誰かのミライ

ミライ

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流れる階段

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めくったページには
日記の内容をいじられたせいか
それとも毎回訪れる
"飽き"なのか

空白の時が流れていた


「俺は少し悩んでいます
どうしたら良いんだろう…」

「父さんや母さん…妹にまで
俺の好きな方を選べば良いと言われたが」

「何が正解なのか
決めかねている…」


唐突な悩みを打ち明ける文に
俺は思い当たる所がある

大学に行くか
それとも就職を選ぶのか

もしすでに就職しているのであれば
答えにそうは悩まない

もし好きな人が出来た
しかも2人以上ならば

家族にそう言う相談はしないだろう

普通の友達に
関係している事も
同じように

家族に相談とは考えにくい

そうなれば
きっと大学に行くか
就職するか

こんな2択ではないかと思う

お金もかかる大学は
母子家庭だった事と

本当の父親では無い父さん…そして
妹の事を考えると難しい

でも何かの夢のために必要な事で
相談したのかもしれない

好きな方を選べば良い…
きっと家族は

どの道を選んでも応援してくれるのだろう

そして
その答えは俺の予想の斜めを行く事になった


「俺は明奈さんを選ぶ事にした
きっと彼女となら
上手く行くと思う」


まさかの同時に告白された
そう言う事なのか?

そして告白して来た子達
どちらも良い子で悩んでたのか……

告白された側か……

心の中で俺はハッキリと
舌打ちをしつつ

優しくてスポーンも出来るだろう彼なら
そう言う事もあるのだろう……

軽く妬みながら
ページをめくる


「失敗した……
明奈さんは俺と付き合った事で
不幸にしてしまった」


何があった?
まさか、ふられた方が
ちょっかいを出してきたのか?

女同時の争いは
男の喧嘩とわけが違う……

とくに男をめぐっての争いなら
血を見る……

……ってドラマで言ってた

もちろんモテなかった俺に
そんな羨ましい状況なんて

ある訳ないのでわからないが

彼が悪い訳では無いだろう


「選択肢を1つ間違えただけで…
もう少し慎重に考えるべきだったんだ」

「妹は、そんな選択肢したら
そうなるのは想像できた事だよ
と言われた…
この選択肢についても
先に妹に相談するべきだった」


後悔をしている事は分かるが
時には自分で大事な選択をしなければならない

そして良くても悪くても
取り消す事は出来ないから

その明奈さんと
失敗をバネに頑張って行くしかないだろう

応援してくれる仲間
家族はすぐ側にいるのだから……

「セーブを分けなかった事を後悔するとは
とりあえず明奈さんルートまでの
戻し作業を頑張ろうと思う」


……ん?


「とりあえず2人に告白される所までは
簡単だから
ここからは恋愛マスター咲様に
助言を頂く事にしよう!」


はい?
ゲ、ゲーム?
まさかのゲーム??

そのあと
ルートと書かれた先に
選択肢と、その先の選択肢の内容が
書かれている

完全にこれは
ゲーム攻略日記だ…

たまにブログにも
ゲームの攻略を書いてる人や
サイトを見るが

まさかのアナログで
しかも、家族を巻き込んで
攻略してるのか?

そもそもこの日記さえ

いつの時代の人の物か
分からないが

そう考えると
昔の人はこうやって
攻略してたのかと思う

今なら
ゲームのタイトルと攻略って
検索すれば

よほど新しいゲームじゃない限り
答えはすぐ出てくる

……妹さんは恋愛マスターなのか
俺にも助言してくれないかな……


「よし!今日やっと明奈さんとの
ベットシーンまで来れた!
これは記念にカメラで残さなければと
カメラを取り出したら
さすがに、やめろと妹に怒られた…」

「すまん、あたる…
お前のオカズは俺の心の中に閉まっておくよ」


……お前まさか
18禁ゲームか!?

エロゲーを家族全員に相談しながら
攻略してたのか?!

そして真面目か!
いや、もうバカなのか?!

普通の恋愛シュミレーションゲームを
家族に……特に妹に知られるのは

それこそ
自害を考えるレベルだぞ!

そして、あたる!!
自分で攻略出来なくて
委ねたな!

友達ならコイツの性格を考えて
そんなゲームを頼むなよ!

激しく心の中でツッコミを入れ

大きくため息をついた

良い子なんだなーって思っていたが
通り過ぎて
何やってんだよ…って

言ってやりたい…


「よし、全ルート攻略!
ありがとうございました!」


……良かったね!!!
この感じだと

ゲーム自体も初心者なんだろうな……

よく考えたら母子家庭で
ゲームを買ってもらえる環境では無かっただろう

再婚してから
生活の安定……そして
やっとゲームに興味を持った

普段ゲームをしない人が
1度ハマると
物凄く熱中するんだよな

まぁ、元々好きな奴は
それはそれで熱中するんだが……

しかし、あたるって
あのあたる君だよな
顔面にボールを投げなれた……

ある種の親友になったんだな

喧嘩した後、親友になる
男の友情の作り方みたいなもんだな

俺は喧嘩なんて出来ない
軟弱者だから
そんな青春も無かったがな

一時は父親の死と
母親の再婚……

ドラマだったら
あまり良い事にはならない
展開だったが

良い人生を送れている


……そろそろ帰ろうか
かなり時間を潰せた

たまたま、手に取った誰かの
忘れ物の日記

俺はこの休日の暇な時間を
色々な感情を抱かせてくれた

この少年に感謝しつつ
本を閉じろうとした

ページに不意に目をやると

グチャグチャな英語のような文字

そして
これで決定と言う文字

よく見るとサインの練習しただろう
このページには

この子と妹……父や母
それに親友であろう人達のサインがある

皆で集まった時に
何気ないキッカケで見つかった日記に

あたるかな?イタズラで
サインを書かれて
そして、徐々に家族もサインを書いて

皆で楽しそうな風景が頭に映る……

不思議な満足感を感じる

実に良い物を見させてもらった
そのまま本を閉じ
本棚に戻そうとした

その時
俺は手を滑らせ

本を床に落としてしまった
さっきまで開いて読んでた為か

落ちた本は
パラパラとページがめくれ

読んでたページから先のページを
ゆっくり開いた

落とした本を拾う際に

先のページだったのもあって
立ったまま
俺は目を通した……


「今日はお兄ちゃんのお通夜でした」
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