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国王陛下の嫁探し
目を覚ましてくれ
しおりを挟む「旅人よ!貴方、悩みがありますね」
初めて出会った日のことを、今も昨日のように覚えている。排他的な日々を過ごしていたある日、声をかけてきたのは、1人の少女。はっきり言って第一印象は、あまり良くなかった。なんて言うか、なにを言っているんだ此奴……その一言。いきなり目の前に現れて、訳の分からないことを言われれば、致し方ないことだろう。あぁ、変なのに絡まれた、最悪だと思った。干渉されない、壁があり、身を隠しておくには、いい村だったが、ここもさっさとここからも立ち去らねばと思った。だけど、それと同時に、俺の心にある復讐心をピタリと言い当て、挙げ句の果てには
「えぇ、我がともに貴様と旅をしてやりましょう。そして、必ずや気味の憎き相手をともにうってやりますよ」
なんて言うセリフを言われたあの瞬間、たとえそれが嘘だとわかっていても………俺は多少なりとも彼女に対して、希望を見出してしまっていたのもまた事実であったのだ。
その後、無理やり俺のたびに同行できた少女は、俺の傷つき、凍りついた心を少しずつ溶かしていった。復讐………そして死のみを求めていたあの頃の俺を、変えてくれたのは間違いなく彼女で、旅の終盤ごろには、完全に俺は彼女の事に惹かれていた。死んだ家族よりも、ずっと、ずっと大切な人に、愛おしい人へとなっていたんだ。復讐よりも、なによりも2人でずっとに居たいと思ってしまって居たんだ。
だから、憎きあいつを討ち取った後、俺が無事に王位に即位した後、彼女が俺の元から離れないように縛り付けた。ずっとそばに居てくれるように手を尽くした。
知っていたんだ。旅が終われば、彼女が俺のそばを離れてしまう事を、本当は神様なんていない事を、彼女がそれに対して罪悪感を感じていることを………俺は全て知っていた。だから、全てを利用して、彼女にそれ相当の立場を用意して、縛り付けて、何が何でも側にいてもらえるように、あの時の俺はした。もっと、別のやり方があったかもしれないが、あの時の俺は、それしか思いつかなかったんだ。
そして、いつか全ての準備が整い、俺が彼女に相応しい相手に、彼女が俺に相応しい相手になるように、全てのものが俺たちを祝福してくれる日が来るように…………と今の今まで頑張ってきたのに、手筈を整えてきたと言うのに………何故、こんなことになっているのか。あの時、俺は決意をして、俺たちは生まれてきて1番幸せになっていた筈なのに…………
「なんで、君は、目を覚ましてくれないんだ」
ベッドの上で死んだように眠り続けている愛おしい人。山はなんとか超え、命をつなぎとめてはいる状態。痛々しく包帯を巻かれ、毒によって、命を蝕まれるその姿は目も当てられない程。
あぁ、あの時、もっと早く君の元に駆けつけていたら、リリィーがエヴィリアーナスの残党で、あいつらが何か企んでいるとわかっていたのに、証拠が不十分だからといって、泳がせたりせずにさっさと処罰しておけば、いやいや、そもそも俺が君にはっきりと気持ちを伝えて……もっと早く結ばれていればこんな事にはならなかった筈なのに……あぁ、後悔ばかり。俺はまた、俺の大切な人をなくしてしまうのだろうか。俺の希望を、またも無くしてしまうのだろうか。君がいなくちゃ、俺はもう……生きてはいけないのに、なんで、俺の大切な人は、皆俺を置いていってしまうのだろう。
そっと眠り続ける彼女の頰に手を添える。
「目を覚ましてくれ」
そして。君が発したあの言葉……最後まで聞かせてくれないか。俺の気持ちをちゃんと受け取ってくれないか。
物語のお姫様は、王子のキスで目を覚ました。俺のキスで、君は目を覚ますのだろうか。
そっと顔を近づけ、口づけをしてみるが、それでも、君は目を開けることはない。
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