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第4章 インフェ・グレーゴル・ドルード12世編
第204話 捕まえちゃった
しおりを挟む僕らの目的のためには、とにかく前へ進まなきゃならない。
その先の景色をみるために、僕はもう一瞬だって無駄にしている時間はないんだから――
魔力が畝るほど凝縮された空間の中心に飛び込むなど、普通なら自殺行為に違いない。しかし僕からしてみれば、そこは無駄に発散されているエネルギーの中心地でしかない。なにせ僕の能力は、その場に存在している魔力を……
『 全部集めて、一点に圧縮させて爆発させるんだから! 』
敵味方入り乱れた全ての攻撃を一手に集め、大空高く爆散させる。すると一ヶ所に集まっていた竜たちの視線が上方へと散り、そこに僅かな隙が生まれた。
僕はヴェルニが相手していた竜たちの数体を叩き、勝手に彼の肩に着地した。「助太刀は無用と言ったはず」と不機嫌な彼に「これは僕の個人的で勝手な行動だから」と突っぱねた。
「悪いけど、僕らにゆっくりしてられる時間はないんだ。だからさっさと終わらせて、さっさと用事を済ませて、さっさと出ていくよ」
「……随分とエゴイスティックなセリフだな。相も変わらず自分勝手な人族め」
しかし今は文句言っている時間も惜しいと切り替え、ヴェルニは僕の助力を受け入れてくれたのか、それ以上何も言わずに戦闘を再開させた。僕の加勢によってすぐに形勢は傾き、襲撃を企てた竜たちが散り散りに飛散していく。どうやら追っ払うことができたと落ち着きを取り戻したヴェルニの配下は、口々に敵の強襲失敗を喜び、自分たちの優位性を叫んだ。
「ひとまず終わった……のかな?」
大穴の上空を旋回していた竜たちが一斉に持ち場へ帰っていく。最後まで上空で戦況を確認していたヴェルニは、背中に乗せている僕のことなど気にする素振りもなく、危機は去ったと判断するなり、玉座の間へ戻るため垂直落下し始めるじゃないか。僕は背中のタテガミにしがみついたまま、どんどん加速していく彼に振り落とされないよう、必死で指先に力を込めた。
穴の底に着地する寸前で大きな翼を真横に開いたヴェルニは、器用に円をなぞるように旋回し、優雅に着地した。どうにか落ちずに済んだ僕は、額の汗を拭いながら「ふぅ」と一息つく。しかし勝手に人化したヴェルニの土台が消え、ドンと尻もちをついた。
「いつまで人の背中に乗っているつもりだ。そもそも助力はいらぬと言っておいただろう」
「いてて……、ご、ごめんよ。だけど僕らにも色々と事情があるんだ。それに、ヴェルニにも話を聞かせてほしかったし」
「ふん、本当に勝手なものだな。貴様が陛下の知人でなければ、今頃食い殺しているところだ」
「は、はは……、それは本当にごめん」
不機嫌なことは変わらないものの、ミグネフ不在のうちに話を終わらせると僕を招き入れたヴェルニは、一旦部下たちを人払いし、玉座の間に入った。僕は言われるまま玉座の前に立ち、疲れた様子で腰掛けて「ふぅ」と肩を落とした彼に話しかけた。
「まずはごめん、突然押しかけてしまって。僕らとしてもここへやってきたのは想定外のことで、なんて説明していいのかわからないんだけど」
「……大方予想はついている。貴様らの目的地はバレッタだったのだろう? しかし町は見つからず、仕方なく近郊にあるモンクの町を探してこちらへやってきた、と」
「え……? じゃあ、やっぱりバレッタは……」
あからさまに不服そうな顔と態度を振りまきながら、ヴェルニは小さな魔道具を手に取り、「近くに」と呟いた。僕は言われるまま彼の手元を覗き込む。そこには平面に映し出された地図のようなものが表示され、ヴェルニがその一ヶ所に指先を置いた。
「本来、この場所に我らが拠点であるバレッタの町があった。しかし旧領主であるグニル=シーキングとの衝突に伴い、拠点であるこの町にも大きな被害が出てしまった」
「やっぱりそうだったんだ。町があるはずの場所に建物一つなかったから、きっと何かあったんだろうって……」
「だが勘違いしてもらっては困る。何も我々の力が足りず、町を根こそぎ奴らに破壊されたのではないからな。何よりここは、そのバレッタにあった本拠地より移転された、我々の新たな拠点なのだから」
ヴェルニ曰く、この場所はもともとモンクという小さな町だったところを、バレッタの町から移転させた設備を組み合わせ、さらに発展させた新たな町なのだという。もともと巨大なクレーターを利用した竜の住処でしかなかったところを、急作りではあるものの外敵からの攻撃を防ぐために穴を深くし、地下の空間までもを備えた要塞となっている、らしい。
「あ、でも言い忘れてたんだけど、僕らここへやってくる途中で、そのグニルって竜に襲われたんだ。それでその、言いにくいんだけど……」
「なんだと? それで、そのグニルをどうしたというのだ!?」
勢いよく両肩を掴まれた僕は、あははと苦笑いを浮かべながら、顔を掻き掻き答えた。
「あまりにもしつこかったからね、ちょっと気絶させて捕まえちゃったんだけど……。やっぱりマズかったかな……?」
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