メアリー・スーは薔薇色の生活を望めない

オウラ

文字の大きさ
5 / 7

5

しおりを挟む

 ここ「ブリジティニア王国」の王都は、王城を中心の放射線状に街並みが広がっている.

 中心に王城が存在し、内側から、貴族や大商人の住居の地区、学校や神殿などの公共施設、ギルドや小売店などの商業地区ときて最外層には庶民の家々が軒を連ねている.
 私達のパーティーが住みかとしている場所はこの最外層の西側に存在する.もともとはここら辺はスラム街やごろつきのたまり場があり、お世辞にも治安が良いといえるような場所ではなかったが,3年前ぐらいに行われた改革を機にそこそこ治安もよくなりつつある.
 まぁ、今なお多少ガラの悪い奴らもいないこともないが、そういうやつらは大抵ギルドに所属している比較的体格の良い(こわもての)冒険者のあんちゃんたちのコテンパンにされてしまうのが関の山.
 というのもここ西側地区は近くに冒険者ギルドが存在し、ギルド周辺には鍛冶屋などが多い商業施設が比較的多いため、比較的冒険者が多いのもこの地区の特徴である.
 といっても、多くの冒険者は定住というよりは、町から街へと移動するので、この最外層よりも宿の多い商業地区にいるんだけれど。
 まぁ、それでも治安維持のために、この3年である程度ここら辺に定住する冒険者も増えたのもまた事実なのである.実際私たちもそうだし

 完全に安全とは言い難いが、それでも冒険者として住むには便利な地区であることには変わりないのが、この西側地区の地区といえよう.……ギルドに近いっていうのが何よりいいよね。治安は悪いけど
















「あ!!!メアリーさん!!!いいところに!!」

 冒険者ギルドの酒場にて、先に朝食を済ませてしまおうと特製ふわふわオムレツをたしなんでいた私の目の前に現れたのは、受付嬢としてこのギルドで働くカリーヌ嬢.眼鏡、巨乳、ドジっ子、美人というポイントを押さえた25歳の女性だ.
 巨乳がさらに際立つギルドの制服を身にまとっている姿は,一言で表すと「ありがとうございます!!!」と女である私でさえ言いたくなるレベル.
 この制服を考えた人は、まじで神様だと思う.




「何かありました?カリーヌさん」
「実は………ってどうしたんですか.メアリーさん、その顔!!」

 私の顔を見るなり、ぎょっとした表情をするカリーヌ嬢.
 まぁ、頬が紫色に腫れ上がる人を見たらびっくりもするか.自分でも朝までびっくりしたくらいだからね。

「いろいろあって。まぁ、詳しく聞かないでください」
「……そうですか。そのお大事にしてくださいね」
「ありがとうございます。……えっと、それで改めて、聞きますがカリーヌさん?どうしたんですか?そんなに慌てて」

私の記憶が正しければ、こうしてカリーヌ嬢が慌てている時は、対して良いことが起きた記憶がない。多分、あまり良くない報告であろう。覚悟して彼女の報告を聞く必要がある。
ゴクリと唾を飲み込み。覚悟を決める


「その実は今朝、早くにノアさんたちがいらして,ギルドの依頼を受けたんですけれど……」
「あぁ、そうらしいですね。」

私を置いて、楽しく4人で受けた依頼ね。

「えっと、それでですね。私、その時うっかり言い忘れてしまった頃があるんです.」

 一体何を言い忘れたのだというのだろうか?パーティーメンバーが全員いないと討伐できないとか?
 いや、別にそんなことはないな.確かそれはギルドの規約を読む限りは可能だし
 となると、依頼内容に関する追加情報か何か?たかが、スライム退治に?

「えっと、その言いにくいんですが、実はノアさんたちに頼んだスライムっていうのが少し特殊なスライムでして」
「とくしゅなスライム」


 ・男性限定の依頼
 ・特殊なスライム
 ・伝え忘れた重要な情報

 この時点で若干だけど嫌な予感がした.いや、そもそもカリーヌ嬢が慌てて来た時点で嫌な予感はしていたんだけれど。

「えぇ、いわゆる突然変異モンスターの1つ………植物性繊維消化性スライムです。まぁ、その、いってしまえば衣服のみを溶かしてしまう粘液を放出するスライムです.」


 風のうわさで聞いたことがある.
 どっかの馬鹿な貴族が,いわゆるウフフなことをする為に、魔術師に依頼して魔改造したスライムだと
 闇市で取引されるそれは、まぁ自然界ではまず観測されることがない.

まぁ、うん。なるほどね。
でも問題はそこじゃない。問題はなぜ、そんなスライムが日中から草原にいるかである。
「え、なんでそんなスライムが,草原に!?」
「…………メアリーさん.察してください」
「………あ」

 カリーナ嬢のその一言で、なんとなく事のいきさつを把握した.
 世の中っているのは,特殊な性癖を持ち合わせる人がいるんだなぁ.
 まぁ、勝手にやってくれよとは思うけれど,人様に迷惑をかけるのは如何なものかと.後処理はするべきである.

