 何やら言いにくそうにしているレイアの様子に、バルドは表情を真剣なものに変え、アンドレは心配そうにレイアを見る。


「問題か……ヒドラの素材売却については、冒険者ギルドに一任してあるとカテリーナから聞いているが?
 我が家の方で必要な素材に関しては、既に冒険者ギルドの方にリストを渡していると思うが……。
 もしや、こちらに回す分の素材に、何処かから横槍が入ったのかな?」

「いえ、そのようなことは! 元々領主様のところにお売りする素材は最優先という取り決めですので、それは責任を持って対処いたします。
 ですが、その……実はそれ以前の問題でして……これは魔物素材を専門に扱う冒険者ギルドとしましては大変申し上げにくいのですが……」

「レイア嬢、そのように恐縮する必要はないよ。そもそも、ヒドラなどというもの自体が前代未聞なのだ。思いもよらないトラブルが発生してもなんの不思議もない。
 それで冒険者ギルドを責めるようなことは無いから、困り事があるなら安心して相談してほしい」


 そんなアンドレの言葉に押されてレイアが話したのは、ヒドラ解体に関するトラブルで……。


「まさか、未だヒドラの解体すらできていないとは……」

「本当に申し訳ございません! ギルドの職人たちも、自分達でなんとかしようと色々と方法を試していたようなのですが……結局どうにもならず、昨夜私のところに報告に来た次第で……」


 昨日、ヒドラの調査から戻ったレイアの元に現れた解体職人の長は、悔しそうに現状を報告してきたという。

 曰く、ヒドラの素材を解体しようにも、並みの刃物では満足に切り込みを入れることすらできない。

 なんとか刃を差し込んでも、ヒドラの血に触れた瞬間、刃はボロボロに腐って折れてしまう。

 そんなわけで、ヒドラの解体は一向に進まず、このままでは素材をダメにしてしまうと、職人一同頭を抱えているらしい。


「ふむ、もありなん。私がヒドラと対峙した際に使った剣も、結局、腐食が酷く破棄することになったからな。
 あれは名のある鍛治師に作らせた剣で、決して安いものではなかったのだが……。
 まぁ、それを考えれば、あの猛毒の前では並みの刃物などひとたまりもあるまい」


 あのヒドラの凶悪さに直接触れて知っている2人は、その猛威を思い出したのか神妙な顔になる。

 確かにあれは……並みの刃物で傷つけられるものではない。

 では、どうすれば……。


「はい、それでご相談なのですが、ヒドラ討伐の際にタオちゃんが使っていた剣を、なんとか譲っていただくことはできないかと思いまして……」


 ここにきて、やっと来訪の目的を伝えることができたレイア。

 タオは一応冒険者とはいえ、ラモスを救った英雄であり、何より領主であるラモス家が下にも置かないもてなしをしている客人である。

 タオちゃんが一体何者かは知らないけど、カテリーナ様や領主家の使用人たちの対応を見るだけでも、タオちゃんがラモス領主家にとって特別な存在なのは間違いない。

 そんなタオちゃんに、冒険者ギルドの問題を押し付けるのはどうかと思う……思うけど!

 他に思いつく方法もないし、ここは領主様にもご理解いただくしかない!

 そう思い詰めるレイアに対して、


「ああ、あの剣か! 確かに、あの剣ならヒドラの解体も可能かもしれませんね」


 ヒドラ討伐時のタオの剣さばきを思い出したのか、アンドレの方は少々興奮気味。

 あの時はタオの剣技に見惚れるばかりだったが、改めて言われてみれば、あのヒドラを苦もなく両断した剣が並みの剣であるはずがない。

 もし譲ってもらえるのなら、むしろ私の方が欲しいくらいだ!

 カテリーナのように直接タオが泉から現れたところを目撃したわけでもなく、バルドのようにタオのオーラが見えるわけでもないアンドレは軽く考えるが……。
 

「それは、タオ殿がヒドラ討伐に使用したという剣のことか?
 確かに、実際にヒドラを切り裂いたタオ殿の剣なら可能だろうが……」

 (女神様がお持ちの剣ならば間違いなく神剣……人に売り買いできるようなものではなかろう)

「アンドレの報告では、その剣の切り口は焼き爛れていたというではないか。それでは、討伐はともかく、解体には使えぬのではないか?
 そもそもの話、切った瞬間に切り口を焼く剣など、まさに神剣。下手をすれば、ヒドラの素材よりも余程価値が高いぞ」


 言われてみれば……。

 そんなバルドの言葉に意気消沈してしまうレイアとアンドレ。

 確かにバルドの言う通り、そんな神剣を売ってもらえるとして、一体幾らになるのか想像もつかない。


「まぁ、ともかく、そういった話なら我らだけで話していてもらちが明かん。一度タオ殿にご相談してみるよりあるまい。
 おい、誰か、タオ殿のところに行って、ご都合を伺ってきてくれ」


 バルドはそばに控える使用人に声をかけると、新しい紅茶と用意するよう指示するのだった。
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