16 / 60
14.為すべきことは ※本編ケネス視点
しおりを挟む
本編をケネス隊長視点で書いたお話です
────────────────────
ルイーズが退室した後、扉の向こうに控えていたユージンが呼ばれ、私とユージンに対して、リアム様から改めて事情を説明された。
彼女とリアム様の出逢い、リアム様からの依頼、そして今日の話を。
但し、リアム様も彼女の能力については詳しくは教えてもらえなかったらしい。
彼女自身も、彼女の能力も信用できるものなのか…。
『私のことは信用していただかなくて結構です。ですが、リアム様のためどうぞお力添えをお願いします。私のことについてはジェイク・クロフォードに確認していただいて結構です。「全てを話しても構わない」と私が言っていたとお伝えいただければ結構ですので』
退室する際の彼女の言葉が思い出される。
彼女自身、私が彼女を信用していないと思っているのだろう。
確かに私は"転写者"を信用していない。
過去には妹のイレインが襲われそうになったこともあるし、ユージンや私も随分と露骨な付きまといを受けて辟易していたりもする。
騎士として見回っていた中で"転写者"の犯罪者を捕まえたことも一度や二度ではない。
彼ら全てを信用しろと言う方が無理がある。
それなのに何故、彼女はこの会談の席に"騎士"を呼ぼうと思ったのか…。
話を聞く限り、彼女がリアム様の立場を理解していないとは思えない。
公爵家の嫡男であるリアム様に、騎士の立ち合いを願えば、駆り出されるのは隊長格以上になることくらい、いくら"転写者"とはいえ、余程の馬鹿でない限り分かりそうなものだ。
確率的には10分の1程度であっても、私がここに呼ばれることくらい想像がつきそうなものだが…。
リアム様の言われるところの"彼女の能力"が、私を信用できる人間と判断したのか。
まあ、彼女の思惑がどこにあってもやることは変わらない。
私は隣に座るユージンに視線を向ける。
後で、ユージンと一緒にジェイク・クロフォードに話を聞いてみよう。
リアム様のために動くのは当然としても、どんな情報も把握しておく必要があるだろう。
動くとすれば団長にも報告しないといけない。
リアム様の話を聞きながら、私はこの後の段取りを考え始めた──。
演習の終了後、副隊長のニックから外していた間の報告を受け、ユージンが引き留めてくれていたジェイクと合流し、そのままユージンの部屋へと向かった。
隊長格の部屋はこういった内密の話をすることも考慮して、他の隊士のフロアと分けられ、広めの間取りに防音設備、間を一部屋空けての配置という配慮がされている。
その上、隊の順番で割り振られているため、ユージンの部屋は角部屋になる。
ユージンの部屋に入り、部屋に置かれた小さなテーブルを囲み座る。
ユージンはまだ何も伝えてはいないのだろうが、ジェイクは何の件かは大体の察しがついているようだった。
あらかじめルイーズから知らされていたのかもしれない。
ユージンには私が彼女からかけられた言葉については伝えていたが、あくまでも直接聞いたのは私であるため、黙って私が口を開くのを待っている。
この後も団長への報告など、まだしなくてはならないことがある。
私は向かいに座るジェイクに単刀直入に話を切り出した。
「時間外に呼び出してすまない」
一言詫びてから、要件を口にする。
「今日、とある要件でルイーズ嬢に会った。そこで彼女から、自分のことはジェイク・クロフォードに訊いてくれて構わない。全てを話してくれて構わないと伝えてくれと言われた」
そこまで言うと、ジェイクが緊張を更に強め、肩に力が入るのが見て取れた。
「話してくれるか」
問いかけではない。
私の言葉にジェイクは「はい」と短く答え、淀みなく話し始めた。
今まで特に興味もなかった"転写者"という存在。その"転写"の意味。
彼女の前の人生での境遇。
その中で、生きるための力として身に付いた能力。
ジェイクとの出逢い、リアム様との出逢い、イアンから逃げ出したこと。
セレスという一緒にいた"転写者"が傍に控えていた経緯。
その全てをジェイクは語っていく。
その様子には、何かを隠しているような様子も、誤魔化しているような様子もない。
リアム様から聞いていた内容とも符合する。
聞いている横で、ユージンも何か結びついたことがあるのか、納得した様子が窺える。
「──以上が自分が知っている全てです」
ジェイクの言葉に、私はユージンへと視線を向ける。
それに対して、ユージンは頷き返してくるだけだった。
