誰かのミライ

ミライ

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芽生え

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ページをめくると

空白の時が流れていた

前のページでは思えないほど
字もある程度
綺麗な物となっている

「また日記をかきたいと思います」

漢字も使い始め
成長を感じた


「今日は算数のテストをしました
国語はとくいじゃないけど
算数はまだとくいです
お母さんのために勉強をがんばりたいと思います」


内容を見る限り
小学生になったのかな?


「ドッヂボールでボクにかてる人はいません」


そうですか……

成長したとはいえ
まだまだ子供
文章の流れをぶった切る
文字に

ふっ……っと笑いがこぼれる


「今日のきゅうしょくで
にがてなヤサイが出ました
でも早く大人になりたいので
ガマンして食べました」


苦手な野菜か……
俺も昔は"野菜を食べないと大人になれないぞ"
とか、言われたな……

……よく考えると
実家の母さんから今だに
電話で言われるな……

この日記の少年よりも
俺はまだまだ子供なのかと
少し恥ずかしくなる

自分の頬をポリポリと指で掻いて
次のページをめくる


「今日もお母さんは
おしごとでおそくなります
毎日たいへんなのに
ごはんを用意してくれて
ありがとう」


そう、前のページで
おそらく父親は亡くなっている
原因は分からないが……

お母さん1人で育ててるのか……

母子家庭と言うのも
今はそんなに珍しい事じゃないかもしれないが
やはり大変なのは変わらない……

たまたま手に取った誰かの日記だが
静かに応援したくなる


「ライダーカッコいい!ボクも大きくなったら
ライダーになりたい!!」


うん……子供って言うのはこういうもんだよな

中にはひねくれてしまう子供もいるし
最悪、感受性が育たない
引きこもりになる
なんて

心無い事を言う奴はいるが
そんな事はない

親が諦めない限り
子供は、それに答えて
成長してくれる


「強くてカッコよくなって!
お母さんをお父さんのぶんも
守ってあげたいと思います!」


きっと母親の頑張りを間近で見てきたのだろう
日記の子は
確実に理解して成長している

良い子に育ってくれている

日記の子の父親ではないが
まるで我が子の成長を見てる気分になった


「お父さんへ
きっとお母さんをしあわせにします
ぼくにください!」


うん、結婚でもするのかな?

流石に天国のお父さんも
再婚は望む事はあるかもしれないが

実の息子には、あげないと思うぞ……

日記に軽くツッコミを入れつつ

次のページをめくる


「となりのクラスのななみちゃんと
お話しました
とっても楽しかったです
あしたも遊ぶやくそくをしました
早くあしたにならないかな?」


はい、早速浮気してますよ?お母さん……

子供の嵐の様な言動は
大人から見ると微笑ましく
面白いと改めて思った

自分の子供が出来たら
男の子か女の子なんて

意地悪な質問があるが

結局、どっちにしても
親としては嬉しい事だ

俺にも子供が……

と言う所で、まずは彼女だ

また机に頭を伏せて

やれやれと首を横に振り
日記に戻る


「今日はお母さんがひさびさのおやすみで
デパートに行きました
ヒーローショーたのしかったです!
またお母さんとあそびにいきたいと
思いました!」

忙しい中
子供との時間も大事してるのかと
安心した

こう言う時
一切、子供に構ってやれない
相手してる暇ないと
コミュニケーションを取らない母親も多いと聞く

嫌なニュースもよく見るが
こうして
仲の良い家庭もちゃんとある

本当にこの家族には幸せになって欲しいと
心から思えた……


「今日はあたる君とケンカしました
あたる君がお父さんのいないことを
バカにしたから
ボクはわるくありません」


「でもお母さんが
あたる君はバカにしたんじゃないよって
ちょっとふざけちゃっただけだからって
いって」


「あたる君のお母さんとあたる君も
ごめんなさいしてくれたので
ゆるしてあげようと思いました」


子供の間でもこう言う
いざこざは起きる……

今回のは丸く収まったが

大人になれば仕事の為に我慢ばかりで
感情に任せて暴れるなんて事も出来ない

家族の悪口を言われれば頭にくるが
俺ならきっと、軽く流すなりして
何もしないし

何も言わない
ただ言わしておけば良い
なんて

心にもないカッコつけの言葉で
自分を"ごまかす"だろう……


「つぎからはドッヂボールとかで
がんめんをねらうのよって
ついふざけちゃったと言えばいいのよ
とお母さんが言ったので
つぎからはそうしようと思いました」


うん、お母さんも
なかなか個性的な人なのかな?
しっかりお怒りのようで

日記の先の
この子の母親は怒らせては駄目だ……と
静かに心に止めて

ゆっくり次のページをめくった


「今日はドッヂボールであたる君のかおに
おもいっきりボールを
ぶつけました!
がんめんせーふかー!って
大きな声で言えてよかったです!」


うん、しっかり母親の影響を受けたのだな
しかも許してなかったんだな……

この子の将来が
急激に恐ろしくなって来たが

同時に次のページでは
どんな事を書いているのだろう?

この作者……

少年のファンになってしまったようだ

俺はまた
この子の成長を楽しみにしつつ


次のページをめくった
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