人生フリーフォールの僕がユニークスキル【 大落下 】で逆に急上昇してしまった件~世のため人のために戦ってたら知らぬ間に最強になってました~

THE TAKE

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第4章 インフェ・グレーゴル・ドルード12世編

第207話 罠

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 ―― 同時刻 玉座の間



「何を考える、人族の遣いよ。もはや貴殿らの選択など、ひとつしか残されてはおらぬだろうに」

「そのようなことはない。我らとて、無用な争いは望まぬ。この状況を打破する糸口は、必ずあると心得ている」

「……これではまるで立場が逆ではないか。我らが貴殿らの拒否を待ち構えておるようだ。不可思議なものよ」


 ヴェルニとて、ミグニフとて、互いに胸の内など知れている。しかしそれでも成すべきことを成さぬ限り、この場を離れることなどできようはずがない。

 一度中座させていただくことは可能かと聞いたミグネフに、ヴェルニは拒否を示した。これ以上の引き延ばしはないと断言し、即刻の回答を迫った。


「先にも申したように、グニルを引き渡すことはできん。奴の身柄を我らで管理することに変わりはない。しかし待ってほしい、我らにそなたらを断罪するつもりはないのだ。もとより当領地の状況を知らず、踏み込んだ我らの方にも落ち度があった。その点を、貴殿らの王に釈明することはできようぞ」

「そちらにその気がなかろうとも、我らにとってはその事実のみが全て。我らが王の意に背いた者を野放しにした辺境の領主を、我らが王が許すことはない。釈明など意味を成さぬであろう」

「しかしそれは時と場合がござろう! この有事に起こってしまったことは、いわば偶然。我らとて本意ではなかった。それを咎められる意味などないではないか!?」

「そのような世迷言を我が王の前で申せと? 我が身を燃せと言っているに等しかろう。……もうよい、貴殿らの答えはわかった。グニルを我らに差し出す気はないと、そういうことでよいのだな?」


 ミグネフとて、これ以上の時間稼ぎが困難なことは理解している。しかしまだ早い、もう僅かでも時を稼ぎ、必要な準備を整えねばならない。ただその一心だった。

 しかし――



「ひとつ、貴殿らは大きな勘違いをしている」



 徐ろにヴェルニが呟く。
「なんですと?」と聞いたミグネフに、玉座に腰掛けたまま据えた目で見つめた彼は、もはやこれまでとでも言いたげに立ち上がった。


「貴殿らは、我らから如何いかに奪い、如何に逃げおおせるか、それだけを考えて行動しているのだろうが、それがそもそもの間違いだと申し上げている。確かに貴殿も、そしてあの人族も、我らが窺い知れないほどの力を持っている。だからといって、我ら竜の民が、人族に遅れを取るなどあってはないない。否、あるはずがない!」

「先程から貴方は何を……?」

「よもや時さえ稼げば、全てが上手くいくとでも思っておったか? 残念ながら貴殿らの王こそ我が手中にないが、最大戦力は今この瞬間、この手の中にある。そうであろうが?」


 妙な気配を読み取ったミグネフが腰元の剣に手を触れた。しかしそれよりも早くパチンを指を鳴らしたヴェルニの合図をきっかけに、周囲、それどころか、穴底全体が激しい揺れに襲われた。


「な、なんだ、何が起きている!?」

「貴殿らは、最初はなから我らが直接手を下すことはないと、決めてかかっていたな。そもそもそれが間違いだと気付かなかったそちらが悪い。これから貴殿らは、我らの窺い知れぬ『何者か』に襲われ、運悪くも命を落としてしまわれる。嗚呼ああ、残念だ。全ては我が王の意のままにあることを……」


 突如穴底を襲った揺れは、さらに勢いを増し、全てを巻き込むように崩れ始めた。「一体何のつもりだッ!?」と叫ぶミグネフに、彼は笑みを浮かべながら言った。


「我ら竜族に力で対抗できると思っていたか、たかがヒトの子如き愚か者どもめ。滅せよ、この地に眠る、我が同志の骸と共に!!」






 ―― 同時刻 居住区出入口



「そこを、どいてもらえないかな」


 グニルは外へと続く唯一の出入口の前に立ち、僕らの行手を阻んでいる。その表情には覚悟のようなものが滲んでおり、どうやら話してどうにかできる雰囲気ではなさそうだ。それでも……


「なんのつもりかな。キミたちが僕らを拘束する権利はないはずだけど」


 微妙な間があり、グニルが手にした武器を地面に下ろした。なんのつもりやと苦い顔で僕の肩に飛び乗ったポンさんが、「ええからそこどきやッ!」と強めに進言した。


「貴様ラハ、マルデワカッテイナイ」

「え?」

「我ラ竜族ハちからガ全テ。何人ニモ負ケルコト許サレナイ」

「いや、だから何言うてんねん!?」


 グニルが武器を捨てて両手をあげ、万歳のようなポーズで僕らを見つめた。


「確カニ、貴様ラ、強イ。ダガ、ソレダケ。ダケド、アイツ、モット、強イ。アイツ、誰モ勝テナイ」


 冷や汗混じりの笑顔でグニルが笑う。
 そのときの僕には、彼が全てを諦め、懺悔しているように見えた。


「戦イ方、イロイロ。オレタチ、ヒトニ負ケナイ。戦イ、コレデ終ワル」


 彼がそう呟いた直後、また以前のように激しい揺れが僕らを襲った。しかし今度は前の比ではなく、今にも穴底が崩れてしまいそうなほどに揺れている。……というより、本当に崩れてる!?


「ポンさん、これ!?」

「やられた、全部罠や! 早く外へ――」

「ソウハサセナイ」


 天高く伸ばした彼の両腕が、魔力の光を帯びていく。そして広がった光が、穴底全体を覆い尽くすように伸び、そして固まった。


『 ヤッテシマエ、闇ノ亡者ヨ! 』
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