最後の魔導師

蓮生

文字の大きさ
43 / 93
第2章 旅立ち

大魔法②

しおりを挟む
 あまりの驚きに、夜中ということも忘れて叫んでいた。
 死んだだって?
 そんな話、生きている人の口から聞いたら冗談にしか聞こえない。いまどきそんなウソ、子供だって信じない。
「…じ、冗談はやめてよ…死んでるわけないじゃん。目の前にちゃんと見えてるよ…足もある!話もできる…」

「ああ、今は生きているからね」

 横目でこちらに目線をむけるサフィラスはいたって真面目にそう答えた。


「私は、師匠に助けられたんだ。命をもらったんだ」

「え!うそだ」

 ニゲルはふるふると横に首を振った。
 いかに魔導師といえども、死んだ人をよみがえらせるなんて、できっこない。

「そんな事出来るわけないよ…死んだ人を甦らせるんだよ?絶対むりだよ、むり!」

 ありえない。
 あまりに大それた話だ。

 死んだ人をよみがえらせるなんて、人の世のことわり逸脱いつだつした行為だ。まるで、神様のような技である。だけれど、神様でもなんでもない人間にそんな事が許されるはずがない。
 死者は、必ず眠りにつくのだ。でなければこの世に死人が歩き回ることになる。それは考えただけで、異様いようで気味がわるい。
 永遠の眠り、その安息あんそくの時間を死んだ人からうばう事は人の道にはんすることではないのか。
 サフィラスが助かって目の前にいる事は自分にとって幸せな事だと思う。けれど同時に、魔法の賢者がそれをやることはひどく悪い事であるような気がしてしまった。

 はたしてそれはやっても良い事なのだろうか。

 いや、考えてみれば出来ても、やってはいけないことは沢山ある。
 人を殺したり、だましたり、盗みを働いたり、それだって、やろうとすれば出来ても、みんなやらないではないか。それは、人の世のルールがあるからだ。約束やルールを破れば罪になる。とすると、死人をよみがえらせるのは、やっぱり罪になるのだろうか。
 もしかしたら、罪だから自分の命と引き換えなのだろうか。
 頭がこんがらがってわけがわからなくなる。

 考え込んで動かなくなったニゲルをみて、サフィラスはため息のような、重苦しいよどんだものをひねりだすかのように、はぁというか細い息を吐いた。

「普通は、たしかに無理だろう。並の魔法士では。しかし大魔導師は、全てを体得し究極の魔法が使える者。やるやらないは別としても、魔法で死者をよみがえらせることはできる」

「えぇっ!信じられないよ…まさか、まさかだけど、サフィラスもそれ使えるの?」

「……」
 サフィラスは無言でうなずいた。

 できる。
 出来るのだ。
 死者をよみがえらせることが!

 驚愕きょうがく畏怖いふで、足元から震えが上がってくるようだ。

「それ、魔導師ならやって良い事なの…?」

 サフィラスは首を横にふった。

 否定だ。
 やっぱり、だめなのだ。

「私の導師はね…私を助けるためにその大魔法を使ったんだ。つまらない…こんな私を助けるために…」

 つまらない?
 その意味がニゲルにはわからない。きっとサフィラスの導師は、助けるに値する才能を見出していたに違いない。だめだとわかっていても、使ってはいけない魔法でも、どうにかして救いたかったのだ。

「つまらないなんて言ったら、助けてくれた導師に悪いよ…」 
 それに、きっと、弟子としてとても大切に思っていたはず。
 なぜなら、ニゲルにだって、サフィラスが優しくて強くて、心の底から信頼できる人物であり、輝く魔法の才能を持っていることが分かるのだから。
 
「だが実際に、導師がこんな私を助けたばかりに、魔法士達はアオガンから恨みを向けられたも同然だ」

「そんな事ない!アオガンは自分が悪い事をしてきたのを棚に上げて、人をうらやんでるだけじゃないか。それで人を殺しちゃうなんて頭がおかしいんだよ。王様だって魔法士狩りを許してるなんて、人でなしだ!僕は導師は正しいと思う…使ってはいけない事なのかもしれないけど、サフィラスが好きだったから、どうしても助けたかったんだよ!僕だって自分が魔導師なら、その人と同じ事したかもしれない。目の前の大切な人を救えないんじゃ、どんなにすごい技をつかえようが意味がないもの…。それに、その人のおかげで僕はサフィラスに会えたんだ!すごいよ…僕も会ってみたい。ねぇ、いつか会わせて」

 ニゲルはサフィラスの手を取り、お願いと見上げた。
 きっと想像もできないくらいすごい人に違いない。この偉大な大魔導師サフィラスを育てた先生なのだから。もしもその人に会えたら、色々聞いてみたいし魔導師についての勉強もしてみたい。

 しかし期待に満ちた瞳を向けているニゲルから、まるで見たくもないものを見たかのように、苦しげにサフィラスは目をそらしたのだった。

「…導師には私ももう会えないんだ」

「え、なんで…」

 期待を裏切られた落胆らくたんと、どうして、という疑問が浮かんでくる。ひょっとすると、使ってはダメな魔法を弟子に使ってしまったから、魔導師を辞めてしまったのだろうか。それともそのせいで力を無くしたのか。
 あるいは…。