私はジェイクに視線を戻し「分かった。話してくれて感謝する。これ以降のことは団長とも相談してこちらで決める。任せてくれるな?」と言葉をかける。
疑問形ではあっても、問いかけではない。
それはジェイクも分かっているようで「はい」と短く答えると「では、自分はこれで失礼します」と席を立った。
扉の前で、再度「失礼します」と声をかけると躊躇う様子もなく部屋を出ていった。
扉が閉まるのを確認して、ユージンへ視線を向ける。
ユージンも私へと視線を向けてくる。
「で、どうする?ケネス」
訊かずとも私の考えていることなど分かっているだろうに。
モーティマー家とも古くからの付き合いだ。
家格の違いからユージンとの付き合いのようにはいかなかったが、リアム様も幼馴染とも言える間柄なのだ。
助けない選択肢などない。
ルイーズの言葉が真実であっても、なくても、確かめる必要はある。
「団長に報告して、明日にでも早急にモーティマー家へ向かう。私たちの目でイアンという侍従を確かめよう」
私の言葉にユージンはニッと笑うと「ああ」と短く返事を返す。
私とユージンはそろって騎士団長室へと急いだ──。
────────────────────
ルイーズが退室した後、扉の向こうに控えていたユージンが呼ばれ、私とユージンに対して、リアム様から改めて事情を説明された。
彼女とリアム様の出逢い、リアム様からの依頼、そして今日の話を。
但し、リアム様も彼女の能力については詳しくは教えてもらえなかったらしい。
彼女自身も、彼女の能力も信用できるものなのか…。
『私のことは信用していただかなくて結構です。ですが、リアム様のためどうぞお力添えをお願いします。私のことについてはジェイク・クロフォードに確認していただいて結構です。「全てを話しても構わない」と私が言っていたとお伝えいただければ結構ですので』
退室する際の彼女の言葉が思い出される。
彼女自身、私が彼女を信用していないと思っているのだろう。
確かに私は"転写者"を信用していない。
過去には妹のイレインが襲われそうになったこともあるし、ユージンや私も随分と露骨な付きまといを受けて辟易していたりもする。
騎士として見回っていた中で"転写者"の犯罪者を捕まえたことも一度や二度ではない。
彼ら全てを信用しろと言う方が無理がある。
それなのに何故、彼女はこの会談の席に"騎士"を呼ぼうと思ったのか…。
話を聞く限り、彼女がリアム様の立場を理解していないとは思えない。
公爵家の嫡男であるリアム様に、騎士の立ち合いを願えば、駆り出されるのは隊長格以上になることくらい、いくら"転写者"とはいえ、余程の馬鹿でない限り分かりそうなものだ。
確率的には10分の1程度であっても、私がここに呼ばれることくらい想像がつきそうなものだが…。
リアム様の言われるところの"彼女の能力"が、私を信用できる人間と判断したのか。
まあ、彼女の思惑がどこにあってもやることは変わらない。
私は隣に座るユージンに視線を向ける。
後で、ユージンと一緒にジェイク・クロフォードに話を聞いてみよう。
リアム様のために動くのは当然としても、どんな情報も把握しておく必要があるだろう。
動くとすれば団長にも報告しないといけない。
リアム様の話を聞きながら、私はこの後の段取りを考え始めた──。
演習の終了後、副隊長のニックから外していた間の報告を受け、ユージンが引き留めてくれていたジェイクと合流し、そのままユージンの部屋へと向かった。
隊長格の部屋はこういった内密の話をすることも考慮して、他の隊士のフロアと分けられ、広めの間取りに防音設備、間を一部屋空けての配置という配慮がされている。
その上、隊の順番で割り振られているため、ユージンの部屋は角部屋になる。
ユージンの部屋に入り、部屋に置かれた小さなテーブルを囲み座る。
ユージンはまだ何も伝えてはいないのだろうが、ジェイクは何の件かは大体の察しがついているようだった。
あらかじめルイーズから知らされていたのかもしれない。
ユージンには私が彼女からかけられた言葉については伝えていたが、あくまでも直接聞いたのは私であるため、黙って私が口を開くのを待っている。
この後も団長への報告など、まだしなくてはならないことがある。
私は向かいに座るジェイクに単刀直入に話を切り出した。
「時間外に呼び出してすまない」
一言詫びてから、要件を口にする。
「今日、とある要件でルイーズ嬢に会った。そこで彼女から、自分のことはジェイク・クロフォードに訊いてくれて構わない。全てを話してくれて構わないと伝えてくれと言われた」
