誰かのミライ

ミライ

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とても平和な黒ページ

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また少しの空白の時が
流れたようだ

字の特徴から見て取れる
成長は

前のページでは
想像していなかった方向に
展開していた


「我が名は悪路巣アクロス
天界の天使共の罠にかかり
外界に封印された魔王だ」

「しかし人の身体を借りる事により
この地を自由に動く事が出来る」

「復活の時までに
受けた恨みを忘れぬ為
こうして手記を取ろうと思ったのだ」


男の子なら高確率で通るであろう
この時期は
個人差はあるが

確実に後々
思い返すと恥ずかしくなる

ある種の青春の時代……

かくして俺にも
その時代はあった


「本日は稲葉の地にて
最高の晩餐会をし
我が傑作の地獄のスープを
母上に振舞った」


なるほど
何も知らない奴から見たら
訳がわからないだろうが

翻訳すると
家で晩ごはんにカレーのスープを
作ったよ

お母さんの分も作ったよ

って所だろう……

その文の右下に
別の奇麗な文字で


「美味しいスープカレーでした♪
ありがとうね♡」

さらにその下に

「我が手記を勝手に読むな!
しかしありがとう
実はスープになる予定では無かったのだ」


相変わらず仲の良い家族だと
ほっこりした

きっと母親も
今の俺みたいに
日記を読んでたんだろうな

まるで夫婦で子供の成長を
見ている……

そんな感じがした


……それにしても
水の分量を間違えたんだな

自炊は本当に難しいと思う
一人暮らしを始めて
何度か挑戦はしたが

目玉焼き1つも
満足に作れなかったなぁ…

家庭科の授業で味噌汁とか
習った気がするが

どうして、こうも上手くできないんだと
悩んだもんだ

この子は仕事で忙しいお母さんの為に
料理をしたんだな

相変わらず家は
大変だろうと思うが
少年は優しいまま成長してくれている


「我が領域展開の中では
どんな球も時空を越える事は
出来ないのだ!
勇者の末裔も我にトドメを刺せず
返り討ちにされて
さぞ悔しかろう!」


ドッヂボールは中学でも
好きなんだな

どんな成長をしても
中身は優しいままの
あの少年で

少し安心した……


勇者のって、もしかして
あたる君かな…?


「今宵、母上が真なる魔の物を召喚した
我に助言し、さらなる高みを与える男と
なるのか?
稲葉の地に足を踏み入れたのなら
その実力を見定めさせて貰おうか」


このページで俺は推測した

きっと新しいお父さん候補
再婚相手になるかも知れない

そう言う人を連れてきたのだろう

ちょっと面倒くさい……いや
個性的な時期に
母の再婚相手と言うのは

子供には少し厳しいのでは
無いだろうが……

そう思いつつに
次のページをめくると
少し震えた字が
飛び込んできた……

一瞬、ドキッとしたが
改めで読むと少し
安心した


「ふ、ふん!まさか
母が召喚した魔の物は
2体いたとはな!!」

「しかも幼いおなごではごさらんか!
ま、まぁ少しぐらい
面倒を見てやらん事もないがな!」

「我は魔王でごさるからして
この程度で動揺などしない!」


相手の人にも子供がいたんだ
しかも女の子
日記の子よりも年下なのかな?

キャラがブレるほどの動揺している文に
まぁ分からなくもないか

思春期を迎え
ダークサイトモード……中二病の少年には
いくら年下でも

これが男の子だったとしても
おそらく緊張するだろう……

年上の女の子じゃなくて良かったな

心の中で少年の肩をポンッと
叩くイメージして

次のページをめくった


「稲葉の地に
我が配下のサキュと
魔力を補充するのに必要な
素材集めに出掛けた!」

「ベルディーはヘルミートが好物らしい
仕方ない…サキュと共に
創造してやろうと思う」


小説では無いし
男子中学生(中二病)の日記だから
話が飛ぶのも
一日の最後に書いてる……

でもないのも仕方ないが
もう、一緒に住んでるんだろうな

しかも家庭内はいたって平和

反抗期の心配もなさそうで
良かったと胸を撫で下ろす

ちなみに
妹と一緒に新しいお父さんの好きな
ハンバーグの材料を買いに行った……

って所かな?

……俺は誰に解説してるんだ?

1人で自分にツッコミを入れつつ
また次のページをめくる


「く…我とした事が!
大事な妹に傷を負わせてしまった!
ヘルミートの合成には危険を伴う
これを知っておきながら
油断してしまった……
一生の不覚だ」

「今後、このような失態は死を招く!
我が仲間に細心の注意を払う事を
この手記に約束しよう!」

その後
よく分からない
グチャグチャの呪文?が書かれ

赤いペンで魔法陣のような物が
描かれている……


ハンバーグ作る時に
妹が火傷したんだな……

物凄く妹を心配している

中二病的に書かれた文章からは
慌ててるようが伺える

大丈夫だったのだろうか……?

そう思いつつに
次のページをめくると


「このくらいの傷は
私のちゆの魔法ですぐ治るから
安心してください」


……?

見覚えのない字で書かれた
少年の字とは違う字

母親の物でもない綺麗な字は
おそらく妹の字だろう……

思いっきり
お兄ちゃんの影響受けてる?!

それと同時に
兄妹きょうだいでカッコつけた
謎のポーズをする2人の姿が
浮かんで来た

ぷくっ……ふふっ……
笑いがこみ上げてくる

さっきまで心配していたのに
急に微笑ましく感じてきた


「魔王様
サキュは大丈夫でございます
私の為にお二人で作って頂けた
ヘルミートは
大変美味しゅうございました」


うん、お父さんもノリの良い人のようだ

……と言うか
この少年の日記は
誰でも簡単に読まれてしまうのか

人の日記を勝手に読むのは
どうかと思うが……

まぁ、俺も人の事は言えないか

それにも一緒に住んでいるのなら
直接言えばいいのに……

と思いつつ
続きを読む……


「改めて我が手記にも書かなくてよかろう!
なぜ、皆の者が我が手記を読み
勝手に書くのだ!」


どうやら
大丈夫だよ伝えた上で
日記にも書いてるんだな……


「いや、なんか面白い感じで
書いてるなーと」


この文で
おそらく普段は中二病MAXで
生活してないんだなと思った


「私と一緒の時は
いつもこんな感じだよ?」


筆記用具コーナーの
試し書きの所かな?

わざわざ人の日記で
他愛もない筆談が繰り広げられている

新しい家族が増えて
波風も立たず

本当に良い家族になりそうで
良かったと

俺はさらに次のページへ
読み進めた
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