人生フリーフォールの僕がユニークスキル【 大落下 】で逆に急上昇してしまった件~世のため人のために戦ってたら知らぬ間に最強になってました~

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第4章 インフェ・グレーゴル・ドルード12世編

第209話 妖糸の剣

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 怒り狂ったように奇声を撒き散らすドラゴンは、迫りくる瓦礫や煙、自身から溢れる魔力にまで反応して怒りの限り熱線を吐き出した。その様は『地獄の釜から吹き出した癇癪』のようで、無尽蔵のスタミナを持つ赤ん坊が無意味に泣き叫ぶ様とどこか似ている。

 足場代わりになっている魔力障壁を踏み鳴らし、いよいよその両翼を開いたドラゴンは、頭上の壁に手をかけて様子を見ている僕らを見据え、瞳孔の開ききったまばゆいばかりの眼を張り出しながら、恐ろしい勢いで地面を踏み切って飛び上がった。そして攻撃を企てていたカルラの横を素通りし、一直線にこちらへ向かってくるじゃないか!?


「あかん、なんで俺の悪口に怒ってんねん!? あのボケ、どないな耳してるんや!!?」

「ええええ!? なんだよそれ、ポンさんのせいじゃないか!」


 全身を振り乱して突進してくるドラゴンを避けて空中へ身を乗り出した直後、恐ろしい速度でドラゴンが壁に突き刺さった。穴の側面に張られた魔力障壁を歪ませてしまうほど突進の威力は凄まじく、激しく揺さぶられた壁がバラバラと崩れ、瓦礫が山のように落ちていく。


「あかん、あんなもんほっといたら、俺ら全部穴底で瓦礫に押し潰されてお陀仏や。どうにかして倒すしかないで!」

「どうにかって、あんな大きいドラゴンをどうやって!?」

「どうもこうも、動き出したらガス欠になるまで永遠に動き続けるんがあのボケの習性や。暴れ始めたが最後、誰かが倒さん限り、もう誰にも止められへんねん!」

「えええええ、なんだよそれ!!」


 壁に刺さっていた頭をガボンの抜き、再び黒竜の顔がこちらへ向き直った。その眼からは、怒りなのか、それとも哀れみなのか、僕には窺い知れないような何かが滲み出ていた。


「まさかあんなバケモンを切り札に隠してるとは思えへんかった。ヴェルニのクソめ、どないなってんねん!?」


 どうやらグニルが僕らに捕らえられたと知れた瞬間から、こうすることは決めていたのだろう。僕らを障壁内に閉じ込めたダナンの姿はどこにもなく、確実にここで息の根を止めてやるという強い意思が感じられた。


「もう四の五の言ってられへんで。覚悟決めぇや!」


 しかしポンさんの覚悟をよそに、熱り立ったドラゴンが再び襲いかかる。言葉とは裏腹に「ヒェェ!」と逃げ回るだけなポンさんを背負って飛んだ僕は、どうにか攻撃を躱して移動し続けるしかない。

 直線的に追ってくるドラゴンは、その都度壁に衝突し、恐ろしい速度で壁に突き刺さった。障壁はみるみる間に形を変えていくが、どうやらヴェルニたちはそれすら考慮して準備していたのだろう。障壁自体が壊れて僕らが解放されるという兆しは窺えそうもない。

 美しい楕円形の穴底だったフィールドが、秒毎にいびつな横穴だらけの空間に変貌を遂げていく。しかしあれだけ激しく魔力を放出し続けているにも関わらず、ドラゴンは文字通り無尽蔵の魔力を周囲に振り撒きながら襲いかかってきた。


「スタミナ切れを待ってても無駄やで。あのボケ、過去には三日三晩暴れ続けたなんて記録も残ってるくらいのバケモンや。どうにかこっちから大人しくさせるしかないんや!」

「でも、あまり無茶したら……!?」

「障壁が張られてるから、一旦周囲への影響は考えんでええ。この際ヤケクソや、ウタ、イッパツ本気で殴ったれ!」


 目立つのは御法度とされていたものの、このままやられてしまったのでは元も子もない。しかしわかったと僕が拳を握った直後、「舐めるなよ」と呟いた誰かが僕の真横を通過していった。


「ゴギョアァァアアアア!!」


 鼓膜が激しく震えるほどの叫び声とともにドラゴンが口を開いた。熱線を放つため喉元がまばゆく光り、強大な魔力が集中し膨らんでいく。しかしそれより一瞬早く動いた小さな影は、腰から抜いた大剣をゆらりと頭上に掲げ、「オオオオオオオ!」という叫びと同時に振り下ろした。

 緑色の巨大な炎をまとったような美しい一閃が放たれ、ドラゴンの左腕に突き刺さった。硬い皮膚に止められてもなお輝きを失わないその一撃は、そのままドラゴンの腕をえぐり、激しい衝撃波を伴い鋭角に切り裂いた。紫色の血液と左腕が宙を舞い、初めてバランスを崩したドラゴンが、前のめりに顔から倒れ込んだ。


「あ、ああ……、…………凄い」


 血のついた剣を一振りし、腰の鞘に収める姿は圧巻というよりほかない。
 ただの一撃でドラゴンを横倒しにしてみせたのは、ほかでもないカルラ其の人だった。

 左腕と前腕の分厚い筋肉を斬り捨てられ、ドラゴンが激しくのたうち回っている。しかしそれよりも僕の視線を奪ったのは、彼女の腰元で光っている、見覚えのない剣の姿だった。


「ねぇ、ポンさん。あれって……」

「どうやらホンマに完成したらしな。ま、せやないと困るんやけど」


 僕らと離れていた間、彼女にも多くのミッションが課されていた。中でも最重要、かつ絶対にクリアしなければならない課題の一つとされた項目こそが――


妖糸の剣フェアリースレッドの修復や。妖糸の剣フェアリースレッドは、そいつを扱うエルフの力を何倍にもしてくれるっちゅう代物や。せやから嬢ちゃんは、まずそいつの修復を完成させることが最優先事項やったっちゅうわけや。俺らがどうにか中央のボケ竜倒す方法を模索してる間に終わらせぇて忠告したんやけど、どうやら間に合ったみたいやな」


 あれだけ暴れ回っていたドラゴンを一撃で鎮めてみせた攻撃力は圧巻の一言で、僕は思わずゴクリと息を飲んだ。マンティスを相手に苦戦していた頃の彼女の面影は消え失せ、威風堂々とした横顔がとても頼もしく思えた。


「カルラさん、その剣!」


 僕らが駆け寄ると、柔らかな表情で彼女が微笑んだ。「凄いです!」とはしゃぐ僕を指一本で抑えたカルラは、「このくらいは当然だ」と謙遜して言った。


「なかなかええデキやないか。インペリアルブラックドラゴンを一撃なんてびっくりしたで」

「それほどでもないさ。何よりまだ私自身がコイツを制御しかねていてな。上手く魔力を調節することができんのだ。それに――」


 カルラがドラゴンを一瞥する。
 すると先程まであれだけ暴れ回っていたドラゴンが黒光りした口を閉じたまま、こちらを振り返り、恐ろしいほどの怒気を振り撒きながらその眼を光らせた。


『 グギョガゲギャアアァアア!! 』

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