1 / 18
大切な存在
1
同性婚が認められて10年。男同士でも女同士でも誰とでも結婚できる社会になった。愛の形は様々で世間でも偏見はほとんどなくなっている。
まぁ、俺には関係ないけど。結婚はもちろん、恋とか愛なんて俺には一生縁がないだろう。愛なんて不確かなものにどうして人は執着するのか俺には分からない。
俺は別に恋なんてしなくても幸せだ。親友と他愛もない話で笑ってご飯を食べて過ごせればそれでいい。
目の前にいる親友のガンちゃんを見て俺は改めて思う。ガンちゃんといる時が俺は一番幸せだ。
「俺、ガンちゃんのハンバーグが世界一好き」
「大げさだ」
小さな卓上テーブルの上には俺の好きなものばかりが並んでいる。全部ガンちゃんが作ってくれたものだ。ガンちゃんは料理上手だ。特にハンバーグは本当に美味しい。
「でも本当に良かったのか?せっかくの誕生日に俺の料理で。これじゃ、いつもと変わらないだろ。綺麗なレストランとかでも良かったんだぞ」
「いいの。俺はレストランの料理よりガンちゃんのご飯が食べたかったから。誕生日にガンちゃんの料理が食べられて嬉しい」
「…そうか」
大学時代からの親友ガンちゃんこと岩井充と俺はよくお互いの家に行き来していた。その頃から食事を疎かにしがちな俺にガンちゃんはよく料理を振る舞ってくれた。それは俺が就職しても続いている。
今日は俺の部屋で小さな卓上テーブルを挟んで座っている。
「改めて、樹。30歳の誕生日おめでとう」
「うん。ありがとう」
お互いの缶ビールを軽く合わせる。
「俺ももう30か。ガンちゃんと出会ってもう10年以上だよ。すごいよね」
「ああ。あっという間だったな」
「あ!そういえばガンちゃんの本読んだよ。すげえ良かった。俺、語彙力ないから上手く言えないけどガンちゃんの小説好きだよ」
ガンちゃんは小説家だ。結構売れっ子の恋愛小説家。俺は普段小説は読まないがガンちゃんの小説は好きだ。
「…ありがと」
ガンちゃんはぼそっとつぶやき、そっぽを向く。彼の照れている時の癖だ。嬉しいのにどういう顔をしていいか分からず、顔をそむけるのだ。
「でもその顔で恋愛小説の名手ってなんか面白いな」
「顔は関係ないだろ」
ガンちゃんが眉をひそめる。
他の人が見たら不機嫌そうに見えるがそうではないと俺にはわかる。
切れ長の目、濃い眉、180センチ以上の身長のガンちゃんは初対面の人によく怖がられる。強面なのだ。でも彼が優しく誠実な人柄だということは長い付き合いで知っている。
缶ビールを片手に次の瞬間には忘れてしまうほどの他愛ない話をしていた。この時間が俺には一番大切だ。気を使うこともない、ガンちゃんといる時間が居心地がいい。
だからその時間が変わることなんてないと思っていたのだ。
「樹」
「ん?」
「俺と結婚して」
「うん。……ん?」
今なんて言った?
目の前の彼を見ると表情はさっきまでと変わらない。ただ俺を見つめている。
「ごめん。俺変な聞き間違いした。もう一回言って」
「聞き間違いじゃない。樹、俺と結婚してくれ」
「……」
脳がガンちゃんの言葉を理解するまでに時間がかかった。
ガンちゃんはただ視線をまっすぐ俺に向けている。
穏やかに流れていた海。その海にずっとたゆたっていたいと思っていた。でも波は押し寄せてくる。ずっと変わらない海なんてない。いつかは荒波が来る。
それが俺にも来たのだと悟った。
あなたにおすすめの小説
恋人に好きな人が出来たと思ったら、なにやら雲行きが怪しい。
めっちゃ抹茶
BL
突然だが、容姿も中身も平凡な俺には、超絶イケメンの王子と呼ばれる恋人がいる。付き合い始めてそろそろ一年が経つ。といってもまだキスもそれ以上もした事がない健全なお付き合い。王子は優しいけど意地悪で、いつも俺の心臓を高鳴らせてくる——だけどそれだけだ。この前、喧嘩をした。それきり彼と話していない。付き合っているのか定かじゃない関係。挙句に、今遠目から見つけた王子の側には可憐な女の子。彼女が彼に寄り掛かって二人がキスをしている。
その瞬間、目の前が真っ黒になった。もう無理だ。俺がスイッチが切れたようにその場に立ち尽くした、その時だった。前にいる彼から聞いたこともない怒声が俺の耳に届いたのは。
⚪︎佐藤玲央……微笑みの王子と呼ばれ、常に笑顔を絶やさない。物腰柔らかな姿勢に男女問わずモテる
⚪︎中田真……両親の転勤で引っ越してきた転校生。平凡な容姿で口が悪いがクラスに馴染めず誰とも話さないので王子しか知らないし、これからも多分バレない
※全四話、予約投稿済み。
本編に攻めの名前が出てこないの書き終わってから気が付いた。3/16タイトル少し変更しました。
※後日談を3/25に投稿予定←しました。Rを書くかはまだ悩み中
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
生まれ変わりは嫌われ者
青ムギ
BL
無数の矢が俺の体に突き刺さる。
「ケイラ…っ!!」
王子(グレン)の悲痛な声に胸が痛む。口から大量の血が噴きその場に倒れ込む。意識が朦朧とする中、王子に最後の別れを告げる。
「グレン……。愛してる。」
「あぁ。俺も愛してるケイラ。」
壊れ物を大切に包み込むような動作のキス。
━━━━━━━━━━━━━━━
あの時のグレン王子はとても優しく、名前を持たなかった俺にかっこいい名前をつけてくれた。いっぱい話しをしてくれた。一緒に寝たりもした。
なのにー、
運命というのは時に残酷なものだ。
俺は王子を……グレンを愛しているのに、貴方は俺を嫌い他の人を見ている。
一途に慕い続けてきたこの気持ちは諦めきれない。
★表紙のイラストは、Picrew様の[見上げる男子]ぐんま様からお借りしました。ありがとうございます!
2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~
青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」
その言葉を言われたのが社会人2年目の春。
あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。
だが、今はー
「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」
「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」
冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。
貴方の視界に、俺は映らないー。
2人の記念日もずっと1人で祝っている。
あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。
そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。
あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。
ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー
※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。
表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。
振られた腹いせに別の男と付き合ったらそいつに本気になってしまった話
雨宮里玖
BL
「好きな人が出来たから別れたい」と恋人の翔に突然言われてしまった諒平。
諒平は別れたくないと引き止めようとするが翔は諒平に最初で最後のキスをした後、去ってしまった。
実は翔には諒平に隠している事実があり——。
諒平(20)攻め。大学生。
翔(20) 受け。大学生。
慶介(21)翔と同じサークルの友人。
神子の余分
朝山みどり
BL
ずっと自分をいじめていた男と一緒に異世界に召喚されたオオヤナギは、なんとか逃げ出した。
おまけながらも、それなりのチートがあるようで、冒険者として暮らしていく。
途中、長く中断致しましたが、完結できました。最後の部分を修正しております。よければ読み直してみて下さい。