「……なるほど,どこぞの、おバカさんが逃がしたのそのスライム?が今回の討伐対象なんですね」
「えぇ、そうです。男性限定なのも流石に、女性に退治を依頼するのはと言うことで」

まぁ、そんな破廉恥なモンスターを女性冒険者に依頼するわけにはいかないよなぁ。もしものことがあったら困るし。そんな、薄い本みたいな展開、困るし!!

「………で、問題というのは?」

別に、奴らは男だし。いくら魔改造したスライムとはいえ,スライムはスライム.
 きちんとした対策をしておけば、何ら問題ないだろう.なにぶん、このクエストを受けるのに問題がある様には思えない。

「えぇ、で。ここからが本題なんですけれど。その、私、うっかりその情報をノアさんたちに言い忘れてしまって」

 うん

「本来であれば、こちらから支給するはずだった,対消化粘液用の衣服をお渡しするのを忘れてしまって」

 うん?

「しかも、皆さん。依頼がただのスライム放伐だと思っていたようで,結構身軽な装備で出ていかれてしまって」

 ………うん

「つまりですね」
「つまり」
「………こちらの方で、駄目になった衣服等は弁償いたしますので,皆さんを迎えに行って差し上げていただけないでしょうか?多分、このままではギルドに戻ってくることは勿論、王都に入ることすらままならない状態かもしれませんから」
「あ、はい」

 ギルドの名物受付嬢のカリーヌは言わずと知れたうっかり屋さん。
 特に、なんというかこう、「なにこの薄い本みたいな展開」と言いたくなるような原因の大半はこのカリーヌ嬢のうっかりによるもの.カリーヌ嬢のうっかりによって受けた私の精神的苦痛(BL的展開による地雷)は数知れず.しかも毎回毎回、思わず血反吐を吐きたくなるレベルのものだから,命がいくらあっても足りない。
 せめて、カリーヌ嬢がもっとしっかりと仕事をしていれば、薄い本みたいな展開にならずに済むのにと思うわけで。むしろ、わざとやってる?と言いたくなるけれど、見ている限りそんなことはないのだろう。
 巨乳のお姉さんに悪い人はいないし


「本当に、申し訳ないです.メアリーさんにはいつも迷惑をかけて」

 しかも、しゅんとした表情で頭を下げるカリーヌ嬢を見ると何も言えなくなってしまうのだ.
 でも、やっぱりもう少し,仕事をきちんとやってくれると嬉しかな!!!!












 余談であるが、助けに行った4人があられもない姿になっていたのは言うまでもなく。しかも、結局スライムを倒したのは,私だったというのはここだけの話。
 彼らが、どんな戦闘を繰り広げていたのか、そして戦闘中に何があったのか。そして私が駆け付けたときにうっかり見てしまった光景……とりあえず、今日の出来事は闇の中へと葬り去りたいなぁと思いましたとさ。
 あと、普通にパーティーの抜け方を聞くの忘れてた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

わんこ系婚約者の大誤算

甘寧
恋愛
女にだらしないワンコ系婚約者と、そんな婚約者を傍で優しく見守る主人公のディアナ。 そんなある日… 「婚約破棄して他の男と婚約!?」 そんな噂が飛び交い、優男の婚約者が豹変。冷たい眼差しで愛する人を見つめ、嫉妬し執着する。 その姿にディアナはゾクゾクしながら頬を染める。 小型犬から猛犬へ矯正完了!?

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

悪役令嬢だとわかったので身を引こうとしたところ、何故か溺愛されました。

香取鞠里
恋愛
公爵令嬢のマリエッタは、皇太子妃候補として育てられてきた。 皇太子殿下との仲はまずまずだったが、ある日、伝説の女神として現れたサクラに皇太子妃の座を奪われてしまう。 さらには、サクラの陰謀により、マリエッタは反逆罪により国外追放されて、のたれ死んでしまう。 しかし、死んだと思っていたのに、気づけばサクラが現れる二年前の16歳のある日の朝に戻っていた。 それは避けなければと別の行き方を探るが、なぜか殿下に一度目の人生の時以上に溺愛されてしまい……!?

完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました

らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。 そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。 しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような… 完結決定済み

やり直しの王太子、全力で逃げる

雨野千潤
恋愛
婚約者が男爵令嬢を酷く苛めたという理由で婚約破棄宣言の途中だった。 僕は、気が付けば十歳に戻っていた。 婚約前に全力で逃げるアルフレッドと全力で追いかけるグレン嬢。 果たしてその結末は…

処理中です...