「もしかして、前言ってたの本当だったの?サフィラスを置いて、本当に会えないくらい遠くの国にいっちゃったの?魔導師じゃなくなったとか?」


「ああ…。そうだよ」


 それはあまりにも小さなつぶやきだった。



「死者を蘇らせる大魔法《蘇生そせい》は、自分の命と引き換えなのだ…」

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

#アタシってば魔王の娘なんだけどぶっちゃけ勇者と仲良くなりたいから城を抜け出して仲間になってみようと思う

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 ハアーイハロハロー。アタシの名前はヴーゲンクリャナ・オオカマって言ぅの。てゆうか長すぎでみんなからはヴーケって呼ばれてる『普通』の女の子だょ。  最近の悩みはパパが自分の跡継ぎにするって言って修行とか勉強とかを押し付けて厳しいことカナ。てゆうかマジウザすぎてぶっちゃけやってらンない。  てゆうかそんな毎日に飽きてるンだけどタイミングよく勇者のハルトウって子に会ったのょ。思わずアタシってば囚われの身なのってウソついたら信じちゃったわけ。とりまそんなン秒でついてくよね。  てゆうか勇者一行の旅ってばビックリばっか。外の世界ってスッゴク華やかでなんでもあるしアタシってば大興奮のウキウキ気分で舞い上がっちゃった。ぶっちゃけハルトウもかわいくて優しぃし初めての旅が人生の終着点へ向かってるカモ? てゆうかアタシってばなに言っちゃってンだろね。  デモ絶対に知られちゃいけないヒミツがあるの。てゆうかアタシのパパって魔王ってヤツだし人間とは戦争バッカしてるし? てゆうか当然アタシも魔人だからバレたら秒でヤラレちゃうかもしンないみたいな?  てゆうか騙してンのは悪いと思ってるょ? でも簡単にバラすわけにもいかなくて新たな悩みが増えちゃった。これってぶっちゃけ葛藤? てゆうかどしたらいンだろね☆ミ

生贄姫の末路 【完結】

松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。 それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。 水の豊かな国には双子のお姫様がいます。 ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。 もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。 王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!

mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの? ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。 力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる! ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。 読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。 誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。 流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。 現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇 此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

星降る夜に落ちた子

千東風子
児童書・童話
 あたしは、いらなかった?  ねえ、お父さん、お母さん。  ずっと心で泣いている女の子がいました。  名前は世羅。  いつもいつも弟ばかり。  何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。  ハイキングなんて、来たくなかった!  世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。  世羅は滑るように落ち、気を失いました。  そして、目が覚めたらそこは。  住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。  気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。  二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。  全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。  苦手な方は回れ右をお願いいたします。  よろしくお願いいたします。  私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。  石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!  こちらは他サイトにも掲載しています。

左左左右右左左  ~いらないモノ、売ります~

菱沼あゆ
児童書・童話
 菜乃たちの通う中学校にはあるウワサがあった。 『しとしとと雨が降る十三日の金曜日。  旧校舎の地下にヒミツの購買部があらわれる』  大富豪で負けた菜乃は、ひとりで旧校舎の地下に下りるはめになるが――。

オバケの謎解きスタンプラリー

綾森れん
児童書・童話
第3回きずな児童書大賞 奨励賞をいただきました! ありがとうございます! ――七不思議を順番にめぐると、最後の不思議「大階段踊り場の鏡」に知らない自分の姿が映るんだって。 小学六年生の結菜(ユイナ)が通う三日月(みかづき)小学校では、そんな噂がささやかれていた。 結菜は難関中学に合格するため、塾の夏期講習に通って勉強に励んでいる。 だが一方で、自分の将来にひそかな期待と不安をいだいてもいた。 知らない自分を知りたい結菜は、家族が留守にする夏休みのある夜、幼なじみの夏希(ナツキ)とともに七不思議めぐりを決意する。 苦労して夜の学校に忍び込んだ二人だが、出会うのは個性豊かなオバケたちばかり。 いまいち不真面目な二宮金次郎のブロンズ像から、二人はスタンプラリーの台紙を渡され、ルールを説明される。 「七不思議の謎を解けばスタンプがもらえる。順番に六つスタンプを集めて大階段の鏡のところへ持って行くと、君の知らない君自身が映し出されるんだ」 結菜と夏希はオバケたちの謎を解いて、スタンプを集められるのか? そして大階段の鏡は二人に何を教えてくれるのか? 思春期に足を踏み入れたばかりの少女が、心の奥底に秘めた想いに気付いてゆく物語です。

14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート

谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。 “スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。 そして14歳で、まさかの《定年》。 6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。 だけど、定年まで残された時間はわずか8年……! ――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。 だが、そんな幸弘の前に現れたのは、 「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。 これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。 描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。

処理中です...