そこまで言うと、ジェイクが緊張を更に強め、肩に力が入るのが見て取れた。
「話してくれるか」
問いかけではない。
私の言葉にジェイクは「はい」と短く答え、淀みなく話し始めた。
今まで特に興味もなかった"転写者"という存在。その"転写"の意味。
彼女の前の人生での境遇。
その中で、生きるための力として身に付いた能力。
ジェイクとの出逢い、リアム様との出逢い、イアンから逃げ出したこと。
セレスという一緒にいた"転写者"が傍に控えていた経緯。
その全てをジェイクは語っていく。
その様子には、何かを隠しているような様子も、誤魔化しているような様子もない。
リアム様から聞いていた内容とも符合する。
聞いている横で、ユージンも何か結びついたことがあるのか、納得した様子が窺える。
「──以上が自分が知っている全てです」
ジェイクの言葉に、私はユージンへと視線を向ける。
それに対して、ユージンは頷き返してくるだけだった。
私はジェイクに視線を戻し「分かった。話してくれて感謝する。これ以降のことは団長とも相談してこちらで決める。任せてくれるな?」と言葉をかける。
疑問形ではあっても、問いかけではない。
それはジェイクも分かっているようで「はい」と短く答えると「では、自分はこれで失礼します」と席を立った。
扉の前で、再度「失礼します」と声をかけると躊躇う様子もなく部屋を出ていった。
扉が閉まるのを確認して、ユージンへ視線を向ける。
ユージンも私へと視線を向けてくる。
「で、どうする?ケネス」
訊かずとも私の考えていることなど分かっているだろうに。
モーティマー家とも古くからの付き合いだ。
家格の違いからユージンとの付き合いのようにはいかなかったが、リアム様も幼馴染とも言える間柄なのだ。
助けない選択肢などない。
ルイーズの言葉が真実であっても、なくても、確かめる必要はある。
「団長に報告して、明日にでも早急にモーティマー家へ向かう。私たちの目でイアンという侍従を確かめよう」
私の言葉にユージンはニッと笑うと「ああ」と短く返事を返す。
私とユージンはそろって騎士団長室へと急いだ──。
6
あなたにおすすめの小説
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。
ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」
その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
冷徹宰相様の嫁探し
菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。
その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。
マレーヌは思う。
いやいやいやっ。
私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!?
実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。
(「小説家になろう」でも公開しています)
悪役令嬢に転生したと気付いたら、咄嗟に婚約者の記憶を失くしたフリをしてしまった。
ねーさん
恋愛
あ、私、悪役令嬢だ。
クリスティナは婚約者であるアレクシス王子に近付くフローラを階段から落とそうとして、誤って自分が落ちてしまう。
気を失ったクリスティナの頭に前世で読んだ小説のストーリーが甦る。自分がその小説の悪役令嬢に転生したと気付いたクリスティナは、目が覚めた時「貴方は誰?」と咄嗟に記憶を失くしたフリをしてしまって──…
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎
王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。
……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。
追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。
無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」
騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる